表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/84

064 メディの事情(1)




 食堂でいきなり相席を申し込んできたのは、最後の攻略対象である『メリディーラ・ケルデース』だった。チャルダン公太子殿下の婚約者だ。


 なかなか姿を現さなかったのは、『味噌』と『醤油』を探していたからだ。この2つが、私達との交渉で切り札となると考えたようだ。


 良いところに目をつけた。なぜなら、つくも(猫)がご機嫌だからだ。すんなりと仲間として認めてもらえたのだ。この女性は(あなど)れない。そして、仲間となったらきっと心強い味方になる。私の勘もそう言っている。


 とにかく、事情がありそうだ。隠れ家に招待し、みんなで作戦会議をすることになった。


「メディ、ねこちゃんペンダントに握って魔力を流してごらん」


「はい、こうですかって、なんで目の前に屋敷が現れるんですか」


 うん、この反応! みんな1度は経験するんだよ。ソフィアとイディアが満足そうだ。


「隠れ家にようこそ! 歓迎するよメディ」


 みんなから声を掛けられて、びっくりしている。でも、本当に驚くのはこれからだよ。




「イグニス、パーティーメンバーはみんないるか」


「ああ、リビングにいるぞ」


 半裸の姿で素振りをしていたので声を掛け、行くぞと合図をする。


 なんだー? と、メディとおれたちを見ながら身支度をする。


「紹介するよ、『メリディーラ・ケルデース』、チャルダンの婚約者だ」


「最後の攻略対象ですね。これで全員の顔が分かりました」


 ジェイドが黒板に似顔絵を描く。そっくりだ。


「夕食後に、作戦会議を開く。メディの事情もそのときに聞く。それから、しばらくメディもここに住むから部屋の割り振り頼めるかな」


 サクラさんを見た。


「いいわよ、メディ。部屋に案内するわ。選んでね」


 メディが動かない。何の詮索(せんさく)も疑いの目も向けられないことにやや戸惑(とまど)っているようだ。


「メディ、カナデの人を見る目は折紙付(おりがみつ)きなんだ。そういう力があるんだ。だから、カナデが連れてきた者を私達は無条件で信用する。それがこの屋敷で暮らすことわりなんだよ」


 ディーラさんがそう言って優しくメディの頭を撫でた。


 ぽろっ、ぽろっと、涙が流れていた。なにか、よほどの事情がありそうだ。きっと、ここ数日はゆっくり寝ていないだろう。とにかく、夕食までゆっくり休んでもらおう。


 サクラさんに目で合図を送る。


「さあ、メディ、少し部屋で休みましょう」


 サクラさんの肩には、いつの間にかモモンガが乗っていた。お尻ふりふりダンスを踊っている。


 メディが笑った。そして、サクラさんと一緒に二階に登っていった。


「なにか、かなりの事情を抱えていそうですね」


 ジェイドも気になるようだ。


「まあな、全ては夕食後だな」


 みんながうなずき、いつもの日課をするために部屋を出て行った。




「今日は、メディの歓迎会を兼ねます。料理長、メニューの説明をお願いします」


「今日の俺様はすこぶるご機嫌だ。みんな喜べ、味噌と醤油が見つかった。これで、料理の味がワンランク上がる。メニューも増える。イグニス。本物の蒲焼きももうすぐ実現するぞ」


 イグニスのお腹がグーと返事をした。


 みりんの代替え品が見つかったのだ。白ワインだ。砂糖や蜂蜜を混ぜて味を調える。そして、米が収穫できれば、日本酒造りも始められる。そうすれば、それも代替え品になる。


 蒸留酒が作成できるようになれば、みりん自体を作ることもできるだろう。本物の蒲焼(かばや)きの味を再現するためなら労力は惜しまない。うん、つくも(猫)やっちゃいな!


「醤油と味噌を使った料理はまたのお楽しみだ。今日は、中華という味付けの料理を作った。市場にオイスターソースに似た物が売っていた。全部買い占めたぞ」


 猫がどや顔だ!


「鶏ガラスープやポークのエキスを何とか調味料として使えるように配分した。オイスターソースと混ぜ合わせて味を調えてみた。まだまだ、本物にはほど遠いが、それなりの味にはなった。酢はないのでレモン汁で代用した」


 マーレ達が料理を運んできた。壁際(かべぎわ)のテープルに鍋ごと置く。この隠れ家では、常にバイキング形式になる。自分で好きなだけ盛り付けるのだ。


酢豚(スブタ)風あんかけ豚炒め、チンジャオロース、回鍋肉(ホイコーロー)、あんかけスパゲッティ、麻婆茄子(マーボナス)はちょっと甘い、中華風サラダに中華スープの中華三昧(ざんまい)だ。パンは王都でうまいパン屋を見つけた。長期契約してきたからいつでも食べ放題だ。さあ、召し上がれ!」


「酢豚にたけのこも入っているわ。こんな食べ方もあるのね」


「オイスターソースは貝で作ってあるらしぞ。アルエパ公国の海で獲れたやつかもしれんな。海にも行きたいのう」


 うん、マーレとディーラさんに賛成。いつか行きたい!


 サザエが食べたい。ウニも食べたい。刺身(さしみ)も食べたい。そして、寿司だ! 夢は広がる。


「酸味、苦味、甘味、辛味、塩味の5つの味がバランス良く組み合わされているわね。見た目もいいわ。食欲をそそる臭いもたまらないわ。盛り付けも豪快(ごうかい)で、パーティーなどで重宝(ちょうほう)しそうな料理ね」


 ソフィア料理評論家の感想でした。


 やっぱり、ご飯が欲しいな。それと、ラーメンも食べたい。でも、麺ってどうやって作るんだろう。


 みんながお腹いっぱいになるまで食べた。メディも、初めは遠慮していたが、イグニス、シンティ、ディーラさんの食いしん坊トリオの勢いに飲まれて、どんどんと食べていた。そして、びっくりした表情だ。商人の顔になっていた。


 ちょっと、休憩。今日の食器洗い当番はディーラさん達だ。レーデルさんも見よう見まねで手伝っている。


 レーデルさんの食事は、モモンガのオキナさんが食堂から運んでいたらしい。事情を知っている調理員がそっと用意していた。それが代々受け継がれて100年だ。すごいことだよな。





次話投稿は明日の7時10分になります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ