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083 土属性魔物の罠




「作戦会議を行います」


 司会はエルだ。


「調査方法について隊長より説明があります」


「レーデルさんの指摘通りだった。この島は土属性の魔物が仕掛けた罠だらけの島だ」


「カナデ、例えばどんな罠だ」


 イディアがいるとみんな分かっているだろうという思い込みを修正できる。


「蟻型は何でもない様に見せかけた土の空き地にいた。イグニスが言っていたが、あの場所に着地していたら一斉に蟻型が襲いかかって来たはずだ」


 クエバは大丈夫か。チラッと見てみるとご機嫌だった。炎による一掃でスッキリしたようだ。


「つまり、他の魔物達も、何らかの罠を張って待ち構えているはずだ」


「予想される魔物は3つです。1つ目は(あり)型、2つ目は土竜(もぐら)型、3つ目は(ねずみ)型です」


「ジェイド、ビヨンはいないのか」


「水属性の島では1メートルでしたのでいたとしても脅威(きょうい)にはならないでしょう」


「ジェイドの考えに賛成だ。そして、忠告だ。その1メートルの蚯蚓(みみず)型を餌にしている大きさの魔物ということだ。けっこうでかいぞ」


「レーデルの言う通りだな。でかくて、穴を掘る為の爪がきっと鋭いぞ」


 ディーラさんが爪で襲ってくる様子を再現している。確かにやっかいそうだ。


「大樹の森の1層にいるやつらは大人(おとな)しいが、ここのやつらはきっと凶暴だな」


「師匠、なぜですか?」


「土地が狭いからな。生存競争が激しいはずだ」


 確かにそうだな。


「イグニスの指摘に賛成だ。ここの魔物は、賢くて凶暴だと思って作戦を考えた方がよさそうだ」


 レーデルさんも同じ考えか。


「まとめるぞ。この島は賢く凶暴な土属性の魔物が罠を張って待ち構えている。これでいいか」


 全員が同じ危機意識を持った。これでいい。


「さて、どうする。振動波発生装置は2台ある。『(べに)』と『(はく)』に設置できるから、グループを二つにするか」


「その方がよさそうだな」


 レーデルさんも賛成だ。


「なら、おれのグループを分けるぞ」


 みんなも意義はないようだ。うなずいている。


「ソフィアはおれといっしょだ。本体を探す事になるからな。ジェイドもそうだ。おれが責任を持って守る」


「なら、エルはシンティといっしょがいいわね。連携ができそうだから」


 マーレさんの案に賛成だ。


「提案がある。『風の森』はパーティーで動きたい。クエバとリーウスをおれの組みにしてくれ」


 なるほど、その方が動きやすいだろう。


「了解した。『白』の組みは『風の森』とシンティ、エル、ディーラさんだ」


「なら『紅』はカナデさん達が来るのね」


 サクラさんが嬉しそうだ。この頃いつも別行動だったからな、いっしょに動くのは久しぶりだ。


「よし、チーム分けもできた。お昼を食べたら捜索の開始だ」


「俺様はシンティに付くぞ」


「うん、おねがい」


 つくも(猫)がいればいざというときでも安心だ。頼りになる猫だ。




 マーレさん特性のお弁当を(たい)らげる。うまい。これならお店の大繁盛(だいはんじょう)は間違い無しだ。


「おれ、引退後はマーレのお店の用心棒にでもなるかな」


「師匠、わたしもお供します」


「なら、おいらもっす」


「くくく、私は会計」


 『風の森』パーティー解散後は安泰(あんたい)だ。




「よし、調査開始だ!」


 紅も白も戦闘型ではなく歩行型になっている。これなら全員が乗ったまま移動できる。


 蜘蛛(くも)が2匹シャカシャカと森の中を進んでいく。


「ここから別行動よ。紅は南側半分ね」


「サクラ、なら白は北側半分よ」


 この2人もいいコンビだ。


「カナデさん。行きますよ」


「はい、捜索開始です」


「効率を優先します。真色眼 対象『紅』」


 ピコン!


「紅を(ねら)っている魔物がいます。前方50メートルです」


「この大きさを狙うのか。何者だ?」


 ホントだよ。どこのバカだ。


 蟻型だった。軍隊蟻と呼ばれている種類だ。巣を持たずに移動しながら獲物に襲いかかるどう猛な奴らだ。


「振動波発生装置は使えない。やっかいな魔物だから殲滅(せんめつ)対象にする。サクラさん風の道で吹っ飛ばしましょう」


「いい考えね」


「風の道」


 サクラさんの風の道が湖まで伸びていく。10キロメートルはありそうだ。これなら戻ってこられないだろう。


「魔法陣展開 竜巻吸引(きゅういん)


 落ち葉を片付ける時に使う清掃用の魔法陣だ。掃除機のように蟻たちを吸い込んでいく。それが風の道の効果範囲に入るとあっという間に海の方角に運ばれていく。


 数千匹はいた蟻たちは全て湖の上だ。きっと魚の餌になる。


「カナデさん、イグニスさんの火魔法と今の風の道による一掃でも、欠片は現れませんね」


「今までなら、これだけ派手にやれば出てきたんだがな」


 ジェイドと首を傾げる。


「罠を見破っての殲滅が条件だな」


 レーデルさんの考えに賛成だ。ジェイドもだ。


「カナデさん、罠はどうやって見つけるのですか」


 ソフィアだ。


「土竜か鼠かで対応が変わる」


「どう変わるのですか」


「土竜ならいても数匹だ。鼠ならたぶんだが数百匹だ」


「数が違うのね」


「サクラさん、土竜は多分ですが落とし穴が罠です」


「そうね、穴掘りが得意よ」


「鼠なら誘導されます」


「鼠叩きね」


「はい、追いかけているうちにいつの間にか巣の中に誘導されていたという感じですね」


「そこで一斉に襲いかかる……だな」


 みんなで顔を見合わせて、身震(みぶる)いをした。何となくだが、紅も震えている。




「鼠なんかに(だま)されないわよ、行くわよ紅」


「カナデ、誘われて穴に入るのも作戦としては()りだぞ」


 レーデルさんだ。


「はい、神装結界があるので奴らは何もできません。そのまま、振動波発生装置で一掃することもできます」


「どうしますか。罠を利用して罠にかけるは、何となくですが欠片好みの行動な気がします」


「うむ、私もジェイドに賛成だ」


 サクラさんがすごく嫌そうな顔でこちらを見た。


「まじですか!」


 3人でにっこりと微笑(ほほえ)んでうなずいた。ソフィアがやれやれという顔で天井を見た。




「紅、大丈夫だ。神装結界を2重掛けした。絶対に鼠に(かじ)られることはない」


 何となく嫌がっている紅を説得する。


「紅ごめんね。我慢(がまん)して。作戦なのよ」


 サクラさんも覚悟を決めたようだ。


「よしいくぞ、真色眼 対象鼠型魔物」


 ピコン! いたぞ。


「前方1000メートルにいます」


「よし、(さと)られないようにこのままの速度で移動だ」


 レーデルさんがサクラさんの隣で指示を出す。


 シャカシャカと蜘蛛が進む。


「いました。顔を出しています」


「よし、今はこちらが捕食者(ほしょくしゃ)だ。追いかけるぞ」


「食べちゃうぞーですね。任せてください」


 紅が追いかける。鼠が穴に消えた。そして、違うあなから別の鼠が顔を出す。


「誘導が始まった。されるままに追いかけるんだ」


「わかりました」


 サクラさんが楽しみだした。


「紅、鼠叩きよ。でも、手加減(てかげん)してね」


 紅が触手(しょくしゅ)でモグラ叩きゲームのように次から次へと出てくる鼠を追いかけ回す。


「鼠の巣穴に入るぞ」


 急に暗くなった。そして、至る所に光が見える。鼠の目だ。それが数千個はあるだろう。かなり大きな巣のようだ。


 鼠が一斉に襲いかかって来た。しかし、結界に弾かれて次から次に転げ落ちていく。


「振動波発生装置を使うぞ」


 ねらいを定めて振動版を打ち込んだ。


「巣の規模が分からない。少し広めに設定するぞ」


 縦500m横10m、深さ1mに目盛りを合わせた。圧力は80だ。一気に殲滅する。


「よし設定した。対ショック態勢で待機。5秒後に作動する。5、4、3、2、1、スイッチオン」


 ズズズズズォォォォォォォォォーン!


 低い振動波が巣穴に広がっていく。


 鼠たちは一瞬で霧散する。


 振動波は30秒間続いた。念には念を入れてだ。


 静寂が訪れた。


「魔法陣展開 (あかり)


 ソフィアが巣穴を明るくした。


 鼠たちはすべて魔石になっていた。その数500以上だ。


「レーデルさん。欠片があるかも知れません。探してください」


「うむ!」


 ベニザクラ号がら降りると、魔石の絨毯(じゅたん)が広がっている。()まないように歩くのが大変だ。


「見つけたよ」


 レーデルさんが茶色い精霊結晶の欠片を片手で持ち上げた。


「さて、これで本体を探せるな」


 みんながソフィアを見た。


「任せてください」




 大量の魔石は、銘柄(めいがら)指定をしてアイテムボックスに一瞬で収納する。もはや誰も驚かない。手間(てま)(ばぶ)けたと喜んでいた。


 そのまま、巣穴を出た。


(つくも(猫)、こっちは見つけたよ)


(こちらも見つけた。合流だ、サクラの風の道でこっちに来い)


「サクラさん、向こうも見つけました。合流します。風の道をお願いします」


「任せて」


「風の道」


 紅が静かに浮かび上がった。ペンテ達がいないがこの距離なら問題ない。


「北です。距離10キロメートルぐらいです」


「発進します」


 景色が後に飛んでいった。




 白が見えた。


「止まります」


 ピタッと止まる。


「降下します」


 白の隣に静かに着地した。


「順調ね。エルとシンティ2人とも見つけたの」


「ううん、今回はエルだけよ」


 シンティは火属性の欠片を持っているからかな?


「ソフィア、よろしく」


 エルの欠片とレーデルさんの欠片を手のひらに乗せる。


「いました。喜んでいます」


 お気に()したようだな。


「島の中心です。洞穴(ほらあな)があるようです。その中ですね」


「ベニザクラ号でそこまでは行きましょう」


 ベニザクラ号は通常の歩行型に戻っていた。


「みんなで行きますか」


「はい」


 全員が声を(そろ)えて返事をした。




「風の道」


 紅色の風の渦が島の中心に向かって伸びていった。


「出発します」


 景色が後ろに吹っ飛んだ。


「上空です。止まります」


「横穴っす。洞穴っす」


「ダンジョンじゃないだろうな」


「イグニス、それなはい」


「レーデル、どうしてだ!」


 何でおまえが代わりに返事をする。


「魔素が薄い。ここではダンジョンは維持できない」


「わかったぞ!」


 レーデルさんってすごい。イディアが納得している。




「エスプリさんが出てくると時間が止まるので、どこにいても同じだけど、どうする。降りてまつか」


「同じなら乗っているわ。どうせ、ベニザクラ号ごと運ばれるんでしょう」


 シンティらしい。みんなも同じか。


「この大きさの洞窟なら、ベニザクラ号ごと入れるわよ」


「なるほど、歩行型か」


「車内はちょと(せま)くなるから、イグニス達は寝室で待機よ」


「おう、そうさせてもらうわ」


 風の森のメンバーは、次元渦巻(じげんうずまき)の中に消えていった。


「ベニザクラ号、歩行型よ」


 シュパッと変形する。そして、シャカシャカと洞窟に中に入っていった。




 入り口から5キロメートルほどだろう。急に広くなっている場所に出た。


 そこにいた。茶色い精霊結晶の本体が。


 ソフィアといっしょに近づいてみる。サクラさん達も下車して見守っている。


「さわります」


 ソフィアがそっと、精霊結晶に手で触れた。


 シュパーン!


 光の線が洞窟の入り口に向かって打ち上がった。




 時が止まった。




「ありがとねー。本当に助かるわー」


 女神様がヘコヘコしながら出てきた。威厳はどうしたとつくも(猫)に言われるぞ。


「この子、慎重(しんちょう)な性格だった気がするのよね。よく見つけられたわね」


「けっこう、楽しんでいましたよ。長い間放置(ほうち)されていて性格が変わったのかも知れませんね」


「ああ、ありうるわ」


 軽い冗談のつもりだったのだが、うんうんとうなずいている。


「さて、後は(きん)の結晶だけね。いつ頃になりそうなの」


「ちょっと、これから忙しくなります」


「そう、でもいいわよ。6万年待ったのだから1年や2年なんて気にならないわ」


「ええ、なので、明日決着を付けます」


「……ズイブンせっかちね」


「中央の火山島がちょっと気になるんです」


「ああ、あの島ね。私が知らない島よ」


「だからです。じっくり調べることにします」


「わかった。任せるわ」


「じゃあ、この子連れて帰るわね」


「はい、お願いします」


「ふふふ、一度言ってみたかったのよこの台詞(せりふ)


「……?」


「また明日ね」


 女神様は茶色い精霊結晶をつれて渦の中に消えていった。


「また明日……か。いい言葉だな」


「明日がどうしたのですか」


 色が戻ったソフィアが不思議そうに聞いてきた。


「また話をするよ」


「……?」




 さて、予定は3日だ。余裕はある。明日で決着を付けよう。 


  ベニザクラ号の前でシンティといっしょにエルを()(たた)えているイディアを見ながらそう決意をした。





次話投稿は明日の7時10分になります

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