ep.1 平安の大火(卍)
〜平安の時代。それは日本の文化が独自に萌芽し育てられた、はるか昔。
華やぐ「日本文化」を背景に、宮廷では四季折々の風情に流され永劫ともとれる世界で暮らす男が居た。〜
そう!この私である!!
私、清原卍郎。この平安の世界で唯一の望災師の資格を持つ男だ!
この世界において災いとは人々の最も恐れるところにあるもの。震災、火災、殺人、台風、落雷...人々が恐れるのは自然の災禍に限らず、人為的なものも含まれる。
私はそれを望むことができる!
哀願し、悲願する。私の心の願いが神に届いたときその災禍は成就される。
それが望災師
しかし、皮肉にもその力により最も災いを齎されているのは私自身なのかもしれない。
「清原先生!緊急事態です!清原先生の邸宅が火事です!!」
その瞬間、私の背筋に衝撃が走った。やはり、またとしても望災師としての能力が暴走してまったのだ。
哀願、悲願といったが、あれはただの誇張である。些細な願いにさえ望災師の能力は反応してしまう。
私は先程まで、寒さを感じていた。平安時代の邸宅は木造で、スカスカだ、だから寒い。暑い夏なら良いのだが、冬は厳しい。だから暑くならないかなと、少し望んでしまった。
「清原先生!避難してください。危険です!もうそこまで火と煙が!」
そうして私は侍従の土柄観に連れられ、焼け落ちる私の邸宅から、命からがら逃げることになった。
そうして私は家を失ったのだった。
あぁ。私の家...空高く登ってゆく黒煙には、私の愛しいマイホームへの哀愁を感じさせる。
独り身でありながらも、土柄観ら侍従と過ごしてきた日々はかけがえのないものだった。
「先生...清原先生!聞いてますか!」
私が悲しみにくれていると土柄観が横槍を入れてくる。
「あぁ、土柄観、もちろん聞いてるよ。何だね?」
「はぁ、呆れました。聞いてないじゃないですか!
と・も・か・く!最後に家が燃えたのいつだと思ってるんですか!
先月ですよ!先月!」
ともかく大きな声で、土柄観は私を叱ってくる。
「いやぁ〜。参っちゃうね。」
本当に参ってしまう。せっかく家が建ったのに。また、長い建て直しの期間か...
「参っちゃうね。じゃないですよ!また、根無し草の居候に戻っちゃうじゃないですか!」
そう言って土柄観はぷりぷりと怒っている。
「まぁまぁ、そう怒るな。火消し隊も来ていることだし、もう問題ないだろ?」
そう私が宥めると、土柄観はより一層、その怒りの炎を大きくした。
「そういう問題では無いんですっ!清原先生。
もういいです。火消しの方には私から話をつけておきますから。
この先、どうするか考えて居てください!」
そういって土柄観は火消しのところまで消えていった。
さて、どうしたものか......
こういう時はやはり我が友、栗林のもとへゆくか!
鎮火されてゆく様子をみていると、土柄観がこちらへ帰って来ていた。
「清原先生。どうするかはお決めになりましたか?」
「ああ、しばらくは栗林のもとへ世話になるか。」
「そうですか。まぁ、そうする以外選択肢はありませんよね。申し訳ないですが、栗林様のところに厄介になりましょう。」
そうして私達はこの平安の世界で唯一の私の友である栗林のもとへ往くこととなった。




