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大納言伝説  作者: edinburgh0910


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3/3

ep.3 栗林の歓迎と

 「ようこそ。卍郎(まんじろう)。久しいな。」


頭頂部から額にかけて見事なまでの(きら)めきを見せる栗林がそう発した。

その輝きはそう月を想起させる。月は必ず欠け輝きを失う儚い存在。その事実は月光にどこか哀愁さと美しさを共存させる。まさに栗林のご来光はそれを体現したものだった。栗林の光は禿げてゆくことを代償にして得た光なのだ。それはまさに、そういった欠けゆく月の放つ光と同じなのだ。

しかし、栗林の素晴らしさは、それだけにとどまらない。月とはまた欠けてもなお、また満ちていく存在。そういった生命力さえも栗林の光は感じさせてくれる。

(これは......久しぶりに見ると......来るものがあるな.....)

心な中にもかかわらず、思わず笑いをこらえてしまった。隣では、土柄観も引きつらせた顔を下に向け、腹に手を当てながら震えている。さすがにいつも生真面目な土柄観といえども、久しぶりに会うと笑ってしまうらしい。


おっと、返事をしなくては。こういう時はまず第一印象が大切だ。


「うむ。たいそうなご迎えご苦労であった我が友、栗林よ。」


なるべく失礼にならないように、目線は栗林の頭頂から外す。

デキる男とはこういうことなのだ。


そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか栗林邸の応接室へと案内されていた。

隣には土柄観(どえみ)が座り、前には栗林が居る。さすが、栗林の応接室だ。何かよくわからないが風流の溢れている屏風があったり、茶器があったりしている。

私が栗林と土柄観が話し込んでいるのを横目に、そういった取留めもないことを考えていると栗林が咳を一つしてから話しかけてきた。


「コホンッ。卍郎、話すことがあるのではないかね?私はまだ君の侍従である土柄観としか会話をしていないのだが。」


どうやら、栗林は私に不満があるようだ。この場合、どうしたらいいのかと新幹線のようなスピードで思考を巡らせていると、土柄観が私になにやらアイコンタクトをとばしてきた。それに対しどうしたものかとまたも、新幹線のようなスピードで思考を巡らせる。目を瞑り思考を巡らせる。イメージはそう、脳のシナプスに最大限の電流を流す。そうして結論を待ち続けていると、とうとうしびれを切らしたのか、土柄観が耳打ちしてくる。


「清原先生。そろそろ答えてください!これからお世話になる人ですよ。前回のような無礼があってはまた、追い返されてしまいますよ。もう、この際なんでもいいですから適当に挨拶してください!」


どうやら、挨拶をするのが正解のようだ。


「うむ。栗林よ。久しいな。折り入っての頼みがある。」


完璧な挨拶である。しかし、土柄観(どえみ)の反応は芳しくない。どんどんと顔が青ざめていき、その早まる拍動が伝わってくる。

「清原先生......さすがに......その挨拶は拙いのでは......」

そう、土柄観がつぶやく。


「頼みなど聞きとうないわ!だが、土柄観(どえみ)に免じて今回は泊めてやろう。しかし、そんなことを聞きたいのではない!

お前は前に来た時の愚行を忘れたのかっ!わびよ!」


栗林は怒髪天(どはつてん)()いている。栗林でも、流石にこれにはさすがの私も動じてしまった。


「おっおぉ、栗林よ。すま......ムゴゴッ」

謝罪のセリフをそこまで言ったところで、土柄観(どえみ)が私の口をふさいできた。

なんと、失礼なっ!


「栗林様、申し訳ございません!清原先生にはこちらからよく言い聞かせますので、先ほどの話で手打ちにしてくださいませんか。」


「ふん、卍郎よ。命拾いしたな。こいつを連れていけっ!」


そう栗林が叫んだ途端に部屋の入り口からバンッという音が聞こえてきた。

振り返るとそこには、力士も斯くやというような大男が目に入る。その巨体は私のほうへ迫ってくる、その迫力には思わずたじろいでしまう。そのまま、硬直した私の体は抵抗する術もなく大男に担がれ、別室へ連行されたのだった。











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