035 第1次湖水島調査団
今日は、4月下旬6の日だ。日本での一週間なら土曜日になる。学院は今日から2日間予備日になり、その後3日間が休みである。だいたいの学生は、予備日に実技を入れている。魔術学なら身体強化をした武術になる。
魔力さえあれば魔法陣を覚えれば身体強化ができるようになる。その場合は魔術士と名乗れる。
入り口の町の冒険者は、生まれたときから持っている属性で身体強化や魔法を発動させる。正式には属性魔法使いと呼ばれる。そして、魔法使い達は、魔素が濃くなるほど強力な魔法を使えるようになるのだ。『風の森』パーティーメンバーは、全員が魔法使いだ。
第1次湖水島調査団のメンバーは昨日話し合って決めた。結局、『風の森』パーティーのイグニスとマーレは護衛として隠れ家に残ることになった。クエバとリーウスは調査団の護衛になる。この仕事は歩合制の対象になる。
「では、忘れ物は無いですね。出発します」
サクラさんの宣言でベニザクラ号が静かに浮かび上がった。一応隠れ家の場所を特定されないために認識阻害を展開させている。
調査団の最終的な判断を下すのはサクラさんの役割だ。私は参謀で、補助がジェイドとソフィアになる。
アステル湖には8個の島がある。
『キリヤ島』これは、王都への旅で3日間過ごした島だ。ここには、魔道波通信用のリレー魔石が設置されている。
『ゼフラ島』は船の発着場の近くにある島で、貴族達のバカンス用の島にもなっている。絶対に行ってはいけない島になる。
この2つの島は調査対象外だ。
調査対象は『パラス島』『ラルタ島』『プティ島』『リティ島』『サバト島』の5つの島と火山島である『フェスティオ島』である。結界らしきものが確認されているのはこの火山島になる。
第1次調査団は『ラルタ島』『プティ島』を3日間で調査をすることにした。
「ラルタ島に向かいます。距離は400キロメートルぐらいになります。途中に降りられる島はありません。一気に行きます。かなりの高速移動になりますので私は集中させてもらいます。時間は3時間を予定しています」
時速130㎞位での移動ということか。なるほど、だからペンテとテネリの牽引にしたんだな。
ペンテとテネリのコンビはサクラさんの加護と相性がいい。サクラさんへの負担が軽減される。
いざというときは、風の道の重ねがけはできる。ツバキさんから伝授してもらってある。準備万端だ。
風の道の旅はやはり快適だ。地平線が見えそうなくらいの広い湖の上を滑るように進んでいく。遠くにかすかに見える森は景色が変わらないので、ゆっくり進んでいるように錯覚してしまう。実際は時速130㎞は出ている。
その気になれば、時速300㎞出せるが、湖の上なので無理はしない。通常運転だ。
島が近づいてきた。ラルタ島の大きさは分からない。それも調査の対象になる。
「ラルタ島上空です。止まります」
ピタッと止まる。
「高度を上げます」
上空から島の大きさを確認するためだ。
「キリヤ島とほぼ同じっす」
こういうことはリーウスが得意だ。
「了解」
「高度下げます。上陸地点は島の西側海岸沿いでどうでしょう」
「目視での危険はないっす。承認っす」
リーウスが強化した視力で確認をした。真色眼での確認も問題なしだ。
「着地します」
着地と同時に風に道が解除された。
「カナデさんとリーウスさんで半径3キロほど偵察をしてきてください。他のメンバーは、ここで待機です」
「了解」
「リーウス、半径500メートル頼む。おれは3キロメートル地点から調べる」
「了解っす」
半径と言っても、半円は海だ。実際の捜索範囲は半分になる。
特に危険な場所も生物もいない。大丈夫だ。
ベニザクラ号に戻ると、リーウスも捜索を終えていた。どちらも問題なしだ。
「安全が確認されたので、ここを宿泊場所にします。お昼まで休憩です」
みんなの表情が緩んだ。
今は11時。8時に出発したので丁度3時間。予定通りだ。
「サクラさん、お疲れ様。ゆっくり休んでください」
「ええ、そうさせてもらうわ」
ベニザクラ号は通常型のままだが、次元渦巻があるので、ユニット交換しなくても寝室に行ける。
サクラさんは、ソファーで丸くなっていた猫を両手でむんずとつかみ抱えると、あくびをしながら次元渦巻の中に消えた。つくも(猫)、任せたぞ!
私は、さっき上空から見た島の全容を紙にかき、それと同じものを黒板にも書き込んだ。お昼を食べてからの作戦会議に備えてだ。
リビングに調査団が全員集まった。サクラさんも、仮眠ができたので疲れも取れたようだ。つくも(猫)よお疲れ様。お昼はつくも(猫)とマーレが作った弁当だ。マーレは、つくも(猫)の正式な弟子になった。
「作戦会議を始めます」
調査活動に関しては私がリーダーだ。自分で言うのも何だが適任である。
「上空から見た島の全体図だ。島の形は丸形。そして、上空から確認できただけでも数百の池があった。まるで水の島だな」
「カナデ、危険な魔物はいるのか」
イディアはイグニス化している。喋り方まで似てきた。
「おれの探知は地上では魔物を確認できなかった。ただ、水の中には居そうなんだよ。魔物が!」
「水中の魔物はやっかいですね」
ソフィアが考え込む。学院の魔物生態学で学習したのだろう。
土の中ならそいつがいた形跡が残っている。足跡や糞や潜ったときの土だまりだ。だが、水中生物は、その形跡が残らない。何が潜んでいるのか予測できないのだ。
「カナデさん、どうしますか」
「さくらさん、申し訳ないがベニザクラ号での移動をお願いできるかな。歩行型だ。」
「わかったわ。それが安全ね」
ベニザクラ号の中にいる限り、よほどのやつがいない限り安全は保障されている。
「海岸線を東に向かって歩いてみましょう。そこから少し内陸に入って、この小さめの池を調査します。そして、異常がなければそこで野営です。危険な場所だったら、風の道でここまで戻りましょう」
全員がうなずいた。
「明日の午前中は、島の真ん中にあるこの大きな湖の調査をします。そして、午後は次の島『プティ島』へ行きましょう」
「了解!」
さて、アステル湖の星形と島にはきっと関連があるはずだ。5つの島が均等に並んでいるなんて、自然にできるわけがない。
パラス島を上空から見たとき、神装力で強化した視力で全島を観察した。直線で結べば五芒星になっていたのだ。
次話投稿は明日の7時10分になります




