055 元気な島(1)
リティ島は火属性の魔物が棲む島だ。1匹の火力は弱く集団で襲ってくるのがやっかいだと考えていた。
しかし、強力な火魔法を使う魔物がいることが分かった。
『蛇型』だ。愛称を『ガラガラ』と名付けた。ギルドにはこの名称で登録してもらう。
大樹の森にいる蛇型は魔法を使ったという確認はされていない。しかし、『ガラガラ』は、青白い高温の炎を打ってきた。しかも、1発目は音もしない気配もない状態で打ってきた。
真色眼を発動していなかったら、瞬間自動神装結界が発動しただろう。
あの青白い炎は一撃必殺の炎だ。命中すれば、次を打つ必要がないほどの威力がある。あの、ガラガラとした音は、放電して炎を蓄積しておく為にしているのだろう。
「エル、緊急会議だ。かなり危険なやつがいた!」
昼食のパンにかぶりつきながら、エルを急かした。
「緊急作戦会議です。隊長、報告をお願いします」
「A級相当の魔物がいた」
ゴクリ! 生唾を飲む仲間達。
「蛇型だ。『ガラガラ』と名付けた。ギルドにはこの名で登録してもらう。つまり、新種だ」
ゴクリ!
「青白い高温の炎を、尻尾の先から打ってくる。イカヅチと同じぐらいのスピードと威力だ」
「まじか、とんでもねえ魔物じゃねえか」
イグニスが真顔だ。
「1発目は気配も音もしなかった。一撃必殺の炎だ!」
緊張が走る。
「作戦の練り直しが必要ですね」
「ああ、ジェイドの言う通りだ」
「グループはどうするの。組み直すの?」
シンティだ。だいぶ不安になったようだ。無理もない。
「神装結界と認識阻害は有効だ。命の危険はない」
安堵のため息が聞こえる。
「ただ、認識阻害は解除すると効果がなくなる。つまり、一度認識されるとまたかけ直しても効果がないと言うことだ」
「それって、蛇型だけなの」
「サクラさん、爬虫類型は全てと考えた方がいいです」
「やっかいだな」
「イグニス、どうする」
「リーウス、おまえの索敵の範囲は今どのぐらいだ」
「半径1キロメートルぐらいっす」
「十分だな。カナデおれらは予定通りでいい」
「だよな。大樹の森のB級とやり合えるんだ。ここのA級なら敵ではないよな」
「買いかぶるな! 結構必死だぞ」
顔を見合わせてニヤリとした。
「瞬間自動神装結界は必ず発動する。命の危険はない。でも、油断するな!」
「ああ、任せろ!」
「あっ、それからおいらからも報告っす」
リーウスがみんなを見回した。
「この島、元気がいいっす」
「……」
何を言っているんだこいつは?
「魔物が逃げないっす。魔力草も切っても直ぐ生えてくるっす」
「私も感じていました。精霊の気配が強いです。というかそう、元気なんです」
つまり、みんなやる気満々で襲ってくるって事ですね。
「言いたいことは理解した」
「ああ、おれもだ!」
「わたしも!」
イグニスとサクラさんががっくりしている。
「疲れる探索になりそうね」
シンティもうなだれている。
「つくも(猫)、蛇には注意だ。サクラさんをよろしく」
「蛇も蒲焼きにすれば旨いかも知れないな」
ああ、あの蛇の運命は決まってしまった。
さっきまでの緊張感はなくなり、面倒くさいなーと言う雰囲気の方が強くなった。
あんまり頑張らないで、適当に逃げて欲しいな。
残念ながら、私のささやかな願いは無視されてしまった。
「どうなっている。切りがないぞ!」
火虫だ。クワガタ型のやつが、角をバチンと鳴らして火花を飛ばしてくる。
顔の周りをユスリカ型が静電気を帯びたまま飛び回っている。バチバチとしている。かなりしつこい。
元気なのにも程があるぞ! くそっ、しつこい!
ソフィアも頑張って切っていたが早々と降参した。今は『白』の中にいる。
神装結界も、この小さいのにはさすがに反応しない。毒でももっていれば発動するがこいつらは無毒だ。
仕方ない。
「風の道」
自分の周りに風の渦を作る。小さい奴らはみんな吹き飛ばされた。
「ふう、これで一段落か……」
『白』の中に入り、ため息をつく。
「すみません。早々に逃げ出しました」
ソフィアが申し訳なさそうに飲み物を持ってきた。
「気にするな、おれでもそうする」
安心したようににっこりとする。
さて、他のメンバーはどうしているかな? 気にはなるが、目的は欠片の探索だ。まだ、糸口も見えてこない。
今回は、シンティとイグニスが鍵になりそうだ。『火属性』を持っているのはこの2人だ。ただ、根拠はマーレさんの『木属性』の事例だけなので期待はできない。
参謀に相談しよう。
「ジェイド、何か糸口はないか」
「ぼくもいろいろ考えてみたんですが、今までは、大規模な攻撃や大物を倒したときに欠片が見つかっていますよね」
おお、確かに!
鰻と毒性魔物の一掃だ。ということは、あいつかー、やだなー、関わりたくない。
でも、それしかないか。蛇を探そう。
「仕方ない、蛇を探すか」
ソフィアが嫌そーな顔をした。シンティもだ。何となくだが、『白』からも嫌そうな気配を感じた。
次話投稿は明日の7時10分になります




