110 ジェイドの相棒
「作戦会議を開きます。議題は火山島調査についてです」
司会はエル、書記はジェイドだ。
少しでも協力したいという思いからの立候補になる。シンティにも異論はない。
「隊長、説明をお願いします」
「ラルタ島を宿泊場所にする。そこから火山島に乗り込む」
サクラさんがワクワクしている。
「基本、ベニザクラ号での移動とする。つくも(猫)の神装結界なら水蒸気爆発による噴石や火砕流、溶岩流、有毒ガスに対しても効果がある」
火山がいかに危険な場所であるかはしっかり説明しておきたい。
「結界は、9層にある物と同じだと思っている。理由は、島の様子を外から確認できないからだ」
認識阻害とはちょっと性質が違う感じもするが、火山以外は中が見えないという点では同じと考えていいだろう。
「まず上空からの観察をして見るが、たぶん結果は同じだろう。なので、そのまま降下する」
サクラさんを見た。キョトンとしている。
「ペンテがいなくても風の道を展開できますか」
「短い距離なら可能よ」
「たぶんですが、30キロメートルぐらいです」
「問題ないわ」
「なら、ラルタ島からはペンテは収容でお願いします」
「わかった」
「あとは、行ってみないと分からない……だな」
ガクッとなる仲間達。でも、そうなのだ。何しろエスプリさんが知らない島なのだ。
「これで作戦会議を終了します。解散です」
みんながバラバラと散っていく中で、クエバとイグニスが残っている。何か話がありそうだ。
「カナデ、ちょっと話をしてもいいか」
「イグニスがかしこまっているとなんか調子が狂うな」
照れ笑いのイグニス。
「ジェイドのことだ」
連れて行けという話なら却下だ。そこは譲れない。
「おまえの信念に文句を言う気はねえよ。おれなんかよりもよっぽどしっかりしてるが、確かにジェイドは子どもだ」
何が言いたい?
「おまえは子どもや女に対しては何て言うか、うまいこと言えねえんだが優しいよな」
まあ、例外もいるが、日本での生活の価値観だとそうなってしまう。これはどうしようもない。
「おまえの信念は分かるんだ。だがな、ジェイドは冒険者なんだよ。弱いと死んじまうんだ。だから、強くなれるチャンスがあるときは、挑戦しなきゃいけねえんだよ」
クエバがうなずいている。
く、痛いところを突いてくる。おれにもその理屈が分かる。弱ければ死んでしまうのが冒険者だ。
「クエバから見てジェイドの才能はどうなんだ」
その評価をするためにここに残ったのだろう。
「天才! 私よりもかも」
まじか、クエバはこういうことではお世辞は言わない。
「でも、経験不足。カナデの力が必要」
くそ、言い返せない。その通りだ。
「わかった、ジェイドを連れてきてくれ」
「さっきからここにいるわよ」
サクラさんがヒョイと壁の向こうから顔を出して、ペロッと舌を出した。その周りには、他のメンバーも勢揃いしている。レーデルさんまでいた。みんなグルか。
「ジェイド、全方向の神装結界は何時間展開できる」
「約10時間です」
え、そうなの。ふつう5時間ぐらいだよね。おれだって、10時間できるか自信ないよ……。
「……」
「俺様が嘘ではないと保証するぞ」
つくも(猫)よ、おまえもか。
「わかった。ジェイドも調査隊のメンバーだ。明日は早い支度をして早く寝ろ」
ジェイドが花の咲くような笑顔で笑った。精霊達が大喜びだ。ソフィアがキョロキョロしている。
おれには、ジェイドを一人前の冒険者にする事ができる力がある。ここは異世界だ。素直にその理に従おう。
* * * * *
「出発します」
たくさんの仲間達に見送られて、ベニザクラ号が静かに浮き上がった。
「目的地は『フェスティオ島』です」
火山島の正式名だ。
「まず、ラルタ島を目指します。そこでペンテを収容し、ベニザクラ号だけの風の道で火山島に向かいます」
「ペンテ、お願いね」
景色が後に吹っ飛んだ。
ペンテだけでも時速300㎞の超高速移動が可能になった。ラルタ島まで1時間もかからないだろう。
「フェスティオ島に近づきました。止まります」
ベニザクラ号だけの風の道も問題なく展開した。目の前には、火山が見える。他の景色は見えない。
「島の全貌を確認します。上昇」
ベニザクラ号が登っていく。
「ストップっす」
リーウスが指示を出した。
「だめっす。火山しか見えないっす」
おれにもそう見える。神装力第三権限の力で確認できないということは、同等かそれ以上の力の結界ということだ。これはやっかいだぞ。
「つくも(猫)、エスプリさん呼べるかな」
「もう来ている」
次元渦巻から、女神様が登場した。
「やっかいね。たぶん第三権限の結界よ」
出てくるなり下を見てそう言った。
「今回は、私も同行させてもらうわね」
許可も何もない。命令と同じだ。
「わかりました」
「ふん、同行は認めるが、そのチャラチャラした姿は何とかしろ」
女神モードの服装のことだろう。おれのイメージそのままだ。つまり、アニメキャラそのままなのだ。
「うるさい猫ね。わかったわよ」
女神様が室内を見渡した。なんだ?
「私ではうまくイメージできないのよね。そこの箒にでもなろうかしら」
冗談ではないようだ。箒お化けの再来か。
ふと、女神様の視線が止まった。なんだ。誰を見ている。
ジェイドだった。
「きみ、名前は」
「はい、ジェイドです」
「フルネームを言って」
「ジェイドスター・ホンターナです」
「マイアコス王国の王族ね」
「はい」
クルリと振り返った女神様。
「ストライクよ!」
なんのことだ?
「私の好みにぴったりなの」
まじですか!
「決めたわ。私、あなたの神獣になってあげる」
は、なんとおっしゃいましたか?
「あなたの好きな動物をイメージしてみて」
「え、あ、はい」
つくも(猫)を見ていた。
「つくも(猫)さんみたいなねこちゃんが好きです」
「わかった、そのままよ。イメージして」
ジェイドが猫の姿を思い浮かべている。
ドロン……ではない。
シャララララーンと言う感じだろうか。
とにかく、女神様が真っ白な猫に顕現……いや、変化していた。
「この島の中限定だけど、私はあなたの神獣よ」
真っ白な猫がしゃべっていた。
「かわいいー」
真っ先に反応したのはやはり天然エルフだった。
抱き上げて頬をスリスリしている。何となくだが、つくも(猫)の機嫌がよろしくないような気がする。
「ふん、猫とは生物の頂点だぞ。猫らしく生きるには誇りを持て。俺様が手ほどきをしてやる」
違った。先輩としての自覚が出たようだ。
「えーと、作戦会議をします。白猫ちゃん自己紹介しますか」
「エスプリよ。ジェイド様の神獣になったの。よろしくね」
猫がウインクをした。できるんだ。
「エスプリさん。説明をお願いします」
「あの結界は神装力第三権限よ。つまり、私とそこのねこちゃんと同じ権限なの。だから、あの結界を発動したのはかなり強い神獣よ」
シーンとなる室内。つくも(猫)と同じ力の神獣相手にどうしろという顔だ。
「ふん、安心しろ。同じ権限と言っても、俺様はθΜΞΣριΥΙινμκξΞΛθΝξλだ。6万年前の力が弱った神獣など相手にならない」
途中は神語か、変換できなかったな。
「まあ、そういうことね。それに、神獣なら攻撃はしてこないわよ」
猫が2匹で喋っていた。
今まであったやつらのことを思うとそうだろうな。
タンバリンを叩いて踊るウサギと本を返却するモモンガの姿を思い浮かべてそう思った。ああ、料理をする猫もいたか。
さて、どうやって上陸しようか。相談だな。
次話投稿は明日の7時10分になります




