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025 魔法陣学




 授業が本格的に始まった。


 専攻科の授業は、最大5つまで選択できる。でも、私は3つでやめておいた。ジェイドは、私が選んだ授業は全て同じにしてくれた。他にもう一つ、何かを選ぶようだ。


 一般教養的な内容と芸術関係の授業は、クラス毎に受けることになっている。私の場合は、そのクラスが学級崩壊(ほうかい)しているのでない。シオン教授も出なくていいと言っている。結構自由だ。




「今年は10人も受講者がいるんだね。大漁だよ」


 シオン教授がご機嫌だ。


 メンバーは、ジェイド、ボン、クリシス、そして、ソフィアとイディアもいる。クリシスに誘われたようだ。その他に、平民の生徒が4人いる。


 魔術学や魔法学のように人気のある教室は学年事になる。人気のない教室は他学年が一緒に学ぶ事になるのだ。


「では、自己紹介とやりたいことがあったら一緒に言ってね。どんなことでもいいよ。魔法陣学には多様な思考が必要だからね」


 うん、この教授、本質を理解している。


「ではおれからかな。4学年のスカチノだ。昨年は、今5学年の1人を入れて3人だったから、今年は本当に大漁だよ。嬉しいね、歓迎するよ。やりたいことは、新しい魔法陣を作ることだよ。難しいけどね。以上だ」


 うん、短期間で成果を出したいなら、コンピュータが開発されないと無理だよ。後は、つくも(猫)並みの超計算だね。


「次は私ね、2学年のマイティーノよ、大漁のネタはしつこいからしないわよ。でも、大勢になったことは嬉しいの。歓迎するわ。やりたいことは、魔法陣の簡略化よ。錬金術にも興味があるの。組み合わせて見たいの。以上よ」


 おもしろい事に挑戦しているぞ。いいね。


「1学年は私からですね。ファーノです。誰もいないって聞いていたので、たくさんいてホッとしています。やりたいことは、魔法陣の分類です。図書館の司書にも興味があります。終わりです」


「1学年のジオーネです。すごい人たちがいてテンパっています。すみません、考えがまとまらないです」


 そう言って、私達を見て顔を真っ赤にした。


 他のメンバーも、ん、となり、まじまじと私達を見た。


「な、騎士(ナイト)じゃないですか」


「王太子殿下……」


「生徒会副会長……」


「公女殿下……」


「ジェイド様……」


 大騒ぎになり、自己紹介所ではなくなった。先入観(せんにゅかん)とはおもしろい。いるはずがないと思っていると有名人でも気付かないんだな。


「学院では身分は関係ないはずだぞ。同じ学生だ。慣れろ!」


 殿下の一声で、みんなが「了解しましたー」と声を揃えて言ってから、顔を見合わせ大笑いになった。


 ボンはいいやつだ。楽しい教室になりそうだ。




 自己紹介という雰囲気でもなくなったので、授業が始まった。


「魔法陣学は多様性だよ。初等部で身につけた術式は入り口でしかないんだ。覚えてしまえば必要ないとみんなが勘違いしているけど、実は、無限の可能性を秘めているんだよ」


 その通りだ。組み合わせ次第(しだい)では、日本の家電のような機能を持った魔道具だって作れるかも知れない。ただ、それをイメージできないだけだ。


「シオン教授。明日からのホームルームは教授の研究室でいいですか」


「ああ、歓迎するよ。ただし、紅茶は持ち込みで頼むよ。予算が少ないんだよ」


「分かりました。ジェイド、おれはシオン教授の研究室か生徒会室にいることなりそうだ。用があるときはそこを探してくれ」


「うん、ぼくもときどき行ってもいいですか」


 ジェイドがシオン教授を見た。


「もちろん、歓迎します」


「おれも行くぞ」


「私達もいいですか」


「ええ、歓迎しますよ」


 研究室が狭くなりそうだな。




 今日のお昼はジェイドと一緒に食べられそうだ。


 学院には食堂が3つある。一つ目は貴族専用の食堂だ。それなりの値段なので、上級貴族や貴族枠の教授が使っているようだ。絶対に近づきたくない場所である。


 二つ目は、初等部専用の食堂だ。小学校の給食みたいなイメージだろう。そこにはお猿さんがたくさん紛れ込んでいるようなのでトラブル防止になる。


 三つ目は、誰でも自由にいつでも使える大食堂だ。学生寮を使っている学生はここで夕食や朝食も食べられる。なので、この食堂は学生寮と廊下でつながっている。だいたい1度に300人位は収容できる作りになっている。


 あとは、学院の外にもいろいろな食事場所がある。高等部生は時間が自由なので、そちらを利用する学生も多い。




 食堂には、学友に囲まれて楽しそうに話し込んでいるサクラさん達がいた。


「サクラさんは食もう食べ終わったんですか」


 近くで丸まっている猫を見ながらそう話しかける。


「カナデさんはこれからですか」


 紅茶を飲みながら、片手で食べ終わった食器を持ち上げた。


「おい、騎士(ナイト)だぞ」


「本当にのっぺりした顔をしているぞ」


「細いぞ、あれで本当に強いのか」


 周りからヒソヒソと声がする。ほっとけ!


「クラスは楽しそうですね」


 苦笑いをしている学友様達を見ながらそう言うと、


「ええ、すごく楽しいの。お友だちもたくさんできたのよ」


 周りにいる学友さんたちは、どうやら平民らしい。見栄っ張りの貴族達は、貴族専用食堂に行ってしまうからな。


「午後はどんな授業なんですか」


「シンティと一緒に、素材加工学よ。私にできるかちょっと心配なのよね」


「どうなの?」


 シンティを見た。


「魔法陣も使えるから問題ないわよ」


 なるほど、サクラさんが使いやすい魔法陣も作ってみるか。


 サクラさん達は、そのまま、食器を片付けてから出ていった。猫がテクテク後を付いていく。それを、不思議そうに見ている学生達。すまん、慣れてくれ!

 



 学食といったらやっぱり日替わりランチでしょう。


 ジェイドとAランチご飯大盛りを注文する。11歳の体には、栄養が必要だ。


 開いている席を探していると、


「おーい、カナデこっちだ」


 と言う声が聞こえた。ボン達がいた。


「おまえ、王族だろ。いいのかここで」


「ああ、あっちの食堂は雰囲気悪いんだよ。食べた気がしない。ぼくたちはずっとこっちにするよ」


 すごく嫌そうに顔をしかめている。


「おまえ達だって、上級貴族なんじゃないのか」


「ジェイドはそうなるかな。おれは騎士(ナイト)の役目がないときは平民だよ。ただの冒険者さ」


「なんというか、複雑だな。教授達も扱いに困るかもな」


 分かっている。だから貴族枠の教授がいる『魔法学』『鍛冶術学』『素材加工学』『魔道技術学』は遠慮させてもらった。


 この後、私は授業が無い。ジェイドは専攻3の授業があるので、クラスに戻った。専攻3は午後3時から4時までの授業のことだ。人によっては講義とも言う。


 さて、生徒会室に行ってみるか。




次話投稿は明日の7時10分になります

大樹の森編『偉業の報酬』12時10分投稿

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