114 サクラの精霊神獣
窓の外には赤い溶岩が見える。地球の科学技術ではこの状況は考えられないだろう。魔法とはでたらめな力だ。
未来に作られる宇宙船なら耐えられるのだろうか? そんなことをぼんやりと考えていた。
「見つけました」
ソフィアが静かに前方を指さした。御者台は装甲で覆われているが、前を見る窓は開いている。
「うーん、どこにいるのかおれには分からないな」
みんな溶岩に見える。仲間達も同じようだ。
「かなり周りの溶岩と混ざってしまっています」
6万年だからな。無理もない。
「ベニザクラの触手で分離できないかな」
「やってみますね」
ロボットアームみたいな感じかな。自分の意志で動けるからAIを積んだ高性能アームだな。
「紅、精霊の気配だけ集めてみて」
サクラさんが壁に手を置いて紅に意志を伝えた。
ソロリ ソロリ
慎重に紅の触手が動いていた。
「だいたい集まっています。でも、形が作れないみたいです」
ソフィアが困った顔をしていた。
「わたしもイメージするって言うのが苦手なのよね」
白猫もお手上げのようだ、万歳をしている。かわいい。
みんなが私を見ていた。
「わかりました。私がやります。でも、おれがやると子どもの絵みたいになりますよ」
想像画はみな聖衣になってしまう。
「神装力第三権限開放『神力再現』」
こうなったら、天才達の力を借りよう。昔見たアニメのイメージを再現する。
「イメージ『火の鳥』」
精霊の元になる何かが集まっていると思われる部分にイメージを送ってみた。
効果は直ぐに現れた。溶岩に見えていた部分が形になっていく。
ピーィッー ピキィーーーーーーー!
真っ赤に燃えた火の鳥が溶岩の中で羽ばたいた。でも、まだ飛べない。
「サクラ保護だ」
俺様猫が叫んだ。
「魔法陣展開『神装力風の道』」
溶岩の中に渦ができた。そして、力なく羽を閉じた火の鳥を優しく包んだ。
「よし、浮上しろ」
俺様猫がまた叫ぶ。
「浮上します」
ベニザクラ号がゆっくりと溶岩の中を上に向かって登っていく。
溶岩から車体が全て離れ、さらに火口を上に登っていく。紅の触手には、火の鳥が丸まっておさまっている。
火口を抜けて、そのまま火山の麓に着地した。
「全員、神装結界で体を纏え」
私の指示で全員が体に膜を作る。ここは火山の麓だ、有毒ガスの危険はまだある。
「ドアを開きます」
サクラさんが真っ先に飛び降りた。紅の触手と火の鳥が気になるようだ。
「紅に損傷無し。よかった」
ホッとしてから、火の鳥を見た。
「さみしかったよね」
火の鳥に優しく話しかけた。すると、うっすらと火の鳥の目が開いた。そして、サクラさんを見上げていた。
「だいぶ弱っているわね」
白猫が近づいてきた。
「私を探しに来てくれたんでしょう。ありがとう」
火の鳥が嬉しそうに首を持ち上げた。
「サクラちゃん、お願いできないかな」
ん、なにを? キョトンとしている天然少女。
「この子の相棒になってくれないかな」
「弱っているのね」
「ええ、このままではこの体を維持できないわ」
「わかった」
即決である。
「あなたもそれでいい」
火の鳥に問いかけた。目をつぶった。了承の意なのだろう。
「合意はなされた」
「『エスプリシフ・ゲネシス・ユグドラシル』が命じる。契約の精霊よ。姿を現せ」
白いふわふわしたのが出てきた。
「契約の精霊よ、第二権限の神獣に再構築契約の紋章を授けろ」
魔法陣が展開された。それがサクラさんと火の鳥を包み込んだ。
「ここに契約がなされた。第二権限に降格されていた神力は再び第三権限に再構築された。火の鳥は姫の精霊神獣に神格した」
「第三権限の精霊神獣よ、名を名乗れ!」
「はい、私は、サクラシア様の精霊守護獣『フェニクニシス・アルモティア』姫の精霊神獣です」
「サクラ、あなたのフルネームよ」
「はい、サクラシア・セルビギティウムです」
火の鳥が真っ赤に燃え上がった。炎がおさまると、そこには紅色だが白銀に輝く羽を広げた火の鳥の精霊神獣がいた。
「私はサクラ、そう呼んでね」
「はい、サクラ様」
「ただのサクラよ。私はあなたをなんて呼べばいいのかな」
「ニクスとお呼びください」
「わかった、ニクスよろしくね」
「はい、サクラ、よろしくお願いします」
「ニクス、あなたはサクラの神獣になったからもう問題ないわ。どうする、このままいっしょにいる。一度10層に来る」
「エスプリよ、私はサクラと共にいる」
「わかった。それと、この火山、あなたのダンジョンね」
「すまない、あいつらを振り切れなかった。なので、ここに閉じ込めるしか方法がなかったのだ。おまえを探しに行けなかった。許してくれ」
「気にしていないわ。それよりも感謝でいっぱいよ」
火の鳥が嬉しそうに羽ばたいた。火の粉は大丈夫か。
「私が離れるとこの火山は消滅する。この島も多分だが同じ運命になるだろう。問題はないか」
火の鳥が私を見上げていた。なんで?
私が不思議そうにしていると、
「おまえは『秩序の探求者』だろう」
つぶらな瞳が私を見上げていた。
え、そうなの?
つくも(猫)とエスプリさんを見た。
「これからおまえが決めることだ」
つくも(猫)が素っ気ない。
「まだ決定ではないわよ。候補よ。全てはあなたたちが10層に来てから決まる事になるわ」
そうだよな。全ては10層に行ってから決まることなんだろう。うん、覚悟はするよ。そして、今は考えない。
「保留します」
何でだろう。みんなが笑っている。
「ねえ、ニクス、その燃えている体、何とかならない」
サクラさんが直球を投げた。
「問題ない」
ふっと、炎が消えて真っ赤な鳥になった。大きさも雀ぐらいに縮んだ。
ニクスがピョンとサクラさんの肩に舞い上がって止まった。う、かわいい。そして、絵になる。
おっと、さっきの話しだ。
「ニクス、少し消滅を伸ばせないかな。周りの島を正常化しないとここにいる鳥たちの行き場所がないんだ」
「サクラが力を貸してくれれば問題なくできる」
ニクスが頭をサクラさんの頬にこすりつけている。
「いいわよ。どうすればいいの」
「サクラの結界を重ねがけしてくれ。それで維持できる」
「わかった。魔法陣展開『神装結界発動』」
ぶわっと、紅色の膜が島全体を覆っていた。天才のやることは派手だ。
「さて、ここでやるべきことは終わりね。あなたたちはどうしたいの」
白猫が猛禽類の神獣達を見た。
一斉に羽ばたき舞い上がった。
鷲がシンティの肩止まった。
梟がリーウスの肩に止まる。
隼がクエバの肩に舞い降りた。
鳶がエルの肩に止まる。
白猫がそれを見てため息をついた。
「はー、気持ちは分かったわ。でもね、精霊の愛し子じゃない人族とは10層の中でないと契約できないのよ」
がっくりとうなだれる神獣達。
訳が分からない仲間達。
「事情は後で私から話しておきます」
がっくりとしたまま地面に舞い降りた神獣達は、なごり惜しそうに振り返りながら白猫の元に歩いて行った。
「ということで、私との本契約も10層に来てからね」
白猫がジェイドにウィンクをしてそう言うと、神獣達を連れて次元渦巻の中に消えていった。
「カナデ。いろいろと聞きたいことがあるの」
シンティが怖い顔で迫ってきた。その後にはクエバ達もいる。
「わかった、隠れ家に帰ってからまとめて話すよ。おれも、いろいろと情報を整理しないと何をどう伝えたらいいか分からないんだ」
珍しくテンパっている私を気遣ってくれたのか、それ以上は何も言わなかった。
「では、帰りましょうか」
時間は、午後になっている。今日は、ラルタ島で休んで明日の朝早く帰ることになった。
さて、いろいろな情報が一気に入ってきたぞ。
夕食が済み、みんなはそれぞれ好きなことをして過ごしている。ベニザクラ号は完全宿泊型になっている。
私は、一人で星空を見上げながら考え事をしていた。
ニクスは探しに来たと言った。6万年前のことだ。
ワイバーンは、ニクスを追いかけてきた。つまり、ニクスがいた大陸では、ワイバーンはおれ達の敵になる。想像だが、竜の種族がいるのではないだろうか。
うわー、ドラゴンと戦う事になるのかな。かんべんしてよ。
高次元空間での神様の言葉を思い出す。
「龍にでもなるか」
神は冗談を言わない。つまり、この世界には龍がいると言うことだ。
「つくも(猫)、どうせ聞いても神語でしか話せないんだよね」
近くで丸まっている猫に話しかける。
尻尾がピコンと上がった。
「そうだ」という合図だ。
「はあー、レーデルさんと相談だな」
「カナデさん、ボクもいますよ」
「私もいます」
ジェイドとソフィアが握手をしている。何があった。
次話投稿は本日の12時10分になります
ソフィア視点のお話になります




