表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

暗い短編

最後の私

作者: 谷川山


 一日一日と、ゆっくりでいてすばやく過ぎ去っていく高校生活。


 特にやりたいことも決まらないまま、回りの人に合わせて流されて。


 自分はこんなんじゃない。やればできるんだ。ただやりたいことが見つからないんだと。自分に言い訳し続けて。


 3年間で得たものは何も無かった。


 むしろ、もうどうしようもないところまで自分は来てしまったような気がして、精神的に不安定になり部屋から出られなくなった。


 行くことができるのはトイレと台所、そして通販を受け取る時に玄関に顔を出すくらい。


 人として終わっているのは分かるのだけれど、自分ではどうしようもない。


 分かっていても、できないんだ。





 卒業式の日、電話があった。


 曰く、「卒業証書ぐらいは自分で受け取りに来い」とのことだった。


 アイロンできれいな制服に久々に身を包み、玄関から顔を出して周りを気にしながら外に出る。


 周りの人の視線を気にしながら自転車で駅まで走り、電車の中で縮こまりながら着くのを待つ。


 できるだけ最後に電車を降り、誰もいなくなった改札口を出て高校に歩いて向かう。


 少しずつ近づいていく度に視線が気になり、びくびくとしながら歩く。


 校門の前で、入るかどうか、盛大に悩む。


 後一歩が踏み出せない。踏み出しせたら行けるのに。





 1時間ほど過ぎ、日が少し傾いてきて、冷たい風が吹き出してきて、あきらめて帰ろうかと思う。


「来ないのか?」


 今年の担任の声が聞こえた。


 後ろを振り返ると、苦笑したような顔で両手をポケットに突っ込み仁王立ちで居た。


 ここまでされたら、もうどうしようもない。行くしかないだろう。


「行きます」




 3年2組の教室に久々に入る。


 いつ以来だろうか。もう、最後に登校した日なんて覚えていない。


 教卓に置いてあった座席表を見て、自分の席に座る。


 職員室に寄った後はすぐに帰ろうとしていたのだが、担任に言われて一度だけこの教室に来てみる事にしたのだ。


 誰も居ない静かな教室の中で、その机の上は異彩を放っていた。


 無くしたはずの体育シューズやジャージが乗っており、その脇には卒業式用だと思われる一輪の花。


 その白い花はとても綺麗だったけれど、花瓶に飾られた花をどうやって持って帰れと。


 クラス全員で書かれたと思われる色紙には薄茶色の様々な模様がついていた。





 

 それから、急がずにゆっくりと家に帰りそっと部屋の扉を閉じた。


 もう、この部屋から出ることは無いだろう。


鬱展開になってしまい非常に申し訳ありません。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ