表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/132

113 ソフィアと相棒の戦闘




「ジェイド、もう1体が逃げた。追いかけられるか」


「問題ないわ」


 エスプリさんが返事をした。やる気満々である。


「追いかけます」


 觔斗雲(きんとうん)……じゃなかった白猫雲が逃げていく巨体を追いかける。


 偵察に出ていたホークが逃げていくワイバーンと交差した。


「もう1匹は森の奥にいます。一番大きなワイバーンです」


 鷹がソフィアの肩にそっと舞い降り報告をする。


「ソフィア、行ってみる」


「もちろんです」


 剣士の顔でニコッとした。凜々(りり)しい顔だ。


「神力風の道」


 頭上で片手をクルクルと回して渦を作った。それを、空に放り投げる。一瞬で森の奥に銀色の風の道が延びていった。


「行くよ」


「はい」


 2人でその渦に飛び込んだ。


 ジェイドと逃げていくワイバーンを追い越し、3秒ほどで森の奥に到着した。


「見えた、停止」


 ピタッと止まる。


「大きいな」


 羽を広げた全長は30メートルぐらいはありそうだ。この体で飛べるはずがない。浮かんでいるということは、属性魔法の部類だろう。やっかいだぞ。


「魔法を使うかもしれないな。用心しよう」


 こいつらはイレギュラーだ。ここにいてはいけない存在のはずなのだ。申し訳ないが駆除(くじょ)対象になる。


「もう1匹が帰ってきたらやっかいだ。速攻(そっこう)仕留(しと)める」


「ソフィア、ボクはまだ乗せて飛べないけど、足場にはなれるよ」


 鷹がそう提案した。


「痛くないの」


「結界があるから平気だよ」


 第二権限の結界だ。それなりに丈夫だろう。


「わかった。おねがい」


 ワイバーンの体内魔力が膨れ上がっている。体には(とげ)のような(うろこ)が無数逆立(さかだ)ち激しく震えている。


「あの鱗で攻撃してくるな」


「はい、全て切り落とします」


 鱗が一斉に放たれた。数百個はあるだろう。


「神装結界『盾』」


 第一陣はすべて盾に弾かれ落ちておく。


「行きます」


 第二陣の用意を始めた(すき)を狙い、ソフィアが渦から跳躍(ちょうやく)した。()を描いた着地場所には結界をお盆のように展開させたホークが待っている。


「ぴったりよ」


 ソフィアがその足場を()って、ワイバーンの背中に飛び移る。そして、走りながら震動している棘を次々と切り落としていった。


 異変を感じ取ったワイバーンは、異物を振り落とそうとお腹を見せた。


「がら空きだよ」


 人間ならボディブローか、きつい一発をお見舞いする。


「猫パンチちょい強め」


 お腹が背中にくっつくのではというほどめり込む。


 ショックからか、魔法が解除されたようだ。巨体が自由落下していく。後はお約束だ。


「ふん、80センチ位は期待していいだろう」


 魔石の直径だろう。


 俺様猫が舌なめずりをして待っている。


「神力猫の手」


 紅色に輝く巨大な肉球(にくきゅう)が、黒い巨体を()(つぶ)した。


 猫の手が消えると、そこには、直径80㎝ほどの魔石が残っていた。


 期待通りだったのだろう。喉をゴロゴロ鳴らして尻尾(しっぽ)を振っていた。


「こっちも片付いたわよー」


 白猫が雲に乗って降りてきた。後にはジェイドも乗っている。この(うず)便利だぞ。やり方を教えてもらおう。


「戻りましょう」


 ソフィアがにっこりと笑って肩にいる鷹の頭をなでていた。




「あの大きな魔物はなんだったんですか」


 成り行きをベニザクラ号の中で見守っていたエルが興奮している。 


「ワイバーンだ。龍型と言うところかな」


 龍という存在もきっとこの大陸の人たちは知らない。


「10層に来たときに全てお話しするから、今は許して」


 白猫が頭を下げていた。


 世界樹の精霊様のお願いなら仕方ない。そんな感じでエル達は口をつぐんだ。


 シンティがソフィアの肩にいる鷹を見ていた。


「ソフィア、その鷹どうしたの」


「私の相棒になりました」


 ん、? 不思議そうにしている。


「シンティ、その話も後で説明する。エル、作戦会議だ」


 鷹が乗ったままのソフィアの後を、ぞろぞろと付いていく猛禽類(もうきんるい)たち。それを不思議そうに見ているシンティたち。


「作戦会議です」


「隊長、状況説明をお願いします」 


「このダンジョンを作ったのは、火の鳥だ」


 へぇ? 間の抜けた声がする。


「詳しくは説明できないけど、私を探しにきたと思うの。きっと、ここで力尽(ちからつ)きて休眠しているはずよ」


 6万年だぞ。大丈夫か。


「この真っ赤な羽は火の鳥の物だ。ソフィアが居場所を見つけた。火山の中だった」


 ごくり、生唾(なまつば)を飲む音が響いた。


「カナデ、もしかして、行くの?」


 シンティが恐る恐る聞いてきた。


「つくも(猫)、神装結界は役に立つのかな」


 俺様猫を見た。珍しく考え込んでいた。


「結界自体は全く問題ない。だが、高熱は遮断(しゃだん)できないかもしれない」


 納得だ。人間では生存できない高熱空間になるだろう。


魔法瓶(まほうびん)っす」


 リーウスが思いついたように叫んだ。焼き肉の時のことを思い出したようだ。


「確かに、あれは熱を逃がさないけど、逆に熱を通さないこともできるわね」


 シンティが考え込んだ。


「空気がなければ熱は伝わらないはずだ」


 エルが更なるアイデアを提案した。


「神装結界の重ねがけでできそうです」


 ジェイドも思いついたことを言葉にする。


「おまえら、怖くないのか。火の中に飛び込むみたいなもんだぞ」


「神獣様が二人もいるんです。全く心配していません」


 エルが自信たっぷりにそう言った。


 いや、3(ばしら)になったんだけどな。鷹を見ながらそう思った。


「わかった。作戦はこうだ。クエバの融合(ゆうごう)魔法でエル、シンティの魔法陣展開『神装力』を使った魔法瓶の結界を作る」


 3人がうなずいた。天才3人だ、全く問題ないだろう。


「エスプリさん。用心のために、その外に神装力第三権限の結界を展開してください」


「わかったわ」


「つくも(猫)、超計算で冷却(れいきゃく)魔法陣作れるかな」


「問題ない。3分待て」


「サクラさん、『白銀』のままで戦闘型に変形できますか」 

「やってみる」


「なるほどね。こうやって、あの子達も見つけていたのね。手際(てぎわ)がいいわ」


 白猫がしきりに感心していた。


「一度再起動するわね」 


「世界樹の枝」


 右手に小枝が現れた。


 その枝を、頭上にあげ、何もない空間を叩く仕草(しぐさ)をする。


 ビーン


 空気が振動した。


「めざめよメーム」


 キーン 金属音の澄んだ音がする


太古(たいこ)のメーム」


 キーン 振動が魔法陣のように広がる。


「自我のメーム」


 キーン 振動が樹魔を包み込む。


「ふるえよメーム ひとつになれ」


「ホスタンツァ ライエン」


 制御木琴(せいぎょもっきん)(かな)でる。


「シャラララーン」


 木琴を左から右へ木の枝で打ち流したした。


「ベニザクラ『白銀』で戦闘型よ」


 ベニザクラ号がワンボックスカーぐらいの大きさに変形した。触手は8本だ。かなり太い。


「車内はちょっと狭いけど、何とかいけそうだな」


 地球の車なら車内はこんなもんだ。樹魔車両が快適すぎるのだ。


「よし、できた」


 つくも(猫)が新しい魔法陣を展開させていた。ピキピキと周りの空気が凍っている。おいおい、氷漬けにならないだろうな。


「このまま、ダンジョンの入り口に向かいます」


「風の道」


 紅色の風の道が入り口に向かって延びていった。


「発進します」


 景色が後に吹っ飛んだ。




「火山に向かいます」


 ベニザクラ号は静かに浮かび上がり、煙を出している火山に向かった。


「火山上空です。火口(かこう)が見えますね」 


「サクラさん、下に続く道はありそうですか」


「ないわね」


 やっぱりか。地球の火の鳥は噴火と共によみがえっていたよな。


「ソフィア、どこにいるかわかるか」


「あの中です」


 煙を出している火口の中を指さしていた。


 行くしかないか。


「予定通りだ。やるぞ」


「はい」


「魔法陣展開『神装力』、神装結界イメージ魔法瓶」


 エルとシンティがベニザクラ号の周りに魔法陣を作った。


(しゅ)は空気なり、壁は(じゅう)、外はカチカチ中はポンポン、フュージョン」


 二人が作った結界内の空気が無くなり真空状態になる。魔法瓶の断熱と同じだ。


「神力、神装結界」


 白猫の結界がその上に重ねがけされた。


「神力、冷却」


 ベニザクラ号の車内に冷却魔法陣が展開された。マジ寒い。今後、夏のクーラーとして役立ちそうだ。


「ソフィアは羽を持って、居場所を特定してくれ」


「わかりました」


 準備は整った。行くぞ!


 戦闘型になったベニザクラ号は、紅色の蜘蛛に似ている。それが静かに火口に降りていった。


 周りはきっと有毒ガスが充満している。水蒸気だろう、煙で視界は悪い。リーウスの探索もここでは効果が出ない。


(一応な、真色眼)


 反応はない。ここで生きられる生物はいないと言うことだ。


「赤い湖です」


「サクラさん、あれが溶岩です。岩が解けてドロドロになっているんです。だいたい1000度から1200度ぐらいです」


「その温度では鉄は溶けないわね」


 鉄の融点(ゆうてん)は1538度だ。シンティにとっては、まだ低い温度かな。


「イグニスの魔法剣、その温度」


 クエバさんが久しぶりに(しゃべ)った。


「魔法剣の炎は結界で防げます。その温度なら問題なく結界は機能します。行きましょう」


 エルが冷静に状況を分析した。


「ねこちゃん、この子たちいいわね」


 白猫が俺様猫に話しかけていた。


「ふん、やっとわかったか」


 俺様猫がどや顔だ。




 ベニザクラ号が溶岩の中に静かに降りていく。結界は正常に機能している。防水シートが水を弾くように溶岩を寄せ付けない。


「冷却魔法陣、快適です。これ、夏の暑いときにも使えそうです」


 サクラさんがご満悦(まんえつ)だ。


 この魔法陣を積んだ魔動車を販売すれば売れるかもしれない。帰ったらメディと相談だな。





次話投稿は明日の7時10分になります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ