表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名なき物語  作者: 小楓
プロローグ 魔王vs人類
3/7

EX-3 / Episode 1/2 予期せぬ事態。

やっと半分ぐらいです。

プロローグの割に長いと思うかもしれませんが

これが一番しっくりくる気がします。


1/2 ―予期せぬ事態―

豚人王ボアキング率いるボアの部隊は進軍を開始し、ほどなくして人間の騎士団と遭遇した。

ボアキングの名はポーク。

その名は、かつて人間どもに奴隷として扱われた屈辱と憎悪を、決して忘れぬために――自らに刻みつけたものである。

そして今、その屈辱を晴らす時が訪れた。


ポーク :「人間どもを殲滅せよ!!」

「一匹たりとも残すなよ。」


その号令と同時に、ボアたちは雪崩のように突撃した。

魔王の加護を受けたその力は凄まじく、人間の防陣はあっという間に押し潰されていく。

後方にはゴブリン部隊も控えていたが、出番は当分なさそうだった。

それほどまでに、ボアたちの猛攻は圧倒的だった。

対魔物兵器も次々と投入され始めたが、戦況が覆る気配はない。

依然として、こちらが圧倒的に有利である。

何より――

ポークは、怒り狂っていた。



一方、魔王の城。

魔王レグリスは、ハーピーたちが共有してきた戦場の状況と異変を整理していた。


一つ目。

召喚者パーティーが、前線へと向かっていること。


二つ目。

本来控えているはずの兵が撤退を開始し、勇者と上位の人間たちのみが戦場に残されていること。


三つ目。

――最も不可解な点。

本来、死者を収めるための密閉箱が、なぜか大量に馬車へ積み込まれていたこと。


魔王は思考を巡らせる。

(妙だ……)

最も理解できないのは、あの箱だ。

――死者でも蘇らせるつもりか?

だとすれば、箱の中にいるのは勇者か?

いや……勇者を増やしたところで、兵を撤退させる理由にはならない。

ならば、あれは一体――。


「ハーピーども。箱の中を探れ」


命を受けたハーピーたちは即座に散った。

彼女たちは上位種であり、中にはAランクを超える者もいる。

仮に勇者と接触したとしても、逃げる隙程度は十分に作れるはずだ。



その頃、前線では人間たちの撤退が本格化していた。

――実に、滑稽だ。

同族を見捨て、自分たちだけが生き延びようとする。

人間という種族の愚かさを、魔王は改めて実感する。

撤退によって前線のパワーバランスは完全に崩れた。

ボアたちは逃げる者を追わず、取り残された部隊の殲滅に集中する。

怒りに駆られながらも、その判断は冷静だった。

この好機を逃すはずがない。

ボアたちの士気は、さらに高まっていく。

残された人間たちは、絶望の表情を浮かべていた。

中には逃げ場もないのに、悲鳴を上げながら走り回る者もいる。


魔王はその光景を嘲笑し、つまみにするかのようにワインを口にした。


「戦とは、実に面白いものだな……」


「ルルシアよ、貴様も飲むといい特別なワインを用意しようではないか。」


「では、お持ちしますね。」


そう言うとルルシアはワインだけを持ってきた。


「あ、れ? ……(?)貴様は飲まないのか?」

「はい。遠慮しときます。」

「あぁ……そ、そう――。」


魔王は断られたことが少しショックだったらしい。

ルルシアのために残しておいたワインをまた、自分のグラスに注ぎはじめた――



2/2 ―箱―

魔王はやけに静かだった。

先ほどから、ただ黙々とワインを口にしている。

どうやら、先ほどの出来事を少し引きずっているらしい。

そんなとき、ハーピーたちから念話が届いた。

魔王はグラスをそっとデスクの上に置く。

――箱の中身を確認できた、という報告だった。

その内容に、魔王でさえ目を見開いた。



命を受けたハーピーたちは、息を殺して箱へと近づいていった。

相手は勇者一行。感知能力が異常なほど高い。

わずかな油断が、即死につながる。

一瞬が命取りだ。

そこで、空の第二の支配者――ハーピークイーンは逆転の策を取った。

飛行部隊をあえて前面に出し、大規模な攻撃を仕掛ける。

勇者たちの意識を戦闘へ引きつけ、その隙に――

気配の薄い子供のハーピーたちに、箱の中を確認させる。

策が決まると、子供の中でも特に優秀な五名が選抜され、作戦は即座に実行された。

ハーピークイーン率いる部隊は、上空から勇者めがけて一直線に突撃した。

その数、およそ6万。

勇者がその存在に気づいた瞬間、ハーピーたちは一斉にオーラを解放する。

あえて派手に、大げさに。

すべては、子供たちの気配を悟らせないためだった。

「コモンスキル発動――

斬風ザンプウ』!!」

魔力を形にした巨大な蹄が、空気を切り裂いて放たれる。

空の支配者にふさわしい一撃。

その存在値は、疑いようもなく高かった。

同時に、子供のハーピーたちはクイーンのオーラ解放に紛れ、地上へ急降下。

馬車の荷台付近まで、すでに接近していた。

クイーンの斬風は、さすがの勇者にも確かなダメージを与えた。

それに続き、他のハーピーたちも空から攻撃を開始する。

その間に――

子供たちは馬車へ侵入し、問題の箱を発見。

慎重に、そして震える手で開封した。


「なにこれ……人、じゃ…、ない。」


箱の中から放たれる、異質な圧。

強烈な“何か”を感じ取った瞬間、子供たちの背筋を寒気が走った。

経験の浅い彼女たちには、あまりにも重すぎる存在。

恐怖で腰が抜け、金縛りにあったかのように体が動かなくなる。


その異変に、勇者も気づいた。

「馬車の中だ。

 ――中にいるものを、即座に滅殺しろ」


命令が飛ぶ。

ハーピークイーンは、直ちに子供を守ろうと動いた。

だが、勇者は簡単に突破できる相手ではない。

クイーンが剥き出しの蹄で突撃した瞬間、

一人の勇者が短剣を抜いた。二刀流だ。

刃には魔力が宿り、嫌な光を放っている。


「スキル発動――『トリコ』」


次の瞬間、クイーンの体は刻まれた。

致命傷こそ避けたが、重傷だ。

墜落し、地面に叩きつけられる。


「何が空の支配者だ。笑わせてくれる」

「そこまでにしておきなさい。

 弱者ほど、格好をつけたがるものです」


別の勇者が、冷たく囁いた。

他のハーピーたちも次々と討ち落とされていく。

勇者の前では、あまりにも無力だった。

やがて――

馬車の中にいた子供たちは捕らえられ、勇者の前に投げ捨てられる。


「ねずみ……いや、ひなを捕らえてきました。

 どうします?」

「そうだな……奴隷商にでも売るか」

「いや、ハーピーの翼は高く売れる。

 新鮮なうちに切り取ろう」


勇者が、解体用のナイフを取り出す。


「の、残ったメスは……」


興奮した部下が言う。


「ああ。好きに使え」


それを、黙って見ているクイーンではなかった。

その表情は、怒りと絶望に満ちている。

最後の力を振り絞るように、彼女はスキルを発動した。


「ア……アルティメットスキル……『下級天使メッセンジャー召喚』……」


次の瞬間――

翼を持つ天使が、静かに光の中から現れた。

そして、ただ一言。


「――何用で?」


その純粋すぎる声に、勇者たちでさえ言葉を失う。

赤い瞳。

金色に輝く髪。

――明らかに、この場の“常識”ではなかった。



次回もお楽しみくださいまっせ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ