054 火属性の魔物(2)
「ディーラさん。今回も留守番をお願いします」
「わかった、帰ってくる頃には、おまえの分は仕上がっているぞ」
「本当ですか。すごく楽しみです」
私が小躍りしていると、その浮かれ方が珍しいのかみんなが生暖かい目で見ている。でも、装着は『男のロマン』なんだよ。
「風の道」
ベニザクラ号が静かに浮かび上がった。
「目的地はリティ島です。いったんラルタ島で休みます。そして、火山島を迂回して、リティへ向かいます距離は700キロメートルほどです」
うなずく仲間達。
「出発します」
景色が後ろに吹っ飛んでいった。
時速200㎞は出ている。ペンテとテネリの魔力が安定している。サクラさんにも余裕がある。この分なら、2時間ほどでラルタ島に着くだろう。
予定通りの時簡にラルタ島に着き、1時間ほど休憩した後リティ島へ向かった。
「リティ島上空です。止まります」
ピタッと止まる。
「上昇します」
どんどん高度を上げていく。
「島全体が視界に入りました。止まります」
「樹木が少ないっすね。樹魔のような|魔木が確認できるっす」
「大きな樹木は少ないわ。魔力草は元気そうね」
リーウスは強化した視力で、マーレは木魔法でそれぞれ様子を確認した。
「火属性の魔物だからな、火に弱い植物は生き残れなかったんだろう」
「なるほど!」
私の意見にみんなが納得したようだ。
「降下します。着陸地点は東海岸砂浜です」
いい判断だ!
「了解!」
着陸と同時に歩行型に変形した。砂浜の上なので、かなり沈む。触手が高さを調節する。AI顔負けの平行調整だ。
「カナデさん。あれ、お願いできますか」
「わかった。『真色眼』」
赤玉が散らばっている。強い魔物も確認できた。
「強いやつがいるね。油断して戦うと大怪我するレベルの魔物だ。あと、小さな反応が固まっているところもある」
「予想通りですね。30年前とあまり変わっていないと言うことでしょうか」
「ジェイド、多種多様っていうのがどの程度なのかが比較できないから、そこは分からないな」
「ああ、確かにそうですね。発見した魔物のことをもっと詳しく記録しておいてくれればいいのですが、当時の冒険者にそれができる人がいなかったんですね」
この王子様は、さりげなくきついことを言う。
「ジェイド、カナデじゃないんだら無理よ!」
シンティ、おまえもか!
「どうする。直ぐ調査に出るか。偵察に行くか」
イグニスが冷静だ。
「カナデさん。この近くには危険なやついないんでしょう。なら、ひとまず休憩ですね」
はい、さくらさん。お疲れですよね。すみません。
「お昼まで休憩だ。おれとリーウスでちょっと探ってくる」
「なら、ペンテとテネリのことは、うちがやっておくわ。サクラは休んで」
「シンティ助かる。そうさせてもらう」
スフィンクス姿でくつろいでいた猫をむんずと抱き上げて次元渦巻の中に消えていった。
「リーウス、おまえは、半径500メートルだ。注意しろよ」
「了解っす」
「おれは、半径3キロメートルってところか」
神装結界の認識阻害を発動させる。どの程度有効かを確かめておきたい。
確か、強い反応があっちでしていたよな。
「行ってみるか」
火蜥蜴だ。体長1メートルって所だな。大樹の森だと1メートルは小さい部類だ。ここだとどうなのだろう。
周りを見渡す。30センチから60センチ位のがたくさんいる。なら、大きいになりそうだ。
火蜥蜴は、びっくりしたり、仲間同士でけんかをしたりすると火を打つ。狂乱状態になると手に負えなくなる。大樹の森だから火事にならないが、ここなら一帯は焼け野原だ。
近寄ってみた。1メートルほどなら反応はない。有効だ。
認識機能を解除した。
「うわっ!」
いきなり火を打たれた。結構反応が早い。周りの小さいのもつられて火を打つ。乱打になった。
怪獣映画のように口から火を噴くのではない。背中にある骨皮板が振動して火を発動させる。恐竜の剣竜みたいな感じだ。
骨皮板の数が多いと、一度に何発も打ってくる。やっかいだ。
「認識阻害は有効だ。これでいくか。でも他の種族だと分からないからな。特に蛇型には注意が必要だからなー」
「真色眼 適応蛇型」
ピコン! 直ぐ近くだ! やばい。
一瞬で真上に跳躍した。
バチッ 青白い強烈な炎だ。
近くの木魔に飛び移る。下を見る。
尻尾の先をガラガラ震わせた蛇がいた。こっちを見上げている。体長は3メートルぐらいある。三角の骨皮板がガラガラ鳴り、バチバチと放電している。
大樹の森にはいないタイプだ。こいつがこの島の頂点だろう。獲物を絶対に逃がさない。そんな執念を感じる相手だ。こいつは危険だ。
「認識阻害発動」
そっと、隣の木に飛び移る。
蛇の視線が付いてくる。一度認識されると追跡されてしまうようだ。やはり蛇は手強い。
「風の道」
取りあえず退散だ。作戦会議が必要だな。
銀色のトンネルが東海岸に向かって伸びていった。
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