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転生したら俺様猫のつくも神がついてきました 『魔術学院編』  作者: にゃん之助
4章 結晶の欠片と王城からの呼び出し
58/82

058 忙しい休日(1)




 5月中旬8の日から3日間は学院も公官庁もお休みになる。日にちなら、18日から20日だ。


 この世界のサラリーマン達は、7日働いて3日休むのが普通だ。日本の生活なら、5日働いて2日休む感覚と同じになる。


 リティ島の探索が順調に終わったので、私達も3日間の休日になる。久しぶりのまとまった休みだ。


 つくも(猫)達は、市場に買い出しだ。マーレさんが張り切っている。冒険者を廃業(はいぎょう)したら料理店を開きたいみたいだ。つくも(猫)仕込みの腕なら、大繁盛(だいはんじょう)間違いなしだ。


 冒険者は、だいたい50歳ぐらいで区切(くぎ)りを付ける。人族の人生が平均で130歳ぐらいなので、第二の人生は80年近くある。マーレさんの人生設計は理想的だ。


 シンティ達は、アーマー作りのお手伝いだ。優先されるのがエレウス王への献上品(けんじょうひん)になる。任せた!


 イディアは、イグニス達と森へ行くみたいだ。稽古(けいこ)を兼ねた狩りをするのだろう。ソフィアと離れての生活にも慣れたようだ。たぶん、いいことなのだろう。


 サクラさんは、つくも(猫)達に付き合うみたいだ。どうやらマーレさんに触発(しょくはつ)されて、料理の世界に目覚めたらしい。基礎能力というか自力というか、とにかく何をやらせても優秀な姫が本気になると……すごいことになりそうだ。


 ジェイドとソフィアは私に付き合ってくれる。すっかり2人に甘えた生活に慣れてしまった。いいのだろうか。


 行きはみんなでベニザクラ号での移動になる。着いたら魔動車で別行動だ。様子によっては、先に帰ってもらうことになるだろう。私の風の道は魔動車ごと運べるので帰還には問題ない。


  居残り組は、イグニス、リーウス、イディア、シンティ、エル、ディーラさんだ。留守を頼みます。


「出発します」


 ベニザクラ号が静かに浮かび上がった。王都の方角に半透明な紅色の渦が続いている。


「発進!」


 景色がすべて線になった。




「王都近くです。道に降りますね」


 着地と同時に通常型に変形し、簡易認識阻害を発動する。そのまま、繁華街に向かった。


「カナデさん、帰りはどうしますか?」


「いろいろやることがあるので別行動にします。先に帰ってください」


「わかりました。夕飯は、期待してくださいね」


「はい……もちろんです」


 うん、ちょっと不安だけど楽しみにしています。




 まずは洋服店だ。仮縫(かりぬ)いができているのでサイズやデザインの微調整が必要になる。


 きれいに剪定(せんてい)された植木の前を通って、店のドアを開けた。店員がぺこりと頭を下げ、直ぐに奥に消えていった。やがて、支店長といっしょに職人さんが布を抱えてやって来た。


「カナデ様、いらっしゃいませ。仮縫いが仕上がっています。試着をお願いします」


 ヴィンスさんが、すごくご機嫌だ。どうしたのだろう。


「カナデ様、ねこちゃん印のお店が大評判になっています」


 ああ、そっちか。


「お店の方は、ロギスさんに丸投げの形になっていてすみません」


 実は、密かに王都郊外の広大な敷地にねこちゃん印の工場が建設されている。社長はなんと『カナリズマ・デ・トゥーラ』つまり私なのだ。


 これも、抵抗勢力である有力貴族達を手玉に取るための戦略になる。


「いえいえ、あの温水シャワートイレがもう快適で、このお店ももちろん設置済みです。あとで試してみてください」


 ははは……。


 下水道工事が必要ないから、購入してきてポンと置けばそれで終わりだ。


「それから、コトン紙パネルも購入しました。トイレ用と生活用と、もう部屋中に置いてあります」


 ネーミングをいろいろ考えたのだけど、いいアイデアが浮かばず、綿のような紙ということで『コトン紙』にした。


 このコトン紙パネルは次元箱になっている。箱の厚みは1センチ位なのに、中には五千枚の紙が納まっている。


 日本の200組400枚の大きめなテッシュボックス12個位の分量になる。1つ購入すれ半年から1年は持つのだ。もちろん、お値段もそれなりだ。裕福層向けの商品になる。


「お店の方にも後で顔を出してみますが、まだ、私の存在は秘密ですのでよろしくお願いします」


「もちろんでございます」


「着心地はいかがですか」


 ヴィンスさんと話をしている間に着付けが終わった。うん、申し分ない。


「ソフィア、どうかな?」


「はい、完璧です!」


 ソフィアの太鼓判だ。間違いないだろう。ジェイドもうなずいている。問題ない。


「ソフィア、ジェイド、装飾任せていいか。おれがやると子どものままごとレベルになりそうだ」


 日本にいたときからこういうファッション感覚は成長しなかった。なにしろ、発想の基本が聖衣(クロス)だからな……。




 試着は(とどこう)りなく終わり、次の目的地に向かう。


 距離はそれほどないので、ぶらぶら歩きだ。


 大きな通りは、車道と歩道が明確に分けられている。走っているのは魔動車が多い。馬車や魔鳥車は道の真ん中を使う。日本で見かける路面電車みたいなイメージだ。


 右折左折は、手で合図をして止まってもらう。馬車を使うのは権力者が多いので、余計なトラブル防止のために魔動車は直ぐに止まる。


 歩道を歩いているとき、すれ違った人たちが話している内容が聞こえてきた。


「このごろ、黒い魔動車に猫の絵が描いてあるのをよく見かけるよな。あれなんだ」


「知らないのか、ねこちゃん印会社の営業車だよ。おまえの家にはまだないのか、あのトイレ」


「温水シャワートイレか。そんなにいいのか」


「ここら辺の有名なお店にはみんな設置してあるから一度使ってみな。快適でもう今までのトイレには戻れなくなるぞ」


「そうか、なら、試してみるか」


 他にも聞こえてきた。


「あのコトン紙パネル、やっと手に入ったのよ。紙の質が全く違うの。柔らかくて優しいの」


「何枚ぐらい入っているの?」


「五千枚よ。それであの値段、安いわ。まあ、ボックスはレンタルなんだけどね」


「半年は使えるんでしょう。なら、レンタルで十分よね」


「それに、トイレの次元箱を回収に来る営業さんに頼めば届けてもくれるのよ。(いた)れり()くせりね」


 うん、営業さん頑張っているみたいだね。ボーナスはずもうかな。


 ニヤニヤしている私を見ながら不思議そうな顔をしているソフィアとジェイド。社長が私だとは知っているが、まだ、細かな事業内容は教えていない。その内話すよ。


 ロギスさんに任せたお店は、繁華街の一等地にあった。ここは、商品を売ってもいるが、主に体験してもらうお店になっている。かなり混雑している。


「だいぶ混雑しているね。邪魔になりそうだから寄るのはやめるよ」


「お昼まではまだ時間がありますから、先にギルドに行きましょう」


 そうだな、報告書渡しておくか。


「わかった、移動はどうする」


「時間はあります。歩きましょう」


 また、3人でぶらぶらと歩く。ジェイドは髪の毛に簡易認識阻害を発動している。そうしないと、すれ違う人が5人中3人は振り返ってしまう。どこのアイドルだ!


 大通りから外れて、少し細い路地に入る。(こだわ)り職人がいる工房兼店舗の店が建ち並ぶ。ブラキオさんのような、大がかりな解体をする工房は郊外(こうがい)になるが、靴や鞄をちょこと修理するようなお店はここに集中している。


「そう言えば、ディーラさんのお店もこの辺りだったけど、今どうなっているんだろう」


「お弟子さんがいるので任せているみたいですよ」


「なんだ、なら安心だ」





次話投稿は明日の7時10分になります

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