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024 サクラシア杯要項




 ここは高等部棟の講堂だ。そこに、全高等部生が集められている。といっても、1学年から4学年までだが。5・6学年はもう授業には出ない。希望する研究室で自らの課題に取り組んでいる。


 人数は、1200名ぐらいだ。男女比は4対6位で男子が多い。


 今から、『サクラシア(はい)』の説明が始まる。関係ない学生にとってはいい迷惑だろうが、何しろエレウス王からの呼び出しである。従わないわけにはいかない。


 壇上には、今大会の主催者(しゅさいしゃ)であるエレウス王国の関係者が並んでいる。その中に、見覚えのある金髪の女性がいた。ビオラ様の姉であるアルティーヌさんだ。


 さすがにエレウス王自身は来ていない。


 他には、学院長と生徒会長、そして、金髪縦ロールの女生徒がいる。あいつだ、おれを『のっぺりした顔』と言ったラウネンの親戚だ。


 日本人だ。仕方ないだろう。ほっとけ!


 名前はリアスターナ・ペリティア、高等部2学年だ。新大陸3大貴族である『ペリティア公爵家』の公女だ。権力的には州国の王太子よりも上になるだろう。そういう意味では適任だ。


 サクラさんは、私の隣であくびをしている。壇上にいなくていいのだろうか。




「それでは、これから第一回サクラシア杯大会要項の説明会を開催します」


 司会はソフィアさん。でも、第一回って何ですか。第二回もあるんですか。やめてください。


「大会主催者である、エレウス王国の代表から挨拶があります。アルティーヌ様お願いします」


近衛(このえ)騎士団団長のアルティーヌだ。今から私が話すことは、エーデルシュタン国王陛下の意志だ。心して聞くように」


 会場がシーンとなった。緊張感が漂う。


「今から2000年前、大樹暦(たいじゅれき)を宣言した『カロス・エニュオン』は、幾多(いくた)の困難を乗り越えて、大樹の森10層に到達した。そこで、長い眠りについていた世界樹の目覚めを()()げた。これは言い伝えではなく事実だ。」


 アルティーヌさんが会場を見た。


「目覚めた世界樹が『あたなはだれですか』と尋ねた。カロスは『私は冒険者です』と答えたのだ。以来、冒険者とは、挑戦者の代名詞になった。そして、この国、エレウスはその冒険者達が作った国である」


 王太子達が座っている座席を見た。


「挑戦者よ、相手はその冒険者だぞ。敬意(けいい)を払え。そして、正々堂々(せいせいどうどう)と戦え。これが、エレウス国王の言葉だ」


 貴族枠の教授達を見た。


「この神聖なる冒険者への挑戦を、つまらない見栄や権力争いで邪魔したものには重い罰が(くだ)るぞ。いいな、警告したぞ」


 貴族枠の教授達が震え上がった。


「以上だ!」


 アルティーヌさんが静かに元いた場所に戻った。


「次に、今大会の実行委員長を務めることになったリアスターナ・ペリティア様、ご挨拶と大会要項の説明をお願いします」


 歩く度に、金色の縦ロールが優雅(ゆうが)に揺れている。くやしいが、(さま)になっている。


「実行委員長のリアスターナ・ペリティアですわ。今大会の全ての権限を、学院長と国王陛下から委託(いたく)されておりますの。この意味がおわかりになるかしら」


 シーンとなる会場。


「例え、王太子殿下であろうとも、この大会のことに限っては、私に逆らうことはできませんのよ。なぜなら、私の言葉は国王陛下のお言葉だからです。お忘れにならないようにお願い致しますわ」


 3バカ王子が顔をゆがめた。本当にアホなのかも知れない。


「では、簡単にご説明しますわ。詳しいことは、高等部の掲示板にこの要項が貼られていますので、それを見てくださいませ」


 シンティが黒板に貼られている大会要項を指さした。


「ルールはシンプルですわ。3人の殿下が希望している『武術』『芸術』『魔法』この3つについて試合をしますわ。殿下達は予選を免除(めんじょ)して差し上げますわ」


 3バカ王子達を見てにっこりと笑った。


「他の生徒は、10人集まった時点で試合をしますわ。勝ち抜き戦ですの。その勝者が私が用意した相手と勝負しますのよ。意義は認めません事よ」


 ギロッと会場を見た。シーンとしている。


「勝利できたら、カナデ様との対戦を考えてあげますわよ」


 考えるんですね。確約ではないんですね。でも、私にとってはありがたいです。


「殿下達は、対戦する準備が整ったら生徒会室に来てくださいませ。そこで試合方法を打ち合わせいたします。場所は実行委員会が指定いたしますが、ルールや試合方法は全て殿下達が決めてよろしくてよ。絶対にカナデ様が負けることはございませんから、遠慮なく自分に有利なルールを決めてくださいな」


 おい、勝手に決めるな!


「以上ですわ!」


 なんだろう、この信頼感は……。


「学院長の言葉」


「試合会場は、大勢が入れる場所を準備するぞ、楽しみにしておれ。終わりじゃ」


「以上で、第一回サクラシア杯大会要項説明会を閉じます。解散してください」


 やっと、会場がざわざわとし出した。


「おいどうする」


「挑戦してみるか」


 などの声もちらほら聞こえてきた。


 ああ疲れた。ぐったりとしていると、ディスポロ商業公国の王太子が声をかけてきた。


「僕も挑戦したかったんだけどね、婚約者からストップがかかっちゃたんだよ。つまらないね」


「殿下行きますよ」


「わかったよ。ちょとぐらい話をしたっていいだろう」


 側近だろう、()かされながら帰って行った。一体何を伝えたかったのだろう。でもあいつも攻略対象だ。どこかで話をしなければいけない。ああ面倒だ。


 取りあえず、この騒ぎはこれで一段落(ひとだんらく)だ。つくも(猫)のおかげで、最近は生徒会長も胃が痛くなっていない。あの、ゴリラの親戚のことは正直むかつく部分もあるが、やっていることは全て理路整然(りろせいぜん)としている。


 ジェイドもそのクラスは居心地(いごこち)がいいようだ。生き生きとしている。それはありがたい。ジェイドのことは任せよう。


 私達は、いつの間にか生徒会の仕事を手伝うことになっていた。まあ、サクラさんが御迷惑をかけたし、ソフィアもいるのでできることはしよう。


 どうせ、あの教室に行っても誰もいない。そこが私達の居場所になりそうだ。





次話投稿は明日の7時10分になります

大樹の森編で『偉業の報酬』の投稿を10日間します

時間は12時10分です

活動報告があります。よろしかったらご覧ください。


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