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転生したら俺様猫のつくも神がついてきました 『魔術学院編』  作者: にゃん之助
4章 結晶の欠片と王城からの呼び出し
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051 湿地帯の開墾




 自由市場で見つけたのは、原始(げんし)の稲だった。地球の歴史で考えると、日本なら縄文時代後期にはすでに稲作が始まっていたのではないかという説もある。


 その頃の稲は赤米だったようだ。見つけた原始の稲も赤米だ。そして、穂には数えるほどしか実が付いていない。これでは家畜の餌にしかならなかったのもうなずける。


 つくも(猫)の物質付与型神力は、食品にも適応される。縄文時代後期からの品種改良となると約4000年分の時を早回しすることになるが、それを3日で終わらせることができるつくも(猫)は、やはり神様なのだな。


 米の事はつくも(猫)の任せた。おれは魔術学院5月の中旬が始まるのだ。




 中旬1の日は、初等部に行く日だ。あれ以来、マイアコス王国の第4王子にはあっていない。どうやら自国に逃げ帰ったようだ。


 大国エレウス王国の王女様に目をつけられ、ジェイドファンクラブの女子達からも冷たい視線を向けられて耐えられる男子はいないだろう。自業自得(じごうじとく)だ、同情する気にもならん。


「カナデ様、ひどいです。私がいないときに来るなんて、それに、トパースとだけ合うなんて許せません」


 トパースは、きっとあの男の子、トパシオス王子のことだな。


「すみません。何しろ急な呼び出しだったんです」


「まあ、事情が事情ですから、仕方ないですね。今回は見逃します」


 よく分からないが、流れに乗った方が無難(ぶなん)だろう。


「ご配慮感謝します」


 満足そうにうなずく王女様。これで正解だったようだ。


 今回襲ってきたのは、ストラミア帝国のごろつきだった。金で雇われたようだ。背後(はいご)には、過激な10層抵抗勢力の貴族がいる。エレウス王国も一枚岩(いちまいいわ)ではない。


 王女様の周りにも、変装した護衛が何人かいる。


「母が、あらためてお茶会にご招待したいそうです。そのときは、私がご接待いたしますからね」


 王女様に敬語を使われると困るのだが……。


「すみません、カナデと呼び捨てでお願いします」


「わかりました。カナデ、さあ、まいりますわよ」


 父親といいこの娘といい、切り替えが早い。


「カナデさん、黒板は魔法陣だけではなく、他の学習でも使えますね。特に、計算練習や文字の練習にも有効です」


 初等部長のレーンスさんがそう言いながら1学年の教室に案内してくれた。あれほど文句ばかりを言っていた貴族の生徒達が、平民と机を並べて一心不乱(いっしんふらん)に計算に取り組んでいた。


 分かるという喜びから来る学習意欲の前には身分の差など関係ない。子どもとはそういう生き物だ。


「それでですね、ちょっと困った事になるかも知れません」


 レーンスさんが、申し訳なさそうに経緯を説明してくれた。


 黒板を利用した学習が、短時間で予想以上の成果を出してしまった。中等部生の兄がいる貴族から、黒板を譲れという圧力がかかりだしたようだ。予備として50個程の在庫はある。しかし、中等部の生徒は500人ほどいる。


 それに、ただで譲ることになると、必ずなぜ我が家にはくれないのかという苦情が来ることになる。


「大丈夫です。初等部へは、セルビギティウムの姫様が効果を調べるために特別に用意したものです。もし、必要ならば、売り出していますので、購入すればいいのです」


 私がニヤリとしてそう説明すると、


「わかりました。そのように伝えます」


 やはり、ニヤリとしてレーンスさんがうなずいた。


 今頃、導入を反対していた貴族枠の教授達も、この効果には注目しているだろう。仮にも教育者だ。目が節穴(ふしあな)でない限り、黒板の有効性には気がつくだろう。さて、どんな反応をしてくるかな、楽しみだ。




 なんと言うことだ、彼らは目が節穴だった。


 中等部でも導入を検討しましょうという平民出身の先生の提案を、あんなのはインチキだと言って、貴族枠の先生達が大笑いしたようだ。


 まあいい、確かに魔法陣を覚えるという過程は終わっている。それに関しては学生達も困ることはないだろう。それに、必要ならば自分たちで買えばいい。効果を認めている先生達には、販売店への推薦状を書く許可を出した。


 その推薦状を持っていけば、優先的にしかも割引で購入できるようになっている。見栄っ張りの貴族用に、品質は同じでちょっと飾りが豪華な高級品も用意した。これなら、貴族も購入しやすいだろう。




 * * * * *




 中旬2の日、魔法陣学の授業にサクラさんがやって来た。魔法陣の勉強もしてみたいという本人の希望である。シンティが同じ時間に魔法学の授業に出ている。私が護衛も兼ねられるので都合がいい。


 魔法陣の学習は、初等部の授業を見学し課題がないかを話し合うというものだ。今日は、その打合せをしている。


 突然、ノックも無しにドアが乱暴に開いた。


「ここに、平民のカナデという生徒がいるはずだ。直ぐに出てこい」


 どうやら貴族枠の教授らしい。同じような服装をしているのが数人いる。何の用だ?


 今はサクラさんの騎士(ナイト)だ。平民ではない。へりくつだが真実だ。無視をして話し合いを再開した。


「出てこいと行っているだろう。おまえだ!」


 指さされた。でも、平民ではない。無視だ!


 話し合いを再開する。ボンが面白がっている。後で覚えていろ。


「おまえだと言っているだろう! なぜ無視をする。不敬(ふけい)無礼打(ぶれいう)ちにするぞ」


 その言葉、そのままおまえに返っていくがいいのか?


 真っ赤になって怒鳴(どなり)()らしている男を見てそう思う。


「私は任務中だ。邪魔をしないで欲しい」


「なに訳の分からないことを言っている。まあいい。要件は推薦状の許可だ! 今すぐ私達にその権限を譲れ」


 ああ、そういうこと。黒板の教育効果については分からないが、その推薦状が持つ効果についてはよく分かるんだ。さすがは貴族、利権(りけん)については敏感だ!


 妙な部分で納得してしまった。


 今後、黒板が売れ始めれば、推薦状は利益を生む。欲しがる貴族に対して優位に立てる。そんな計算が働いたのだろう。


「お断りします」


「なっ、ふざけるな! 平民風情(ふぜい)が、図に乗るな。おまえはただの冒険者でしかもC級だという事は調べが付いている」


 そして、サクラさんを見た。


「サクラシア様、なぜ、こんな平民などを騎士(ナイト)にしているのですか。貴族としての(ほこ)りはないのですかな」


「全くです。カルミア様もなぜ、あんな魔物が引く車両で登院(とういん)なさったのでしょか」


 あ、こいつ、入学式の時正門にいたうるさいやつだ!


「とにかくだ、直ぐに権利を我々によこせ! 今直ぐにだ」


 さて、どうしたものか。


「私の騎士(ナイト)、この魔物達を排除(はいじょ)しなさい」


「イエスマイロード」


(神装力第三権限開放 神装威圧発動)


(イメージ、刹那(せつな)


 ゼロが小数点以下17個並ぶごくごく小さな威圧である。


「ひぃー、化け物!」


 腰を抜かして()いつくばりながら逃げていった。


「みなさん、魔物は去りました。学習を続けましょう」


 ボンが笑いすぎて椅子から転がり落ちている。まあ、おれもスッキリした。ありがとう。我が姫。




 隠れ家に帰ると、アーマー展開部分の試作品が出来上がっていた。


 早速試してみる。


「装着、騎士(ナイト)アーマー」


 この言葉、本当はいらないけど、大事だよね! こういうお約束は。


 ねこちゃんペンダントから転送された、形状記憶樹魔繊維が瞬時に体の関節部分を中心に展開されていく。紐がペンダントからどんどん出てきて体に巻き付いていくイメージだ。


「どうだ、窮屈(きゅうくつ)さはないか」


「そうですね、ちょっと、動きづらい部分がありますね」


 腕を回したり屈伸(くっしん)をしたりして確認していく。


「そうか、ちょっと調整するから動くな」


 原理はユニットと同じだ。体に合わせて作ったアーマーをそのままペンダントの中の異次元収納に入れておく。


 それを、初めにジョイントになる形状記憶樹魔繊維を体に巻き付け後から装甲板を転送するだけだ。難しいのは、体に合った動かしやすい形にすることだ。


 この仕事は、専門家に任せるしかない。


「よし、これで、装甲板を付けた形に仕上げるぞ。アクセサリーなどもいっしょに付けていくことになる。あと、7日もあれば、完成だ」


 やったー。うれしい。ワクワクする。


「とても楽しみです。よろしくお願いします」


「おう、任せておけ」


 いい出会いがあった。ヴィンスさんありがとう。


 つくも(猫)はいない。どうやら、湿地帯に行っているようだ。現地で品種改良をしているのだろう。


 こっちも楽しみだ。




* * * * *




 中旬3の日、授業は環境学に出ている。


 魔物生態学は出ても意味がないことが判明した。全て知っていることであり、しかも情報が古い。なので。環境学に鞍替(くらが)えしたのだ。


  本日最後の授業になる。その教室に、今、激震(げきしん)が走っている。


「エレウス王命である。今後、この授業を受けている生徒は、総合研究所環境学主任教授と協力をして、『稲作(いなさく)』という技術の研究を進めることになった」


 マジですか。あれから4日しか過ぎていませんよ。仕事が早すぎませんか。


「環境学主任教授のフォルスカータだ。今後、君たちにも手伝ってもらうことが出てくる。よろしく頼む。そして、1つだけ言っておく。この研究の成果次第で、新大陸の穀物革命が起こる。期待していいぞ」


 はい、その通りです。期待します。


 この授業もおもしろくなりそうだ。




 隠れ家に帰ると、つくも(猫)がいた。


「カナデ、行くぞ!」


 有無(うむ)を言わさずつくも(猫)の風の道に放り込まれた。


 そこには、日本で見慣れた水田の風景があった。広さは10ヘクタールぐらいだろう。面積だと100000平方メートルだ。東京ドーム2個分ぐらいになる。


「あまり広いと管理が出来ないからな。初めはこんなもんだろう」


「やったね、つくも(猫)。米は収穫できそうなの」


「将来的には二毛作(にもうさく)を視野に入れている。それに耐えられるような品種改良をしてみた。稲の収穫は8月頃になるかな」


「それが実現すると、食糧問題はほぼ解決するね」


「これも、抵抗貴族への牽制(けんせい)だ。特に小麦貴族には大打撃(だいだげき)だぞ」


 猫が舌なめずりをしている。


 抵抗勢力との対抗手段が着々と進んでいる。


 で、ここ、神装結界で囲まれているけど、あの研究職の人たちを、どうやってここに入れるようにしようか?


 作戦会議の結果、簡易型ねこちゃんペンダントをシンティがまたまた量産することになった。





次話投稿は明日の7時10分になります

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