041 王太子戦①作戦会議
ここは王都の森の中にある隠れ家だ。認識阻害が展開する神装結界で包まれているので、『ねこちゃんペンダント』がないと、見えない入れないの完璧なセキュリティを誇っている。
この、ねこちゃんペンダントには、様々な仕様が施されている。いや、付与されている。つくも(猫)は、『物質付与型神力』の使い手だ。
その神力は、生物が作り出した物質ならばどんな物にもイメージ通りの力を付与できる。ただ、まだ目覚めたばかりの力なので、できる事は限られているようだ。
「相手が魔法剣使うなら、おまえの剣は神力剣にしてやろうか」
神は冗談を言わない。本気だ。
「いや、地面が割れたらどうするの。闘技場を真っ二つにしたら、誰が弁償するの」
「金ならエレウス王に出させればいいだろう」
闘技場真っ二つは問題ないんですね。
そんな私達の冗談ではないマジモードの会話にもすっかり慣れてしまった仲間達は、誰も相手にしてくれない。
「私も欲しいぞ。その神力剣!」
いや、1人だけいた。脳筋剣士だ。!
「それでは作戦会議を始めます。今日の議題は2つです。1つ目は『湖水島調査について』2つめは『シエン州国王太子戦』になります」
シンティが黒板に議題を書き込んだ。
「カナデ隊長、日程説明をお願いします」
昔、探検隊シリーズをテレビやっていたよな。
「世界樹の精霊からの指名依頼がきた。精霊結晶の捜索と保護だ。そして、結晶の帰還にも協力することになった」
ソフィアを見る。うなずいた。
「島はあと5島ある。真ん中の火山島は一番最後だ。捜索は、旬ごとの予備日を使って1島ずつ行う。つまり、1ヶ月に3つの島の調査になる」
ジェイドを見る。うなずき話し始めた。
「精霊結晶は、その結晶の欠片をみつけることで本体の場所を探せます。前回は、ソフィアがカメの甲羅に付いているのを偶然見つけました」
ソフィアが結晶の欠片をテーブルの上に置いた。
それをみんなが見つめた。
「学院の図書館で、アステル湖の調査報告書を読みました。今回調査した島の名前は『ラルタ』これは『水』です。そして、精霊結晶は水色でした。さらに、その島は水の島でした」
黒板に島の配列を書き出した。
「この島は『プティ』『木』です。次の島は『リティ』『火』です。『サバト』は『土』、『パラス』は『金』になります。もうおわかりだと思いますが、『プティ島』は木の島です。調査は多分難航します」
大きくうなずき、なるほどという顔をする仲間達。
「何がおわかりなのだ? さっぱり分からんぞ!」
こういうキャラは時には必要だ。
「のうき……イディア、水の島には水性魔物しかいなかったよな。だから、木の島には木性魔物しかいないと言うことだよ。そして、木性魔物はやっかいだ。擬態ができるので不意打ちを仕掛けてくる」
イディアも納得したようだ。思い当たることがあるのだろう。
「でも、方法はあります。これは、カナデさんが世界樹の精霊から聞いたことですが、相性があるそうです。ソフィアさんは精霊の声が聞こえます。私やカナデさん、サクラさん達にも聞こえます。つまり、私達にも探せるのではないかと推測しました」
「その声が聞こえないやつは、無理って事なのか」
イグニスがいいことを聞いてきた。
「イグニス、ベニザクラ号のベットの寝心地はどうだ」
「どうだも何も、パルトの高級マットレスだぞ。いいに決まっているだろう」
「何か夢は見るか」
「ん、あんまり見ねえな。ぐっすり寝るからな……でも、たまには見るか」
「目覚めたとき、スッキリしている時があるだろう」
「きれいに剣筋が決まった夢を見ると、スッキリしたのを感じることはあるな」
「それも多分精霊のおかげだぞ。イグニスの美しい剣筋に反応したんだよ」
「そうなのか?」
「それなら、おいらも感じたことあるっす」
「私もあるわ」
「ウジャウジャの一掃、快感!」
他のメンバー達も感じることができたようだ。
「私はないぞ……夢など見たことがない!」
いや、見ても覚えていないだけでしょう。
「イディア、剣技の型練習で、イメージ通りにできたらスッキリしないか」
「もちろん、気持ちがいいぞ!」
「誰かが拍手をしているような気がしたことないか」
「……あるな。ソフィア様かと思って振り返ったら誰もいなかった」
「それも、たぶんだが精霊だぞ。おまえも存在を感じることができる」
「ああ、それならおれもあるぞ!」
イグニスも思い当たることがあるようだ。他のメンバーも、さっきよりも大きくうなずいている。
「ここにいる仲間は、すべて感じることができるので、次からの調査は全員で行います。そして、欠片を見つけたら、ソフィアさんが本体を見つけられます」
うなずく仲間達!
「私は行かないでいいな。アーマー制作に集中したい」
ディーラさんだ、確かにそうして欲しい。
「ああ、もちろんだ! よろしく頼む」
うなずくディーラさん。
「詳しい調査方法は、もう少し検討してみます」
ジェイドは図書館にこもりそうだな。おれも、そうするか。
「では、次の議題です。王太子戦についてです。ソフィアさん説明をお願いします」
ソフィアが黙って、生徒会室に届けられた要項をテーブルに置いた。
みんなが不思議そうにその要項を見ていると、ソフィアがおもむろに魔法陣を展開させた。
「魔法陣展開 火」
要項が一瞬のうちに燃えて消えた。
「ふー、少しスッキリしました」
にっこりと笑ってから、説明を始めた。
シーンとなる作戦会議室に、淡々と説明するソフィアの声が響いていた。
「カナデ、おまえ本当にこの内容で受けたのか……」
イグニスがあきれたように聞いてきた。
「ああ、相手が絶対に勝てると慢心しているのをギャフンと言わせないと、つまらないからな」
しれっとそう言うと、
「生ぬるいですね。ギャフンも言えないぐらいコテンパンにやっつけましょう」
ソフィアが静かに怒っている。
「まあ、カナデさんが負けることは絶対にないので、今は、どうやってコテンパンにして、心を折って、大樹の森の9層に送り込むかをみんなで考えましょう」
ジェイドが最後に物騒なことを言っている。
「カナデさん、次の日は島の調査があるから、パパッとやっつけて、準備をした方がいいんじゃないですか」
サクラさんもぶれない。私の楽勝を前提で考えている。
でも、正直そうしたい。秒で終わらせて休みたい。
「みんな、気持ちはありがたいが、公女達との約束があるから、殿下達の心を折って、希望はないと思わせないといけないんだよ」
「それだと、秒は駄目だな。何が起きたか分からなくて、再戦だ! って騒ぎ出すぞ」
イグニスの言葉にうなずく仲間達。
「あの後、生徒会役員達が協力者達から情報を集めてくれました。クラウド殿下が集めている魔法剣は「火」「氷」そして、かなり珍しいのですが「雷」でした」
8層A級豹型魔物『まだら』の魔法だ。
「イカヅチか、ナツメさんの樹魔車両名前の由来だな」
イグニスが思い出したようにそうつぶやく。ナツメさんは、狂乱状態のまだらの角を折ったことがある。なので、本来ならS級冒険者なのだが貴族の推薦を嫌がって辞退している。
「作戦はこうしましょう。全ての魔法剣を使わせる必要があります。そして、全て破壊します。きっと、怒り狂って自分の最高の技を放ってきます。神装結界で受け止めて無効化し、ぼう然としている相手の剣を破壊して終わりです」
「……」
シーンとなる会議室。これが、11歳の子どもの言葉だろうか……。ジェイドの静かな怒りが伝わってくる。
「あー、うん。わかった。概ね、それでいこう」
苦笑いでうなずく仲間達。
「体術についてはおれに任せてくれ。考えがある」
「わかりました。最後の総当たり戦はどうしますか」
ソフィアが心配そうに聞いてきた。
「つくも(猫)方式で行くよ」
そう言ってにやりと笑った。
頭の上に? を乗せている仲間達の中で、サクラさんとシンティだけが、「ああ、あれね」と、うなずいていた。
イローニャ戦の時は、神力のことを隠していたので、全て1人でやらなければと気負っていた。でも、今は仲間がいる。気持ちがすごく楽だ。
試合は4日後だ。それまでは、島の事をジェイドと調べよう。何か、捜索のヒントになることが見つかるといいのだが。
次話投稿は明日の7時10分になります




