030 『紅桜』への指名依頼
ここは、エレウス王都にある冒険者ギルドである。サクラさんのE級冒険者の登録を済ませたあと、なぜかギルドマスター室に呼び出されている。
「すまないね。Gスターの冒険者が来たら所長室に呼ぶように受付にお願いしていたんだ。私はベルタースだよ。よろしくね」
物腰が柔らかそうな、赤い髪のエルフだった。
「それから、うちの冒険者達が神獣様にずいぶん失礼なことをしようとしたみたいだね。ああなって当然だよ。それに、手加減もしてくれて感謝する。あれでも大事な王都の冒険者なんだよ」
「あのー、壁の修理代はまた請求してください」
すまなそうにそう申し出ると、
「いらないよ。こっちが悪いからね。それに、しばらくあのままにしておくよ。神獣様に手を出したらどうなるか、分からせるためにね」
なるほど、効果はあるだろうな。
「この猫が神獣様であることは、内緒でお願いしますね」
「だいじょうぶ、それも承知しているよ」
ラウネンから何らかの通知が来ているんだろうな。
「それでだ、今日呼んだのは、指名依頼を受けてほしいからだよ」
ですよねー。
「報酬を先に伝えておくよ。3つある」
にやりと笑った。何を言い出す。
「1つ目だ、王都上空の飛行許可をだそう」
うわ、全部ばれているみたいだぞ!
「2つ目だ、アステル湖にある全島への上陸許可と採掘許可だ」
ん、どういうことだ。
「3つ目だ、この依頼を受けてくれたらサクラさんをC級に昇級させよう」
まじですか。おれよりも早い昇級になるぞ。
「もちろん、依頼料も割り増しで支払うよ。どうだい」
いや、依頼内容を言ってください。
「すみません。早く依頼内容を教えてください」
サクラさんの直球が放たれた。
「おっと、しつれい。肝心なことを伝えてなかったね」
うっかり神様みたいだな。
「アステル湖全島の調査だよ」
ちょっと真剣な顔になった。
「島の真ん中にある火山島には、船では近づけないんだよ。それに、何か不思議な結界みたいなものも確認されている。特別な結界が張れるベニザクラ号じゃなきゃ調査は難しいんだ」
なるほど。そういうことでしたか。
みんなで顔を見合わせた。サクラさんを見る。リーダーはサクラさんだろう。
「引き受けましょう。断る理由もないわ。報酬も魅力的よ」
決まりだ。
「ベルタースさん、2つ要望があるのですがいいですか」
うなずくエルフ。
「不思議な結界ということは、もしかすると世界樹の精霊がらみかも知れません。そこで知ったことで、神獣様が秘匿するべきだと判断したことは報告しないでいいですか」
「もちろんだよ。神獣様の考えには従うよ」
「2つ目です。そこで発見したものも同じ扱いでいいですか」
「なるほど、そこは君たちを信頼するしかないね」
「ありがとうございます。信頼には応えますよ」
ベルタースさんがにっこりと笑った。
調査機関は特に決まっていない。つまり、数年がかりの調査でもいいということだ。また、そこで取得したものは売却できる。大樹の森のシステムと同じだ。
かなりの好条件になる。風の森にも同行をお願いすることになるだろう。喜ぶイグニスの顔が浮かんだ。
その日のうちに、サクラさんはC級に昇格することになった。歴代最速だろうな。
その後、冒険者ギルドには『猫を連れた学生風の集団には絶対ちょっかいを出すな!』という暗黙のルールが設けられていた。
隠れ家でくつろいでいると、突然招集がかかった。
「私達のパーティー名を決めます」
サクラさんが黒板の前で腕組みをして待っていた。
「パーティー人数に上限はありません。今は、『風の森』パーティーをぬかすと人数は7人です」
ジェイドも入っているんだね。すでにE級だけど。でも、エルもC級もっていたんだ。まあ、その方が錬金術士として都合がいいからだろうな。
ソフィアとイディアはこれから登録してもらうことになる。剣士としての腕は一流なので、問題ないだろう。
「ベニザクラ号でいいじゃないの」
シンティが面倒くさそうに提案する。
うん、おれも賛成。
「安直すぎます」
拒否権を発動された。
さんざん議論をして、結局決まったチーム名が
『紅桜』パーティーだった。ああ、疲れた。
明日は、ソフィア達の登録に行ってくるか。ついでにパーティー名の申請もしておこう。
第一回の島の調査は、8日後に決まった。学院は下旬の予備日になる。明日は買い出しだ。
次話投稿は明日の7時10分になります
大樹の森編『偉業の報酬』12時10分投稿




