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084 ソフィアの間合い




「作戦会議を開きます」


 夕食を終えたメンバー達がリビングに集まっている。


「隊長から提案があります」


欠片(かけら)探しも後ひとつになった。そして提案だ。明日で終わらせたい」


 びっくりした表情をする者はいなかった。予測していたらしい。


「カナデさんはこれから忙しくなります。賛成です」


 ジェイドが代表なのだろうか。そう言うとみんながにっこりと笑った。いい仲間達だ。


「決まりました。明日で終わらせましょう」


 エルも嬉しそうだ。どうやらすごい活躍ができたらしい。詳しく聞きたいが今は我慢だ。


「目的地は『パラス島』属性は『(きん)』です」


「わたし、金の属性のことよく分からないのよ」


「サクラ、安心しろ! 私も同じだ」


 こいつはいいやつなのかも知れないな。


「イディア、おまえの身体強化は属性と魔法陣のどちらだ」


「一応、属性だ。だが、弱いので魔法陣で強化している」


「『金』属性は身体強化のことだ。この大陸の属性魔法使いはほとんどが『金』だ」


「うむ、『金』が基本だな。魔素と共に生きてきた人類は、身体強化ができなければ魔物との戦いで生き残れなかっただろう」


「ドワーフ族もそうだぞ。身体強化ができない鍛冶師はいない」


「私は『木』『水』よ。身体強化はできないわ」


「マーレさん、エルフ系は身体能力が生まれた時から高いんです。なので冒険者としても一流なんです」


「おう、おれは魔素が濃いほど強くなるが、ここでならマーレのほうが素早く動けているぞ」


「わたしはどうなるの?」


 天然少女が首を傾げる。


「サクラさんも同じです。基礎能力が高いんです。そこに上限が分からない加護の力もあるので最強です」


 そうなのとはしゃぐ純粋エルフ。


「明日は、全員が欠片を見つける可能性がある」


「ボクもそうなんですか?」


「ジェイドもそうだ。でも、おれから離れるなよ」


 嬉しそうに笑う美少年。周りにいる存在が喜んでいる。


「魔物の特徴はどうなるのですか」


 ソフィアが冷静だ。


「おれは、単純な力比(ちからくら)べだと思っている」


「うむ、同じだ」


「わたしもそうだ」


「ボクもそうです」


 レーデルさん、ディーラさん、ジェイドの意見がそろった。間違いないだろう。


「力比べは自信がないっす」


「リーウス、おまえの身体強化はなんだ」


「感覚っすかね」


「その能力も力だ」


「感覚勝負ってことっすか」


「ああ、そうなる」


「となると、ほぼ個人戦になるな」


 イグニスよその通りだ。


「明日は個人戦だ。そのつもりでいろ。ねこちゃんペンダントを忘れるな。瞬間自動神装結界が発動するので、大怪我や命に関わる危険なない」


「思う存分戦えるって事だな」


 イグニスが指を鳴らしている。やる気満々のようだ。


「よし、今日はここまでだ。明日の朝出発だ」


「ここからなら直ぐよ」


 距離は50キロメートルぐらいだな。風の道なら30分かからないだろう。


 早めに寝たいのだろう、次々に次元渦巻(じげんうずまき)の中に消えていった。


「魔力無しの加護持ちはどうなのだ」


 レーデルさんが聞いてきた。


「そこは分かりません。おれも、そうです。今まで、欠片の気配を感じたことはありません」


「サクラとおまえは特別だからな」


「はい、否定(ひてい)はしませんよ」


 何かを考えているようだが、ここでは話題にしたくないようだ。レーデルさんは口をつぐんだ。


 その日のベニザクラ号は静かだった。




 * * * * *




  朝が来た。


「みなさん、準備はいいですか」


 ぐっすりと寝て、たっぶり朝食を食べた仲間達はみな活力がみなぎっていた。やる気満々だ。


「サクラ、おねがい」


「任せて」


「風の道」


 ベニザクラ号は静かに岩場を離れて上昇していく。


「出発します」


 サバト島があっという間に豆粒になった。




「パラス島上空です。止まります」


 ピタッと止まる。


「上昇します」


「ストップ、視界に入ったっす」


 島全体が見下(みお)ろせる高さになった。 


「中央に金色に光る物が見えるっす」


 神力で視覚強化をして確認する。


 なるほど、そうきたか!


「あれは、精霊結晶だ」


 は、と言う感じの仲間達。


「本体を探す手間は省けたな」


「つまり、用事があるなら魔物を倒して欠片を持ってこいってことだな」


 ディーラさんの言葉に、仲間達の顔つきが変わった。


上等(じょうとう)じゃねえか」


「ええ、そうね」


「目に物見せてくれるわ」


「負けないっす」


瞬殺(しゅんさつ) くくく」


「なんでそんなにやる気になっているんだ!」


「イディア、おれたちはなめられているんだよ」


 イディアの闘志(とうし)に火が付いた。


「剣士の力を思い知らせてやる必要があるな」


 全員の思いがひとつになった。


「降下します」


 ベニザクラ号が静かに降下していった。目的地は、金色に輝く精霊結晶がいるあの場所だ。




「着地します」


 目の前に金色に輝く『精霊結晶』がいる。


「ソフィア、何か感じるか」


「だめね、欠片を持っていないと反応しないみたい」


「やはりそうか。よし、打合せ通りだ。一応、朝決めたグループで動いてくれ。ただし、戦うのは個人戦だ。それで勝利するが条件になる気がする」


「賛成だ」


 レーデルさんが代表のようだ。みんなもうなずく。


「ベニザクラ号はここで待機です。わたしもここで待つことにします」


 これも、打合せの通りだ。ベニザクラ号の中にいる限り、この大陸でサクラさんに危害を加えられる者は存在しない。


「おし、風の森はパーティーで動くぞ」


 イグニス達が歩きだした。


「なら、私達も行くわよ」


 シンティ、ディーラ、エル、イディアがチームだ。猫が一応護衛に付く。


「おれたちも移動だ」


 おれと、ジェイド、ソフィア、レーデルさんがチームになる。


「レーデルさんは、『金属性』ではないんですね」


 ジェイドが話しかけている。この2人も息が合うようだ。


「一応私もエルフなので基礎能力は高いはずだが、成長を早くに止めてしまったので、子ども並の力しかないんだ」


「エルフは自分で成長が止められるのですか」


 ソフィアが驚いている。


「そうなるな。止めたいと意識をすれば止まるが、そこからまた成長させることはできないようだ。私がいい例だ」


「どうして止めたのですか」


「弟のためだよ。再開した時に私だと分かるように、別れた時のままの姿でいることにしたのさ」


「弟はどうなんだ。同じ考えか」


「カナデ、多分だが、記憶がない彼はそのまま成長しているはずだ。一周期の時の姿が成長の終わりだ。後は寿命が来るまで同じ姿だ」


 カルミア様達がそうなるな。


「年をとったエルフもいますよね。あれはどうしてですか」


 ジェイド、いい質問だぞ。


「まれに、成長が止まらないエルフもいるのさ。ただね、そういうエルフはかなりの長寿(ちょうじゅ)になる」


 500年以上の寿命があるエルフだな。


「学院長はそのタイプなのか」


「そうだ」


 納得だ。あのタヌキ(じじい)め。




 ん、くるな。


「何か来たぞ。注意しろ」


 (さる)型だった。『お調子者(ちょうしもの)』だ。しかも棒を持っている。


 猿がソフィアを見ている。そうか、剣士のつもりなのか。


 ソフィアもそう感じたらしい。


「私が相手のようですね」


 いつもの淑女(しゅくじょ)ではない。剣士モードのソフィアに雰囲気が変わった。


「おれたちは手を出さない。存分(ぞんぶん)にお仕置(しお)きしてやれ」


 ソフィアが怪しく笑った。ちょっとかっこいいかも。


「私は居合(いあ)いよ。間合(まあ)いに入った時があたなが負けるとき」


 ソフィアが抜刀(ばっとう)前の剣に手を掛けた。日本刀とほぼ同じ形状の片刃(かたば)剣だ。しかも、神力剣になっている。半端(はんぱ)ないぞ。


『お調子者』は森の中で真価(しんか)が発揮される。太い(みき)や細い枝を使った立体攻撃ができるからだ。樹魔達でさえ、動きについて行けずに()(くぐ)られる事がある。


 ここは、その森の中だ。自分が有利な場所で待ち構えていたという所か。


「動きませんね」


「いや、少しずつ近づいている。間合いを(はか)ってるんだろう」


 確か、木性魔物の時は3メートルだったはずだ。


 いきなりだった、お調子者が棒を投げたのだ。ソフィアの反応がわずかに遅れた。剣士にとって剣は(たましい)だ。それを投げるとは思わなかったのだろう。


 ソフィアがちょっと視線を動かした時に、お調子者は消えていた。どこだ! 立体攻撃なら上のはずだ。


 固まりが三つ木の上を動いていた。やられた。一対一だと思い込んでしまった。相手は魔物だ。剣士ではない。


 介入(かいにゅう)するか。


 ソフィアは(あわ)てていなかった。大丈夫だ。


 (いた)るとことから石が飛んできた。それを最小限の動きで()けている。


「ウキキキ」


 上、左右、三つ同時に黒い固まりが降ってきた。手には棒を持っている。


抜刀(ばっとう)


 声と共に、クルリと一回転をした。


納刀(のうとう)


 チン


 (さや)に収まる音がした。ソフィアがスッと立ち上がった。


「間合いに入った時が負ける時だと言ったはずですよ」


 にっこりと笑ってそう言った。地面には、三つの魔石と金色に輝く欠片が落ちていた。


「ソフィアさん、かっこいいです」


 ジェイドがキラキラした目で見上げている。


「イグニスさんとの稽古(けいこ)の成果が出ました。最高5体のお調子者との対戦を想定して練習していたので何とかなりました」


「いや、余裕だったぞ。確実に強くなっている。頼もしいよ」


 ソフィアの(ほほ)がほんのりと赤くなっていた。どうした。どこかにぶつけたのか。


「カナデさん、多分違いますよ」


 ん、ジェイド、何がだ?


 やれやれという表情のジェイド。おれは何か失敗をしたのか。


「カナデ、次が来たようだぞ」


 レーデルさんがそう言って、前方を指さした。


 狼型が1体ゆっくりと近づいてきた。


 体長は2メートルぐらい、大樹の森なら中型になるが、ここでなら大型の部類だろう。


 相手は誰だ。


 金色の目が、金色に輝く髪の毛なびかせている美少年をじっと見つめていた。





次話投稿は明日の7時10分になります

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