046 毒性植物魔物 ★
★ ★ ★ ★ ★ (イグニス視点)
毒性植物魔物か、大樹の森にもいるが、奴らはだいたいが1体だけでいる。何しろ強えからな。冒険者もできれば会いたくねえし近づきたくもねえとみんな思っている。
樹魔車両といっしょの時なら何とかなる。樹魔も強えからな。触手同士で戦ってくれるから、おれらはやつの急所を狙える。活動停止なんて考えている暇もねえよ。
さて、この島の奴らはどうかな。大きさは小さい、触手の数も少ない。威力も弱い。だが、数が半端ねえ。切っても切っても湧いて来やがる。
カナデが言っていた通りだ。この島はもう限界を超えている。大規模な駆除の提案をギルドにするか。
旅に出てからのカナデは変わった。
あの猫が神獣様というのもたまげたが、カナデが探求者とも思わなかった。
カナデとの出会いは、あいつがまだE級冒険者だったときだ。ほっそりとした男が依頼板の前でなにやら考え込んでいた。
きっと、何か困っているんだろうと声をかけてみた。そうしたらびっくりした顔をして、「だいじょうぶです」って言って、どこかに行ってしまった。無愛想なやつだと思ったよ。
その後も、何回か見かけたがいつも1人でいた。
素材換金所にいるとき、次元箱を抱えてうろうろしていたから、「受付はそこだぞ」と教えてやった。そうしたら、「ありがとうございます」って、すごく丁寧なおじぎをして笑っていた。
なんだ、いいやつじゃないかと直感で思ったよ。
そのあと、たまげることになったがな。次元箱の中には、本当に1人で集めたのかって疑いたくなるほどの世界樹の葉が詰めこまれていたからな。
所長室に呼ばれていたから、きっと褒められたんだろう。次の日にD級に昇格していたからな。
そこからだ、あいつの快進撃が始まったのは、いつの間にか、『教官』って呼ばれていたよ。
他の中堅冒険者達は、初めは気味悪がって近づかなかったが、おれは、あいつがいいやつだと分かっていたからな。ちょくちょく声をかけているうちに何となく仲良くなってたな。
でも、どこか遠慮しているところがあったんだよな。
今のカナデは生き生きしている。周りにいる奴らもいいやつだ。よかったな。
「サクラの嬢ちゃん。ちょっと、無茶するがいいか」
「いいわよ、紅の中にいる限り安全よ」
「イグニス、私も外に行くわ。補助が必要でしょう」
分かっていたか、優秀な副官だ。たすかるよ。
「どの位の規模なの」
「この海岸線にいる奴らは駆除だな」
「だいぶ無茶ね、魔力は足りるの」
「ああ、問題ない。それに、カナデのやつが「必要だろ」って赤いのを山ほど渡してきたからな」
「お見通しね!」
さて、この海岸線だけでも正常に戻しておくか。駆除隊の基地にできるからな。
「身体強化 剛力」
「魔法剣 火力最大」
何だろうな、いつも思う。この体中から湧き出てくる力のことを。
カナデが言うには、体の中にある『ミトコリア』だったかな、そんな名前のやつから出ているらしいが、おれにはよく分からんな。
「マーレ、合わせられるか」
「問題ない、もう発動済みよ。いつでもいいわ」
「よし、いくぞ」
剣は横一線だ。魔法で風は起こせない。ならば、剛力で無理矢理作るまでだ。
「超高熱」
「最大乾燥」
「剛力 横一文字斬り」
岩をも溶かす超高熱の風と乾燥の重ねがけの魔法だ。植物ならば一瞬で干からび霧散する。そこには何も残らない。あるとしたら、魔石のみだ。
「ふう、こんなもんだな」
「みごとね。だいたい3キロメートルぐらいは砂浜に戻ったわね」
「魔石は残っているか」
「ええ、結構たくさん落ちているわ」
「よし、回収だな」
「嬢ちゃん、魔石が回収できるまで、一応警戒態勢でいてくれ」
「わかった。イグニスさすがね。属性魔法使いって、やっぱり格が違うわね」
「ははは、嬢ちゃんの『風の加護』の方が規格外だぞ!」
「イグニス、ちょっと来て」
「なんだ」
「これ、もしかしたら欠片じゃない?」
マーレが持っていたのは、緑色の結晶の欠片だった。
★ ★ ★ ★ ★ (イディア視点)
「イディア、これからとても大事な事を聞くぞ。よく考え、そして、正直に答えろよ」
いつものふぬけ顔ではない。真剣だ。何を言い出すつもりだ。
「おまえはソフィアの護衛だ。一番優先されるのはソフィアだな」
「当たり前だ。考えるまでもない!」
「だいぶ意地悪な質問をするぞ! なら、おれたちは何だ」
なんだと、こいつらは私の何だ。まだ、出会ってわずかしか一緒にいないこいつらは私の何だ……。
「……う、それは、仲間だと思っている」
「どっちが大事だなんていうバカな質問はしないぞ。だが、軍隊での作戦行動だったらどうする」
作戦行動中だぞ。そんなの決まっている。命令には絶対に従う。それができなければ切られる。でも、今は違うだろ。私は学生だ!
「……くっ、嫌な質問だな! 今は学生だわからん!」
「わかった。悪かったな意地悪なことを言って」
まったくだ、いったい何が言いたいんだ。私はおまえが気に入らん。最近ソフィア様に近すぎるぞ。調子に乗るな。
「イディア、頼みがある。おまえの仲間を守ってくれないか」
誰を守る。仲間だと……。こいつらのことか?
「蔦は剣で切ると動きが止まった。再生もしなかった。そして、攻撃もやんだ。つまり、切ってしまえばいいということだ」
ああ、私にも理解できるよ。剣士としての私を見ているのだな。ならば、期待に応えよう。私は剣士だ。ソフィア様もそれを望むはずだ。
「私は誰と組めばいいのだ」
「シンティの組みに入ってくれ。サクラさんの所にはイグニスがいる。おれの所にはソフィアがいる。剣士がいないのはそこだけだ」
「了解した。カナデ、ソフィア様をよろしく頼む」
「ああ、任せろ。絶対に守ってみせる」
ふん、おまえのでたらめさは嫌というほど見てきた。くやしいが、おまえほど安心してソフィア様を任せられる男はいない。
「つまり、襲ってくる奴らを全て切ってしまえばいいって事だな」
師匠、格好いいです。私も剣士です。師匠に負けないよう、頑張ります。
「イグニスの本気モードを久しぶりに見たぞ。やっぱり魔法使いは怖いな」
「ふん、私はスピード特化だ、師匠には及ばないが近づく奴らは全て切る」
「イディア、頼りにしている」
ふん、おだてても、ソフィア様に馴れ馴れしくすることは認めないからな。
「イディア、その剣をちょっと貸せ」
神獣様……いったい、なんでしょうか……。
「ふむ、よく手入れがされたいい剣だ。さて、……よし、終わった」
何が終わったのでしょうか? まさか、人生ではないですよね。
「おまえは、神力剣が欲しいと言っていただろう。その通りにしてやったぞ」
シンリョクケン……て、なんですか? そんなこと、いいましたか?
「ねこちゃん、仕様は?」
「イメージの再現だ。神装結界みたいな物だ」
「カナデがやっていたあの焼き肉の網のこと」
「まあな、使い方はイディア次第で無限だ。ただ、いきなり使いこなすのは難しいだろうから、今は、刃こぼれがしない、折れたり欠けても自動的に修復するぐらいだな」
よく分からないが、すごい剣なのですね。神獣様!
「つくも(猫)殿、かたじけない! これで仲間を守れる。感謝する!」
「わはははは、なんだこの切れ味は、まったく刃こぼれをしないぞ。切っても切っても切れ味が変わらない。いや、逆によくなっている気がするぞ!」
「姿勢がきれい。よく切れるから」
「クエバ殿、ご指摘感謝! なるほど、そういうことか」
「それにしても、これでは切りがないな」
「ウジャウジャいるのは全て撲滅!」
「イディア、魔法陣『身体強化』」
「了解した。魔法陣展開『身体強化』」
「魔法陣展開『疾風』『腕力』『脚力』重ねがけ」
「うぉぉぉぉ! 力がみなぎる。何をすればいい!」
「ここから全部、ウジャウジャ一掃希望」
「了解した」
「左右袈裟斬り! 1000連続」
「軽い。私は本当に剣を持っているのか。それに、まるで、柔らかい草の束を切っているような感覚だ」
「納刀」
「イディア、おみごと!これで、砂浜が見えたわ。あいつらも霧散していたから魔石があるかもね。探してみましょう」
「たくさんあるっす。取り放題っす」
「回収しておいた方がいいわね。その魔石からまた復活でもしたらやっかいよ」
「了解っす」
「シンティ殿、これ、結晶の欠片ではないだろうか」
「みせて…… 間違いないわね。精霊結晶の欠片よ」
「まだ、ありそうっすね。みんなで探すっす」
★ ★ ★ ★ ★ (ソフィア視点)
「ソフィア、おれが指さした植物を、できるだけ根元から切ってくれ」
「わかりました。魔物の処理はどうしますか」
「大丈夫、認識阻害が有効らしいから、それでいく」
「了解しました」
「エル、男に言う台詞ではないが『絶対におれのそばから離れるなよ』」
「まったくだ、おれではなく、ソフィアに言う言葉だな」
「はい、男の方から一度言われてみたい台詞です」
あれ、わたし、何言っているんだろ。
「そうなのか、ソフィアならいくらでも言ってもらえそうだぞ」
言われたことないです。私の周りには剣技にしか興味がない男しかいません。
「実家が剣技一筋の考え方なんです。私も、小さいときから稽古ばかりでした」
「稽古はきらいなのかい」
嫌いではないわ。どちらかというと好きな方ね。
「いえ、好きな方だと思います」
「人ってね、自分が好きなこと見つけられない事の方が多いんだよ。そして、それができない状況であることも多いかな。ハハハハ」
どうしたんだろう。遠い目をしているわ。
不思議な人。探求者様だからそうなのかしら。
淡々としているのに、とてもあたたかい。
面倒な事をしたくないのに、嫌な顔1つしないで人助けをする。
そして、誰よりも強い。カロスト王国の剣士で、この人に勝てる者は1人もいないわ。
「ソフィア、行くよ」
「はい」
「ソフィアさん、カナデさんて、不思議な人でしょう」
ジェイド様、鋭い子。怖いぐらいよ!
「なんで、私の考えていたことが分かるんですか」
「ぼくも、同じだったからだよ」
え、そうなの。
「うふふふ」「あはははは」
前言撤回よ。仲良くなれそうだわ。
「ソフィア、あの赤い葉っぱのやつだ。ここの魔物は3メートル以内に近づくと反応する。3メートル手前から一気に近づいて切れる?」
私の跳躍が丁度3メートルね、一気に近づいて居合いで抜刀すればいけそうね。
「居合いで行けそうです」
「よし、それでいこう」
「行きます。------抜刀!」
ふー、やったわ。
「おみごと。鮮やかだね」
本当にふしぎな男性。褒められると、すごく心がぽかぽかするわ。
「ありがとうございます」
「心がぽかぽかするでしょう」
ジェイド様、仲間ね!
「はい」
「よし、だいたいこんなものかな。ソフィアありがとう。依頼された植物はだいたい集まったよ」
「これからどうしますか」
「ん、つくも(猫)から念話だ」
「……」
「マーレとイディアが欠片を見つけたらしいよ。大手柄だね」
「お役に立ててよかったです」
イディアもすっかりカナデさんに手のひらの上ね。本当に、人を動かすのが上手だわ。
「それはたぶん、カナデさんに悪意のある下心がないからだよ」
この子、何者なの?
「……」
「よし合流する。風の道を使うから近くに来て」
「はい」
よろこんで!
「お先にどうぞ!」
ジェイド様、いい子だわ。
「神力 風の道」
きれい、銀色に輝くトンネルだわ。
「出発」
う、この景色がぶれるのだけは、慣れないわ。
「ぼくも同じだよ!」
「……」
この子を敵に回してはいけないわ。
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