表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

第4話:『色をなくした画家』

カラン、とドアベルが鳴り、一人の青年が店に入ってきた。彼の名はケンジ。街角で絵を描いている、駆け出しの画家だ。だが、その顔は、彼が着ている灰色のコートのように、生気を失っていた。

「マスター。俺の描く絵から、色がなくなってしまったんです」

ケンジはそう言い、カウンターの椅子に沈み込むように座った。彼の後ろには、漆黒の影のようなものが、ゆらゆらと揺れている。その影は、彼が着ているコートの灰色よりも、さらに深く、暗かった。

「いつからだ?」

俺の問いに、ケンジは震える声で答えた。

「一週間前から。描こうとすると、色が筆から逃げていくんです。そして、その色が……後ろの影に、吸い込まれていく」

ケンジは、自分の過去の失敗や、他人から受けたひどい言葉を思い出すたびに、色が失われていくのを感じていた。彼が絵を描こうとするたびに、その影はさらに濃くなり、彼の心を覆っていく。

「その影は、君が自ら生み出したものだ」

俺の言葉に、ケンジは驚き、顔を上げた。その瞳は、まだ俺の言葉を信じていなかった。

「その影は、君のネガティブな感情を食べて生きている。だが、ポジティブな色を、そいつは食べられない」

俺は、ケンジの前に置かれたホットミルクに、青、黄、赤のシロップをゆっくりと注いだ。ミルクは、まるで魔法のように、七色に変化した。

「君が描くべきは、過去ではない。君自身が、本当に描きたいと心から願う、未来だ」

ケンジは、その言葉とミルクの温かさに、涙を流した。彼は、持っていたスケッチブックを広げ、震えるペンを握った。

そして、失われた色を取り戻すかのように、新しい絵を描き始めた。彼の描く絵は、七色に輝き、彼の心を満たしていく。

その瞬間、彼の後ろにいた漆黒の影は、悲鳴を上げ、光の中に消えていった。

ケンジは、再び絵筆を握り、未来を描き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ