044 木性魔物の島
4章が始まります
クラウド殿下との激戦? を終えた私は、次の調査対象である『プティ島』探索の為の準備に取りかかった。
クラウド殿下は、その日の内に「入り口の町」へ元婚約者といっしょに旅立ったらしい。王命に従わなかった罪で廃嫡され、平民として生きて行くことになる。
バカ王子は、ただのバカになった。
入り口の町の冒険者は強いぞ。今のおまえでは勝てない相手だ。しっかり鍛えてもらえ。困ったことがあっても、あのゴリラタヌキが何とかする。安心しろ。入り口の町とはそういう町だ。
さて、どうやら作戦会議が始まるようだ。
「作戦会議を始めます。隊長説明をお願いします」
「プティ島は『木性魔物』の島だ。これは間違いない。ジェイドと過去の報告書を調べてみたが、確認されている魔物は木性魔物だけだった」
火山島の調査報告書はなかった。つまり、誰も行ったことがないということだ。
「木性魔物はやっかいだぞ。ほとんどの種族が毒をもっている。神経毒、溶解毒、幻惑胞子、誘眠胞子などがある。そして、擬態できるのもいる。普通の木だと思って近づいたら、触手に捕まり幹に開いた口の中に放り込まれて溶かされるぞ」
仲間達の表情がこわばる。
「そんなに怖がらなくても大丈夫よ。ベニザクラ号の中にいる限り安全だから」
サクラさんの言う通りなのだが、今回ばかりはそうは行かない。
「その通りなんだが、今回はちょっと事情が変わる」
ジェイドを見る。うなずく。
「今回は、精霊結晶探索が目的になります。つまり、外で探すことになるんです。そこで、安全を確保するために、つくも(猫)さんに頼んで『ねこちゃんペンダント』の仕様を更新しました」
「そこはぼくから説明しますね」
エルが黒板にペンダントの絵を描く。
「今までの機能は、瞬間自動神装結界のみでした。今回は、状態異常無効化が付与されています。つまり、毒、幻惑、誘惑、誘眠については無効化されます」
神力の無効化だぞ! 無敵だな。
「ほかに、今後必要になってきますので、異次元収納機能もつきました。容量は次元渦巻がある部屋くらいです。時間停止機能もつきます」
4畳部屋ぐらいの収納になるか。
「魔法陣『神装力』も付与されていますので、あとでカナデさんと一緒に確認してください。この力はかなりの魔力を消耗してしまいます。使い方を誤ると命に関わるので注意が必要です」
「ここ、大事だぞ。俺でさえ、初めは動けなかったからな。魔法陣なので、展開できないと使えないという制限はある。そして、使うときは力を制御できないと危険だ。俺とつくも(猫)で安全に使えるように調整をする」
うなずく仲間達。
「捜索は、4つのグループに分けます」
ジェイドが黒板に名前書いていく。
「まず、ベニザクラ号は戦闘型になります。そして、紅にサクラさんが乗ります。その周りにマーレさんとイグニスさんです」
「白にシンティさんが乗ります。その周りにエルさん、リーウスさん、クエバさんです。エルさんは基本、白の中にいてください」
「カナデさんは、ぼくとソフィアさん、イディアさんと組みます」
「つくも(猫)さんは自由行動です」
うん、猫は自由だ!
「危険になったら神装結界が自動的に発動しますが、油断しないでくださいね」
「追加の注意だ。認識阻害は、魔物によっては通用しないこともあるぞ。使ってもいいが油断はするな」
仲間達の表情に少しゆとりが出てきた。安全は確保されていると実感できたのだろう。
「次は、捜査の方法です」
ジェイドが再び黒板に向かった。
「水の島の精霊結晶は水色でした。なら、木の島の結晶の色は多分緑色系だと予想できます。ただ、そうだと思い込むと見逃してしまうので、目安として考えてください」
「相性があります。きっと、見つけられる何かを持った人が見つけます。すみません、あやふやで……」
いや、そんなもんだよジェイド!
「見つけたらどうすればいいの。本体を見つけられるのはソフィアだけなんでしょう」
シンティがソフィアを見る。
「念話を使います。といっても、つくも(猫)さんにしか届きません。仲間同士はできません」
食料買い出しなどで、猫がしゃべると大騒ぎになるからと、つくも(猫)が自分とだけ念話ができるようにしたのだ。
「なるほど、ねこちゃんに念話を送れば、ねこちゃんがソフィアに念話を送ってくれるのね」
サクラさんが大きくうなずく。
みんなも納得したようだ。
「だいたいよさそうですね。では、明日が出発になります。予備日を入れて3日間の捜索になります。各自準備を進めておいてください。会議を終了します」
エルって、本当に学校の先生みたいだな。
そのあと、一人ひとりの魔法陣『神装力』の調整を行った。サクラさんとジェイドは自分で制御できる。他の人たちはかなり能力を制限した。特に脳筋剣士だ。
風の森は魔法陣展開ができるのがクエバさんだけだ。他のメンバーはそれができるようになるまで封印した。クエバさんも完全に制御ができる。いったい何者だ。
ギルマスに一応の報告はした。しかし、精霊結晶の事は4大精霊も絡んでくるので報告はしなかった。今後の様子をみてどうするかを考えることにする。
水の島であり水性魔物しかいなかったことを報告し、次の島は木性魔物だけだという予測を伝えた。それならばと、
魔物素材の回収をお願いされた。
「ソフィア、おれ達は、捜索の他にもう1つ仕事をする。ギルドからの追加依頼だ。毒性魔物の捕獲になる。ペンダントの異次元収納を使うぞ」
ソフィアに収納方法を教えることにした。イメージすることで出したり入れたりできるのだ。覚えることができればすごく便利で役に立つ。
脳筋剣士には、いろいろ教えるのが面倒なので、「おまえの仕事は護衛だろう」と言いくるめておいた。「あたりまえだ!」と張り切っていたから任せよう。
島では真色眼を使うので、ソフィアには収納をお願いすることになるだろう。ジェイドは結晶の欠片探しに専念してもらおう。
* * * * *
「それでは出発します。ディーラさん、行ってきます」
騎士アーマー作りに専念するため、ディーラさんは隠れ家に残る。次元渦巻は、今は王都の中しかつながらない。困った事があった場合は、つくも(猫)に念話をすればいい。
「風の道」
静かにベニザクラ号が浮かび上がった。
目指すのは、木性魔物の島である「プティ島」になる。
「プティ島上空です。止まります」
ピタッと止まる。
「島全体を見ましょう」
静かに上昇していく。全貌が視界に入った。
「やっぱり森だけっす。池とか地面とかが見えないっす」
「どうしますか。着地できそうな場所がないです」
「ふん、なければ作ればいいだけだ」
つくも(猫)がそう言って、窓から飛び降りた。
やがて、森にサークルが現れた。
もはや誰も驚かない。
そう言えば、日本にいたときも、田んぼに同じようなサークルができていてニュースになっていたな。
直径50メートルほどの円形の空き地にベニザクラ号が着地した。ここにあった木はどこに行ったのだろう。まあ、あそこしかないが……。あとで貴重な素材がないか確認させてもらおう。
「えーと、ここが宿泊場所になります……」
さすがのサクラさんもあきれている。
「お昼まで休憩です。ベニザクラ号はこのままです。次元渦巻を使って、各自休んでください。私も休ませてもらいます」
「サクラさん、ペンテ達のことはおれがやっておくから休んでいいよ」
サクラさんは、ぺこりと頭を下げると、どや顔で尻尾を振っている猫をむんずと抱きかかえて、渦の中に消えた。
この島の生物は危険なので、今回はペンテ達の自由行動は無しだ。次元渦巻でペンテ達のユニットに入ってもらった。中は結構快適になっているので、嫌がることはない。
みんなが休んでいる中、私は少し散策してみることにした。真色眼も試しておいた方がいい。
さて、やるか!
「真色眼発動 適応 毒性生物」
うわっ 真っ赤だ!
なんと言うことだ。毒性生物だらけだぞ!
これはもう一度作戦会議だな。
「試しておくか。神装結界、神装刀発動」
神装結界で作った刀だ。イメージ通りの形にすることができるようになったのだ。焼き肉の網のおかげだ。
棘がある蔦のような植物が巻き付いている樹木に近づいてみた。10メートル、5メートル、3メートル……。突然蔦が鞭のようにしなって襲いかかって来た。
刀でスパッとそれを切ると地面からも触手が湧き出てきた。それもスパッと切断する。切られた蔦はウネウネ動きやがて止まった。それ以上は襲ってくる様子はない。再生もしていない。
「こいつは、思っていた以上にやっかいだぞ!」
仲間に伝えないといけないな。クルリと向きを変え、ベニザクラ号に向かった。
次話投稿は明日の7時10分になります




