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3. ネオ、襲われる

授業も順調で、来週に生徒達の試験が迫ったある日、私は匿名の呼び出しを受けた。


――誰にも漏らさず指定場所に来い、さもなくばお前の生徒達は二度と帰らぬだろう――


まったく、フザケてやがる。私のカワイイ生徒達に手を出したことを後悔させてやろう。怒りも顕に指定場所に向かう。そこには縄で縛られたシャルルとエルヴェの姿があった。ジュリエットの姿がないが無事だといいが……。


「シャルル!エルヴェ!」

「おっと、動くなよ。動いたら手元が狂っっちまうかもしれねぇぞ。ヒッヒッヒ」


相手はガラの悪そうな奴らが5人。一人はエルヴェの首もとにナイフを突きつけている。相手はこっちが杖無しで呪文を使えると知らないのか油断しているようだ。


「お前が杖なしで呪文を使えるのは知ってるぜ。妙なマネしたらもう一人の女がどうなっても知らねぇぞ。おっと、俺らは女が何処にいるかしらないから聞き出そうとしても無駄だぜ」

「貴様ら……」


くっ、バレてるのか。しかもジュリエットも捕まってるらしい。しかたなく練っていた魔力を霧散させる。


「ジュリエットは無事なんだろうな。傷ひとつ付いていたら許さんぞ。地獄の果てまで追いかけて八つ裂きにしてくれる!」

「おー、怖い怖い、ハッハッハッ」


下品な笑いが起きる。ムカつく奴らだ。


「それに私の生徒達は高位貴族の子息だ。何かあったらお前たちの方こそ危ないんじゃないか」

「フン、そんなもん何の対策もしてないと思ってんのか?」


ヤバいな。本格的に打つ手が無い。


「おい、コイツを付けな」

「なんだコレは」

「コイツはアレだ、奴隷の首輪ってヤツだ」

「そんな物まで用意しているとは……」

「いいから早く付けろ」


奴隷の首輪とは、付けた者の魔法を封じ、主の命令に逆らえなくなるものだ。普通はそんなもの手に入らないが、裏社会にツテがあり大金を用意すれば手に入れられるはずだ。ということはかなりの大物がバックについているのだろうか。ますます厄介なことになった。スライムの私にも効果があるかどうかわからないが、進んで付けたいものではない。最悪スライム化して外せばいいだろうが。


「これを付けたら私の生徒たちを開放してくれるのか?」

「へっへっへっ、約束してやんよ。だから早く付けな」


まったくもって信じられないが、付けるしかなさそうだ。まさか生徒たちを、ジュリエットを見捨てるわけにも行くまい。首輪を拾い、恐る恐る首に嵌める。カチッと音がなった瞬間、脳裏を光が埋め尽くし、意識を失った。


**


目を覚ますと豪奢なベッドに寝かされていた。服もスケスケのネグリジェのようなものに変えられていた。首もとに手をやると首輪が嵌っている。魔法を使おうとしてみても魔力が散らされてうまく練ることができない。かなり強力な魔導具のようだ。どんな仕組みなんだろうか。上手く解決したらコイツをバラして研究してみたいものだ。


窓から見える外は明るい。まだそんなに時間は経っていないようだ。あれからどうなったのだろうか。私のこの状況を考えると、おそらく今回の事を仕掛けた黒幕が接触してくるはずだ。それを待って反撃するのが最善だと思う。


しばらくすると扉が開き誰かが入ってきた。シャルル……?


「シャルル?無事だったの?」


シャルルはニヤニヤと笑っている。まさかっ!?


「クックック、まだわからないのか。私が貴方を捕らえさせたのだ。アイツらに捕まっていたのは演技だよ」

「それじゃあジュリエットは?」

「ジュリエットは別の場所に捕らえてある。伯爵令嬢だからね。いくらでも使い道はある」

「貴族なんだから捜索の手が伸びるんじゃないの?」

「もちろん考えてある。それに全ては貴方の責任となる。貴方は失踪し、ジュリエットも消える。誰がどうみても貴方が犯人だろう。もちろん元生徒であった私とエルヴェも話を聞かれるだろうから、貴方が怪しかったと言っておくよ」


うわー、コイツはゲスだ。最近は結構仲良くなれてたと思ったんだけどな。情を抱かせてから罠に嵌めるとか最悪だ。かなりショックが大きくて、呆然としてしまった。


「ネオ、貴方は今日から私のモノだ。跪け」

「くっ」


首輪の効果か、必至に抵抗しても体が従ってしまう。ゆっくりとだが、膝が折れていく。なんという強制力だろう。こうなったらスライム化で外してしまおうか。


なんでっ!?スライム化できないっ!?


スライム化しようとしても、魔法と同じように乱される感じがする。まさか、スライム化は魔力が使われていたのか。この首輪は私の天敵じゃないか。やばいな、どうしよう。本格的にピンチだ。


「さぁ、私の奴隷となる誓を立てて、靴にくちづけをしてもらおうか」

「だ、誰が、おまえなんかに……っ」


私の気持ちとは裏腹に、ヤツの靴に近づいていく。


「ほう、それだけ抵抗できるとはさすがだ。他の奴隷はもっと簡単に従ったんだがな」


他にも奴隷にした人たちがいるのか。なんてヤツだ。心の奥底で憎悪を燃やすが、体は勝手に動いていく。そして口が勝手に言葉を紡ぎ出す。


「わ、私はシャルル様の奴隷です。誠心誠意お仕えさせて頂きますので、ど、どうぞ可愛がってくださいませ」


そう言ってヤツの靴に口付ける。なんて屈辱かっ。


「いい気分だ。貴方を臨時講師にして正解だった」

「どういうこと?」

「すんなり合格できて不思議に思わなかったのか?アレは私が手を回したからだ」


思わず絶句する。全て仕組まれていたのか。


「さぁ、次はお楽しみの時間だ。ベッドで淫らに誘ってみせろ」


誰がそんなことするもんかっ。そんなことをするくらいならいっそ……。


思い切って舌を噛み切ろうとするが、噛み切ろうとしても顎に力が入らない。


自殺もできないなんて!


目の前は絶望で真っ黒に染まってしまった。打つ手もなくなった私は、抵抗する気も無くし、命令に従わされる。ベッドに乗った。


いざ誘惑をというところで、突然轟音が響き渡る。何が起こったんだろうか。


「そこで待て」


シャルルはそう言い捨てて出ていってしまった。命令のせいで移動はできないが、それ以外の行動は阻害されていない。今のうちに首輪を何とかしようと試みる。


首輪は首にピッタリと張り付いていて指の入る隙間もない。継ぎ目もなく丈夫な革のような素材で出来ている。素手で外すのは難しそうだ。魔力を練ろうとするもやはり霧散してしまう。


体内で魔力を練ることができないなら、体の外で魔力を練ることはできないだろうか。魔法を使うには、体内で魔力を練り、その魔力を体外で保持し、魔力を触媒として魔法を行使するのだ。それを初めから体外で魔力を操作すれば首輪の影響は受けず練ることができるはずだ。できるかどうかではない。やるのだ。


ベッドの上で座りなおし、瞑想する態勢をになる。両腕で大きな球を抱きかかえるような形を作る。焦る気持ちを抑えて、集中力を高めていく。魔力を少しずつ体外に放出し、バラバラにならないように気をつける。体内で魔力を練るように、円を描く様に腕に沿って魔力を循環させる。行けそうだ。魔力の流れを少しずつ大きく、早くしていく。もう少し……よしっ。


指先から超高圧の水を吹出し、水で切り裂くイメージを想像する。


この魔力量だとあまり長い時間は維持できない。失敗はできない。首輪に指を近づけ魔法を発動させる。数瞬の内に首輪を切断することができたが、勢い余って自分の首も切り裂いてしまった。


しかし慌てることはない。首輪が外れたのでスライム化できる筈だ。怪我を負った部分をスライム化し、修復して元に戻す。血が派手に飛び散ったが問題はないだろう。血の付いたネグリジェは脱ぎ捨てて全裸になる。体に着いた血はスライム化して吸収した。


「ふぅ、危なかった。このまま奴隷にされるかと思った」


さて、このまま逃げるのは悪手だ。あっちは権力持ちだから指名手配されて捕まってしまうのがオチだ。となるとシャルルが戻ってくるのを待つか。いや、さっきの轟音の原因を調べる方がいい。何かが起こっているなら利用できるかもしれない。そう結論付け、屋敷を探ることにした。


部屋を出て左右を確認する。廊下の両側に幾つも部屋があるのでかなり大きな屋敷のようだ。魔力を練り、風の魔法<<集音>>を行使する。長い廊下を一方ずつ調べ、より音の大きい方へと進んでいく。ある部屋の前までくると、中からシャルルとエルヴェの声が聞こえてきた。


「この部屋かな」


体全体をスライム化して、ドアの隙間から滲み込むように侵入する。中にはシャルルとエルヴェ、それに右足を怪我して座り込むジュリエットがいた。ジュリエットは首輪は付けられていないようだ。よかった。部屋の中は所々凍りつき、派手に魔法を行使した後がうかがえる。


しばらく観察していると、話が分かってきた。どうやらジュリエットが杖なしで魔法を行使して暴発した魔法がエルヴェとジュリエット自身を傷つけたようだ。そこへシャルルが駆けつけ今に至る、と。とりあえずシャルルとエルヴェを捕まえようと<<アースバインド>>の魔法を行使する。岩の輪が二人の体に巻きつき拘束する。ついでに杖は<<ストーンバレット>>ではじき飛ばしておく。床に転がる男二人を尻目にジュリエットの傍に現れる。全裸なのがなんとも格好が付かない。


「ネオ先生!」

「貴様っ!一体どうやってここにっ!首輪はどうしたっ!」

「首輪は外させてもらったわ。あんなもので私を縛ろうなんて無駄なことよ。それよりも、こんなことしてどうなるかわかってるんでしょうね」

「くっ…そっちこそ、このまま逃げ出せるなんて思うなよ」

「苦し紛れだってまるわかりよ。とりあえず黙っといてくれない」


そう言うとシャルルとエルヴェに<<サイレント>>の魔法をかける。


「ジュリエット、大丈夫?待っててね、今治すから」

「ネオ先生……、ありがとうございます」

「もう大丈夫よ。私が守ってあげる」


ジュリエットは安心したのか涙を流した。抱きしめて安心させるように頭を撫でてあげる。落ち着くまではそのまましばらくで抱き合っていた。


「さて、コイツらにはそれなりの報いを受けさせてやらなけりゃね」


シャルルのサイレントを解いて話しかける。


「シャルル、他の奴隷の子はどこにいるのかしら?大人しく話せば痛い目には合わないで済むと思うけど」


そう言いつつエルヴェに電撃を浴びせる。エルヴェは絶叫し気絶したようだ。サイレントのお陰で悲鳴は聞こえなかったが、その様子は見ているだけで痛そうだった。ジュリエットがビクっとしたので抱きしめる力を強める。シャルルはエルヴェの様を見て観念したのか大人しく話しだした。


「……この屋敷には隠し部屋が多くある。そのなかの一部を改造して奴隷を隠している」

「じゃあ案内しなさい。その前に私の服はどこにあるのかしら?」

「……処分した。代わりの服なら用意しよう」


何時までも裸でいるのも落ち着かないので先に服を用意させることにした。案内された衣装部屋で服を物色し、なんとか着れそうなものを探して着替える。ちょっと派手で露出が多いが、街でも着れそうなワンピース姿だ。


「碌な服がなかったわね。どーゆー趣味してるのかしら」


シャルルは苦虫を噛み潰したような顔をしている。大方文句を言いたいが、言っても言い返されると思って我慢しているのだろう。さっさと奴隷達が囚われている場所に案内させることにした。


「ここだ」


ある部屋の本棚の前まで来た。何の変哲もないただの本棚に見える。何か仕掛けがあるのだろう。


「真ん中の棚の右から三番目の本を手前に傾けろ」


言うとおりにするとカチッと音が鳴り本棚が動き出した。凄い仕掛けだ。本棚の後ろには地下への入り口が隠れていた。シャルルを先頭にして奥へと進む。下まで降りて次の扉を開ける。


シャルルは中へ入った途端走りだした。


「逃がすか!」


追いかけて中へはいると、それなりの広さの部屋にゴロツキっぽいのが5人いた。ジュリエットを庇いつつ前に出る。


「……罠か」

「フン、奴隷が逃げ出せないように用心くらいしている。お前たち、好きにしていいぞ」

「へっへっへ、ぼっちゃん、いいんですかい?使い物にならなくなりますよ?」

「かまわん。ただし殺すな。存分に可愛がってやれ。おい、誰かこれを外せ」

「だそうだ。嬢ちゃんたちもついてなかった――ッ」


ゴロツキが言い終わる前に発動の早い<<ショック>>の魔法で先制する。出来た隙に走り寄り一番前に居たヤツの腹を貫手で貫く。まずは一人。そのまま止まらずに、奥のヤツにぶつかって行き同様に貫く。二人目。腕を引き抜き、その勢いのまま手刀を振り抜き、そこからスライムの斬撃が飛ばす。後ろから近寄ってきていたヤツの首から胴にかけて切り裂いた。これで三人。


「これで三人。どうする?抵抗するか?」

「…ッ!ふざけんなっ!」


激高して殴りかかってきたヤツの拳を受け止め、握りつぶす。


「いだだだだっ――」


痛みに膝を折ったヤツの顔面に膝を叩き込み昏倒させる。顔面がぐちゃぐちゃなので鼻の骨と前歯は残らず逝っただろう。残ったのは呆然としたシャルルとその拘束を外そうとしていたヤツだけだ。


「もう一度聞くけど、どうする?」

「……降参だ」

「じゃあ大人しくここで眠ってな」


そう言って強力な電撃を浴びせ意識を刈り取る。死にはしないだろう。体に着いた血はスライムで瞬時に吸収してキレイにしておく。入り口から見守っていたジュリエットのもとへ向かう。ジュリエットの目がキラキラしてる。もう私しか見えていないってカンジだ。


「ジュリエット、怪我はない?」

「先生っ、凄いです!」


はいはい、こういうのが好きなのね。さっきまで震えていたとは思えない。元気なのはいいことだ。男達を部屋の隅に退けて奥の扉に向かう。恐らくこの奥に奴隷達が囚われているのだろう。


扉を開けるとプレイルームだった。オドロオドロシイ器具が並んでいる。拷問器具まである。嫌なものを見てしまった。


更に奥の扉を開けると牢屋が並んでいた。中に一人ずつ女の子たちが入っている。奴隷は全部で5人居た。首輪付きは一人だけだが、耳が尖っているのでどうやらエルフのようだ。皆、何事かとこちらを覗っている。


「助けに来たわよ」

「ほ、ほんとうに?」

「ええ、ヤツらは扉の外で死にかけてるわ」


みな、泣き出してしまった。辛い目にあっていたのだろう。牢屋の鍵が見当たらなかったのでこっそりスライム化して解錠した。女の子たちを助けだした後、出会った屋敷の人たちを気絶させつつ脱出した。


「ジュリエット、こういう時ってどこに駆け込んだらいいと思う?」

「そうですね……ヴァロンに駐留するラ・ローヌの騎士団はどうでしょう?北の森のモンスターを狩るためにそれなりの人数が居るはずですが」


というわけで、騎士団に助けを求めることにした。もう少しモメるかと思ったが、ジュリエットの身分が伯爵令嬢ということですんなり話は着いた。騎士団は屋敷に突入し、地下で気絶していたシャルルも捕らえられたようだ。これで今までの悪事も明るみに出てタダでは済まないだろう。


私たちの身柄は騎士団預かりとなり、数日間の事情徴収の後、解放されることになった。

ここまで書いたんですが、ちょっと練り直します。もしかすると全削除するかも。

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