表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/131

125 神都の封印




「団体さんだね。歓迎するよ」


 魔法陣の後ろに玉座のような椅子があった。そこに座っている1人の青年がそう声を発した。


 周りには誰もいない。彼1人のようだ。


「おまえ1人なのか」


「結界があるからね。名を持つ血の持ち主じゃなければ通れないのさ」


 おれ達は神装結界を(まと)っているからな。血は関係ない。

 

「おまえが教皇か」


「そうだよ。表には出ないけどね」


「何故出ない」


「面倒だからだよ。教皇様だからと自由を認められない生活なんてつまらないだろう」


 うん、そこは同感だ。


「この魔法陣は何だ」


「ふん、知っているくせに。まあいい。転移魔法陣だよ」


 やはりあったか。グライヒグの読みが当たったな。


淑女(しゅくじょ)達を紹介してくれないのかな」


「必要か!」


「嫌なやつだね。全てお見通しか」


 そう言って、その男は静かに立ち上がった。


 細くて白い。そう、肌が真っ白だ。


「提案がある。『クエバリーナシルフィーローゼ・モリターナル』をこちらに引き渡してほしい。そうすれば、ナダルクシア神国は、姫と同盟を結ぶ準備ができている」


何故(なぜ)、クエバに(こだわ)る」


「古くて新しい血が必要なのさ。ぼくを見てごらん。染色体(せんしょくたい)異常だよ」


常染色体(じょうせんしょくたい)劣性遺伝性( れっせいいでんせい)疾患(しっかん)か」


「……」


「きみ、何者だい?」


「カナデさんは、秩序(ちつじょ)の探求者よ」


 サクラさんがどや顔で腕を組む。


「クエバが目的なら何故サクラシア様に拘った」


「入り口の町が堅固(けんこ)だからだよ。森を燃やすかセルビギティウムの力を()るしか方法がないだろう」


 なるほど、理解したよ。理屈(りくつ)は通る。手段は間違っているがね。


「状況は理解した。だが、全て断る!」


「ええ、拒否権(きょひけん)を発動します」


 サクラさんも怖い顔で(にら)み付けている。


 クエバは平常心だ。


「ならば、力ずくで……と言いたいが、あの赤いのが目覚めたおかげで全ての計画が台無(だいな)しだよ」


 そう言って、格納庫のような物がずらりと並んでいる場所を見た。そこには一体もロボットはいない。


「鉄砲付きの有線ロボットは全て破壊した。兵士達も拘束した。行方不明者は保護してある。さあ、どうする」


「お手上げだよ。降参だ」


 細くて真っ白い腕を力なく上に上げた。


「ぼくはどうなるのかな」


 ゆっくりと歩きながら、転移魔法陣の中に入っていった。何をするつもりだ。


「拘束する。そして、(さば)きを受けてもらう」


「秩序の探求者の裁きかな」


「違う、新大陸の為政者(いせいしゃ)達が話し合って決めることになるだろう」


「ははは、ならばごめんだね。高度な文明ではない価値観では、野蛮(やばん)な処刑しか選択肢(せんたくし)はないからね」


 ポケットのような所から何かを取り出した。何だ?


「レームスが突然現れたと言われている転移魔法陣。これは、一方通行だと思うかい」


「やめろ、その魔法陣は危険だ。記憶を食われるぞ」


「こんな記憶はいらないよ。1000年の罪を私1人で(にな)えというのかい」


 そう言って寂しそうに笑った。


「運がよければ、10層で待っているよ」


 ポトリと手に持っていた物を落とした。


 紅色の光が浮かび上がった。魔法陣が輝く。


 光がおさまると、そこには白銀に輝く丸い玉が残されていた。


「記憶情報の固まりだ。おまえも、高次元空間ではこの姿だった」


 猫が玉を見つめて、そう言った。


 そうか、レームスさんの記憶も、このような形で10層に残されたと言うことか。




 ナダルクシア神国の教皇は消えてしまった。あの転移魔法陣が10層に繋がっていれば、記憶を無くした彼とまた会うこともあるだろう。


 そう言えば、名前も聞いていなかったな。


「サクラさん、終わりましたね」


「はい」


「さて、後始末をしないとな」


 やることはいっぱいあるぞ。この進みすぎてしまった技術は全て封印しなければならない。残念だが、あの赤いロボットもそうだ。


「シンティとエルが残念がるだろうな」


 思わず独り言を言ってしまった。


「どうしてですか?」


「ソフィアか、いや、あの赤いロボットを封印したらの話しだよ」


 ああ、そうですねと言う表情で私の後を付いてくる。ソフィアには本当に助けてもらってばかりだ。感謝しないとな。




 大聖堂前の広場には、拘束された白い服の兵士達が放心状態で座り込んでいた。


 こいつらもあいつには任せられないな。未知の技術を知り過ぎている。


 あいつとはストラミア帝国の狐皇帝だ。


「皇太子をここに呼んでくれ」


 カロスト王国の兵士に伝令をお願いをした。




 護衛を数名伴って、皇太子がやって来た。


「教皇はどうなりましたか」


 えーと、名前は確か『ライオムータ』だったよな。


「ライオムータ皇太子殿下」


「ライタと呼んでほしいのだが……」


「……」


「ライタ皇太子殿下」


「ライタです」


「ライタ」


「はい、なんでしょうか」


 く、どうしてこうなる。ならば、遠慮はしないぞ。


「教皇は自害した。ナダルクシア神国はもう直ぐ消滅(しょうめつ)する」


「……」


「この区域は神獣様が封印をする。ストラミア帝国の兵士はこのまま帰国せよ」


「父には何と報告すればよいのでしょうか」


「そのままだ、全て神獣様の判断で処理されたと伝えろ」


「分かりました」


 あの火柱を見たからな。文句を言う指揮官もいないだろう。チャルダンはやはりよい策士だ。


 皇太子殿下が自軍の場所に戻っていった。




「イディアを呼んでくれ」


 全力で走ってきた。ピタッと止まり、敬礼(けいれい)をした。


「何かご用でしょうか」


 ほう、ちゃんと立場をわきまえた言動ができるのか。


「イディア、大将としての指揮は見事だったと聞いている。さすがだな」


「は、過分(かぶん)なる評価です」


「ここにいる兵士どもをすべて、行方不明者が監禁されていた場所に連れて行け。一歩も外には出すな」


「了解しました」


 見張りは、赤いロボットに任せるか。カロスト王国の兵士には休養が必要だな。




 行方不明者は、1000人ほど保護できた。名簿の数から見ると少ないかもしれないが、これだけの数を保護できたことに感謝しよう。


 ここで見た新技術については、つくも(猫)に頼んで、口外(こうがい)できないようにしてもらおう。そうすれば、普通に暮らせるはずだ。


 神官と兵士その家族は、入り口の町に連れて行くしかない。家族もどっぷりとこの国の思想に染まっている。他国での生活はまだ無理だろう。時間が必要だ。


 大樹の森の待避場所に簡易的な村でも作ってもらうとしよう。カルミア様と相談だな。


「チャルダン、後の指揮は任せた」


「わかりました。行くのですね」


「ああ、つくも(猫)と行ってくる」


 レームスさんが発明した技術が封印されている場所に行く。全てつくも(猫)の異次元収納で保管することになる。時代が追いついてきたら、少しずつ公開していくことになるだろう。




 その建物は、5角柱の姿で森の中にひっそりと建っていた。大きさは、東京ドームぐらいはありそうだ。かなり大きい。


 1000年間で、周りには樹木が茂り壁には(つた)が張り付いていた。よく見なければ森と間違えてしまうだろう。


 入り口には1号が案内をしてくれた。ここまでしてもらうと愛着(あいちゃく)()いてくる。いかんいかん、封印だ。


「エンシュウリツ ヲ ヒャク ケタ ニュウリョク シテ クダサイ」


「分かった」


 全て打ち終わると、カタッと穴の開いたカギの部分が出てきた。


 ん、どうすればいいの?


「タンキュウシャ ノ チ ガ ヒツヨウ デス」


 おお、そういうことか。


 例の棘で血を一滴垂らした。すると、壁に線が走り、やがて入り口が現れた。


約800年間、誰も入った者がいない建物の中に足を踏み入れた。


 ズンと言う衝撃が来た。


 杜人の里にある結界と同じか。


 長い廊下が続いているようだ。先は真っ暗だ。


 魔法陣展開でライトでもつけるか。そう思っていたら、パパパパと次々に灯りが奥に繋がって行った。それと同時に床が動き出した。


 ははは、まるでSFだな。


 動く床が止まった。すると、高い天井にあるライトが輝きだした。そこは、東京ドームのグランドのような場所だった。


 飛行船があった。大きさはあれよりも一回り小さいか。


 ミサイルの形をした細長い物も横になっていた。


 魔動車だろう。自家用車、トラック、バスタイプの物が並んでいた。トラックは50台ぐらいはありそうだ。


 プロペラが着いた飛行機もある。


 遊覧船のような船まである。


 ガラス戸が着いた棚には、通信機、拡声器、カメラやビデオカメラのような物まで並んでいた。


 あれはたぶん計算機だ。コンピュータと言っていいだろう。なるほど、円周率が100桁まで計算できるわけだ。


 他にも、日常で使えそうなドライヤーやオーブンなど日本で暮らしていた時に使っていた物がたくさんあった。


 これらは全て、世界樹の裁きが起こるまでの200年間で作った物なのだろう。技術の探求者として1000年かけて人類を導いていく技術を数百年で完成させてしまった。


 2代目の目の色が変わるはずだ。とんでもない発明ばかりだ。


 つくも(猫)、お願いできるかな。


「ああ、まかせろ。ただし、トラックだけはこれから必要になる。魔動車があるのだ。これぐらいなら公開してもいいだろう」


「そうか、彼らの移動に必要なんだね」


 頷く代わりに、尻尾を左右に2、3回振った。


 つくも(猫)が一声「にゃ」と鳴いた。


 トラックを残して、全ての発明品がその場から消えていた。




 行方不明者は、50台のトラックで一番近い城まで送っていった。運転は、カロスト王国の兵士ができる。


 2往復で全ての人が移動できた。もちろん、秘密を話せなくなる契約もしてもらっている。


 白い服の兵士と神官達は、取りあえず『キリヤ島』に全員を風の道で放り込んだ。家族も丁重に送った。エレウス王には、当面近づかないように通知を出してもらった。


 無人になった神都は、これからつくも(猫)が第三権限の結界で封印する。認識阻害にんしきそがいも発動させるので、周りからは消えたように見えるだろう。


「よし、終わった」


 猫がどや顔で激しく尻尾を振っていた。


「ねこちゃん、お手柄(てがら)です」


 サクラさんに抱きしめられて、喉をゴロゴロさせている。


「では、隠れ家に帰りましょう」


 ベニザクラ号が静かに浮かび上がった。


「出発します」


 景色が後に吹っ飛んでいった。





次話投稿は明日の7時10分になります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ