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112 ソフィアの決心




 窟の中はダンジョン化しているようだ。かなり魔素が濃い。そして、洞窟だというのに明るい。密林地帯になっている。


 広さはこの島よりも大きいのではないだろうか。洞窟の壁がどこにも見えない。


 あいつがいた。ワイバーンだ。どうやらさっきのは、鷹を追いかけて出てきてしまったようだ。地上の魔素の薄さではあの巨体は維持できない。ここにいるなら納得だ。


 つくも(猫)とエスプリさんが神力を開放しているので、ワイバーンも警戒して襲っては来ない。まあ、襲ってきても瞬殺だろうが。


 30分ぐらいで目的の場所に着いた。鷹が降下していく。直径が数十メートルはある巨大な木の樹洞(じゅどう)に入っていった。ベニザクラ号では入れない大きさだ。


「シンティ、エル、クエバ、リーウスは、ベニザクラ号にいてくれ。他のメンバーは全方位の神装結界を展開して中に入るぞ」


「わかった。気をつけてね」


「いくぞ!」


 サクラさん、ジェイド、ソフィア、白猫、俺様猫といっしょに樹洞に入ってみた。




 中は意外と広い。そこに、猛禽類の鳥たちが5羽、羽を前後に広げた姿でひざまずいていた。


「上位者様。お待ちしていました」


 梟がリーダーなのだろう、首をクルクルッと動かしてこちらを見上げていた。


「ここにいるのが全員ですか」


「はい、ここで、上位者様達が現れるのを待っていました」


「何年になるの」


「2000年までは覚えています」


「そう、(つら)かったでしょう。ありがとう」


 鳥たちは泣いているように見えた。


「おまえ達はここで何をしていたのだ」


 俺様猫がエジプト座りをしている。気をつかっているようだ。


「羽を守っていました」


 鷹が真っ赤な羽をくわえていた。


 エスプリさんがピクッとした。


「そう、探しに来てくれたのね」


「その羽は何だ」


「火の鳥の羽よ」


 フェニックスだ!


「ごめんね。ここでは説明できる言葉にならないわ」


 いろいろ聞かれると思ったのだろう。そう言って前足をペロリと()めた。


「彼はどこにいるの」


「わかりません。この羽だけが残っていました」


 白猫がソフィアを見上げた。


「精霊の愛し子さん、あなたなら探せるわ」


 鷹がパタッと羽ばたいてソフィアの肩に止まった。くちばしには真っ赤な羽がある。ソフィアが、そっとそれを受け取った。


「いました。火山の中です」


 はい、予想はしていました。ビンゴです!


 みんなで顔を見合わせた。ため息を一つついて、


「ふー、行くしかなさそうね」


 白猫が後ろ足で耳を()きながらそう言った。


「ふん、だいぶ猫らしくなってきたな」


 おまえかー! 教えたのは。


「ベニザクラ号に戻りましょう」


 成り行きを見守っていたサクラさんが歩きだしたが、ふと立ち止まり、


「この子達はどうなるのですか」


 神獣達を見てから、白猫を見下ろした。


「連れて行くわ」


 10層へということだろうな。


「いっしょに行きましょう」


 にっこりと笑って神獣達を手招きした。


「連れて行ってくれるのですか」


「うれしいです」


 (わし)(はやぶさ)(とび)(ふくろう)が羽をパタパタさせている。鷹はソフィアの肩に乗ったまま動こうとしない。


「鷹の神獣はソフィアが気に入ったみたいだね」


「ええ、かわいいです」


 ソフィアが頭を優しくなででいた。


「気に入ったなら、相棒(あいぼう)になってもいいのよ」


 白猫が瞳孔(どうこう)を細めて見上げていた。


「できるんですか」


「あなたは特別なの。自分の意志で契約ができるのよ。それが精霊の愛し子なの」


「……」


「よく考えろ。おまえが探求者になると言うことだ」


 俺様猫も瞳孔を細めて見上げている。尻尾(しっぽ)はビュンビュン揺れている。ご機嫌なときのつくも(猫)だ。


 ソフィアが私を見た。ん、何だろう。


「あなたはそれを望みますか」


 え、おれなの? ソフィアが探求者になれば神獣がいつもソフィアを守ってくれるということだよな。それは、ソフィアにとってもおれにとっても仲間にとってもいいことだ。


 ただ、探求者としての責任は出るだろう。おれにはまだよく分からないが使命があるはずだ。


「使命があるはずだよ。その覚悟はあるの」


「あなたが望むなら、どんな使命でもやり遂げて見せます」


 ん、またおれなの? でも、その決意があるならおれには止められない。


「ソフィアが強くなることはおれも望むことだ。でも、決めるのはおまえだ」


 ソフィアが花が咲くような笑顔で笑った。


「契約します」


 白猫がにっこりと笑ったように見えた。


「第一権限の鷹よ、おまえはこの娘の守護者になるか」


「なります」


「精霊の愛し子よ、おまえはこの鷹を守護者として受け入れるか」


「受け入れます」


「合意はなされた」


「『エスプリシフ・ゲネシス・ユグドラシル』が命じる。契約の精霊よ。姿を現せ」


 白いふわふわしたのが出てきた。


「契約の精霊よ、第一権限の神獣に契約の紋章(もんしょう)(ざず)けろ」


 魔法陣が展開された。無詠唱だ。それがソフィアと鷹を包み込んだ。


「ここに契約がなされた。第一権限の鷹は第二権限の鷹に神格(しんかく)した」


「第二権限の神獣よ、名を名乗(なの)れ!」


「はい、上位者様。私は、精霊剣士の探求者の守護獣『ガリファリアホーク・アルモティア』精霊剣士の神獣です」


「ソフィア、あなたのフルネームよ」


「はい、ソフィアフィ・ノーテフィロです」


 鷹が白く輝いた。光がおさまると、そこには白銀はくぎんに輝く羽を広げた鷹の神獣がいた。


「ソフィアフィ様、ご命令を」


「ソフィアでいいわよ。それと、あなたをどう呼べばいいの」


「ホークでお願いします。気に入っているんです」


「ホークこれからよろしくね」


「はい、ソフィア様」


「ふふふ、ソフィアよ!」


「はい、ソフィア」


 うん、いい感じだ。ソフィアが探求者になったということは、おれは先輩社員と言うことになるな。なるほど、『ご指導ご鞭撻(べんたつ)をお願いします』が望みなのだな。任せろ!


「カナデさん、全く違いますよ!」


 ん、ジェイドが(にら)んでいる。なぜだ! え、サクラさんまで(あき)れている。何でだ。


「おい、ベニザクラ号が襲われているぞ」


 つくも(猫)の声がした。


「行きましょう」


 サクラさんが直ぐに反応した。




 ワイバーンが1体、ベニザクラ号に覆い被さっていた。結界があるので。爪は届いていない。


 ベニザクラ号も触手で攻撃をしている。だが、大きさでは圧倒的にワイバーンが有利だ。


 空には2体のワイバーンが浮いている。様子をみている感じだ。


「ホーク、ワイバーンはあと何体いますか」


「全部で5体です。1体は先ほどソフィアが落としました」


「そこに3体いるわね。後1体はどこかしら」


 サクラさんが周りを見渡している。


「私が偵察してきます」


 ホークが銀色に輝く翼を広げた。


「お願い」


 音もなく飛び立つ。滑るように空中を進んでいく。心当たりがあるようだ。


「さて、私のベニザクラ号を襲うだなんて、お仕置きじゃあすまさないわよ」


 サクラさんの加護の力が膨れ上がっていく。レーデルさんとの協議の結果、加護は精霊術であるという結論になっている。


「魔法陣展開『神装力風の道』発動」


 手には世界樹の枝が握られている。それを指揮棒を振るように振り上げた。紅色の魔法陣が浮かび上がる。そして、紅色の渦巻が魔法陣から出てきた。


「渦巻け風よ、切り裂け風よ、トルネード」


 紅色の刃がいくつも渦の中に生成されていった。神装結界の刃だ。それが高速で回りながらベニザクラ号に覆い被さっているワイバーンを巻き込んだ。


 一瞬だった。ワイバーンは切り刻まれ霧散した。50センチほどの魔石が空から落ちてきた。


「まじかー! 魔法陣展開というより精霊術展開だな」


 あとでレーデルさんと議論をしよう。


 さて、あと3体か。


「ジェイド様、私達も行くわよ」


 白猫が右手を挙げてクルクルと回している。


「神装力第三権限開放 神力風の道」


 真っ白い渦が出現した。それが雲のように渦巻いている。


「ジェイド様、きて」


 白猫が手招(てまね)きをする。


「うん、わかった」


 神獣様の力は絶対だ。つくも(猫)で嫌と言うほど体験している。ジェイドは何の躊躇(ちゅうちょ)も無しに雲に跳び乗った。


 まるで斗雲(きんとうん)だな。


 西遊記で孫悟空が呼び出す雲の乗り物だ。


「レイピア転送」


 ジェイドの手に細い両刃剣が握られていた。これも神力剣だ。


「魔法陣展開『(まと)え神装結界の刃』」


 レイピアが5メートルほどに伸びていった。神装結界の(やいば)だ。


 白い雲が旋回(せんかい)しながらワイバーンに近づいて行く。


「エスプリさん。右の羽を落とします」


「わかった。それと、エスプリよ」


 車の運転でもするように前に座っている白い猫がハンドルを切る動きをする。雲も、流れるように羽に近づいて行った。


「落とします」


 ジェイドがレイピアを軽く振った。


 ズルリ、ズズズズ、ズーン!


 羽がずり落ちていった。本体もそれに続いて落ちていく。下には、尻尾を激しく振って舌なめずりをしている俺様猫が待っていた。


「神力猫の手」


 巨大な猫の手が空中に浮いていた。それが、逃げていく獲物を容赦なく踏み潰すように、ワイバーンの本体を叩き潰した。


 猫の手が消えると、そこには60センチほどの魔石が残っていた。


「ふん、まあまあの大きさだな」


 猫が踏み潰した方の肉球を丁寧に舐めていた。


「ねこちゃんお手柄(てがら)よ」


 サクラさんに頭をなでられて、ゴロゴロと喉を鳴らしている俺様猫が満足そうに目を細めていた。





次話投稿は明日の7時10分になります

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