015 ソフィア
『大樹の森編』の続編になります
隠れ家に戻ると、ソフィアとイディアだけが、庭に座り込んでいた。
「どうしても、イメージするということが分からないわ」
ソフィアがそういってうつむく。
「安心してください。私も全く理解できません」
脳筋剣士が胸を張る。
ソフィアが私に気がつく。
「学院の方はどうなりましたか」
「ソフィアの言う通りだったよ。ナイトの仕事はない、私も学生として過ごす事になった。先輩、ご指導よろしく」
ソフィアが嬉しそうに笑った。
「生徒会長に会いましたか」
「サクラさんに跪いていたよ」
ソフィアがさっきよりも大きな声で笑った。
「イメージできないのかい」
「はい、魔法はもともと得意ではないんです」
「剣士に魔法など必要ない!」
ちょっと考えてから、こう提案してみた。
「剣技って、流派毎に『型』があるんですよね」
「はい、あります」
「それはどうやって覚えるんですか」
「見て覚えますね」
「見たら、自分の頭の中でそれを再現しませんか」
「はい、します。そして、繰り返し練習して自分の技に進化させます」
「同じなんですよ。頭の中で再現するんです。それがイメージです」
ソフィアの顔が、ぱあっと明るくなった。
「できそうな気が、いや、できます」
ソフィアが集中する。
「神装結界発動」
薄い膜が、ソフィアの体を包み込んだ。部分的ではない、全方位の結界だ。おれでもイメージするのに時間がかかったやつだ。
「できているんでしょうか」
ソフィアが不安そうにそう聞いてきた。
私は、そばに落ちている木の枝を拾い上げると、それを片手で持って掲げる。
「手刀、手を刀の刃だとイメージして、この枝を切ってみてください」
「はい、イメージ手刀」
ソフィアが軽く枝に手刀で切りつけると、枝がシュパッと鋭い刃物で切られたように二つに分かれた。
「できましたね。それが神装結界の刃です。大抵のものはシュパッと切れちゃいますので気をつけてくださいね」
そう言って、にやりと笑った。
「ふふふ、嫌いな相手の前では絶対に使いません」
ソフィアもにっこりと笑った。バックにバラの花が咲きそうな美しい笑顔だった。
「おお、わたしもできたぞ!」
脳筋剣士も隣で部分的な神装結界を発動させて雄叫びを上げていた。
こいつはまだできなくてもよかったんだが、まあ仕方ないか。使い方を間違えるなよ。
一抹の不安を感じながらも、ソフィアの笑顔とジェイドの笑顔が似ているなと、ぼんやりと考えていた。
『精霊の愛し子』とは、どんな存在なのだろう。
つくも(猫)は、『私を助けてくれる存在になる』と言っていた。
ソフィアは、『これも精霊のお導きなんです』と言っていた。
ジェイドには、陽気な精霊達が協力者としていつもそばにいる。。
日本での精霊は、万物の根源をなす不思議な気であり自然や人工物などに宿る超自然的な存在だと定義する識者もいる。
つまり、『八百万の神』の事なのだろうか。なら、つくも(猫)も精霊なのか?
分からないな。ここは異世界だ。日本とは違う。
でも、精霊が確かに存在しているということは事実である。そして、精霊達は陽気で楽しいことが大好きで、どこにでもいるのだ。
これからもよろしくな。
ソフィアは、仲間になった。そして、まだ数日しかいっしょに過ごしていないが、素直ないい子だ。カロスト王国の王太子が面倒なやつだったらソフィアの立場も心配になる。
話を聞いている限り、王太子も話しの分かるやつだと思うが、こればっかりは会ってみないと分からないな。
ただ、もし、ソフィアに対して何か理不尽な扱いをしたときは覚悟しろ。おれたちが相手だぞ。ちょっと怖いぞ!
この世界にも灯りがある。魔道ランプだ。火属性の魔石を使った灯りなので、手をかざすと暖かい。冬は簡単な暖房にもなる。
日本の電灯のように明るくするには、C級以上の魔石が必要になる。それを、特殊なレンズで何倍にも増幅して光源としている。なのでかなり明るくなる。
王都には、自分の屋敷を光で包むことを権力の証だと考える貴族が多い。なので貴族街はかなり明るい。
それ以外の地域は、ほんのりとした灯りが所々に浮かぶ程度だ。日常で使うには、E級、D級の魔石で十分なのだ。ほんのりとした暖かい光なので心も落ち着く。
この隠れ家は、森の中にある。周りには光源となるものはない。屋敷も必要以上に明るくしない。
空には大きな衛星が黄色く輝いている。多言語翻訳君は『月』と翻訳している。私が確認できる衛星はこの一つだ。
月の周りには、煌めく星が無数に輝いている。でも、知っている星の並びはない。
「やっぱり、ここは異世界なんだな」
静かにつぶやく。
明日からは忙しくなるぞ。まずは、カロスト王国の王太子殿下の攻略だ。
次話投稿は明日の7時10分になります




