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第七話 リーネ

土煙が晴れると段々とシルエットが浮かび上がってきた。

身長は小学三年生くらいだ。


あの小さな体からなんであんな怪力が出るのか全く理解できない。

まあ異世界だからそんなもんなのか?


「なんであんな小せえくせに門を吹き飛ばせたんだ!?意味が分からねえ」


どうやら異世界でも普通ではないらしい。


「ボード、あの子連れてきて」


「はあ?なんでだよ」


「門を壊されたんだから何とかしないといけないでしょ!」


「そうじゃなくて、お前が行けよ。俺より強いだろ」


「あんな怪力を持つ子よ。私が行ったら殺されるかもしれないじゃない」


「それは俺も変わんねえだろ!」


「私はあんたより強いんだから、ここぞって時にいないといけないじゃない」


「今がここぞって時だろ!!」


「なんじゃ。何をもめておるのじゃ?」


少女……いや幼女が近づいて来て俺たちに話しかけて来た。


「お、お嬢さん。どうして門を壊したんだい?」


ボードが恐る恐る訊く。


「門が閉まっておったから開けたのじゃ。そうせんと中に入れんじゃろ」


「んー でも壊したものがものだからなあ……弁償とか……」


「なぬ?金貨を払わないといけぬのか?」


「そうだなあ……多分金貨十枚は必要だろう。なかったら今でなくても後々返してくれればいいんだが……」


金貨十枚って百万円!?

こんな子供が持っているのか?


「仕方ないのお。これで良いのか?」


そう言って幼女はおもむろに袋を取り出し、中から大きな金貨を十枚取り出した。

金貨は初めて見るが思ったより大きいんだな。

大きさは銀貨五枚分くらいかな?


「!? お嬢さんこれは古金貨じゃないか!」


「コキンカ?なんじゃそれは?使えんのか?」


「使えないというかこれ一個で金貨十枚分くらいの価値があるんだ。門の修理代としてはこれ一個で十分だ」


古金貨が金貨十枚分の価値だとすれば一個百万円ってことは十枚で一千万円!?まだ袋の中には残ってそうだし……

本当にこの幼女何者なんだ?王族がお忍びで来てるとか?


「うむ。それじゃあもう行ってもよいのじゃな」


「いやちょっと待ってくれ魔紋証を見せてくれないと」


「マモンショウじゃと?なんなのじゃそれは?」


「やっぱり持っていないのか。それじゃあ今から作るから質問に答えてくれ」


「なんでも答えてやるぞ」


そうしてボードが小屋の中に案内する。


「んじゃあアーネッタ。魔紋証とペンを持ってきてくれ」


「ひゃ、ひゃい!」


緊張していたのかアーネッタは、声が裏返っている。

だが言われたことはちゃんとこなすようで、魔紋証とペンを持ってきた。


「名前は?」


「イグラーナ・リーネじゃ」


なんか威厳がある名前だな。やっぱり王族とか?

そういえば俺はここにいていいのか?

個人情報じゃないのか?

そう思った俺は小屋を出ようとするとボードに呼び止められた。


「おい?どこに行くんだ?」


「いや、個人情報を聞くのは良くない気がして……」


「そんな大したことは聞かないから大丈夫さ。というか一緒に聞いててくれ」


「え?なんでですか?」


「お前にはこいつのお守りを任せたいんだ」


「へっ?」


「少し考えてくれよ。このお嬢ちゃんをそのまま一人にしたらどうなるか。あんな大金を持っていてかつ世間知らずだ。誰かに騙されてぼったくられるかもだろ。それでお嬢ちゃんが切れて暴れたらこの町は終わるぜ」


「確かにそうだけど。俺じゃなくてあなたたちがやればいいんじゃないですか?」


「俺たちは、門番の仕事があってここを動けねえんだ。本当はアーネッタの暇な時間に任せようとも思っ

たんだが、門も壊れちまったからよお。交代交代でやらねえとやっていけねえよ」


「え~私もやるの?」


「俺と同じ時間やるだけだ」


「それって十二時間じゃない!二倍の時間やらないといけないじゃない!」


「今までがさぼりすぎてただけだろ」


「なんじゃ質問はもう終わったのか?」


しびれを切らしたのかリーネが会話に割り込む。


「おっと、すまないな。お嬢ちゃん。質問の続きだが年齢は何歳だ?」


「確か八歳じゃ」


その喋り方で?

おじいちゃんの言葉が好きだから使ってるとかかな?


「じゃあ職業は?」


「そんなものしているわけないじゃろう」


「最後に出身を教えてくれ」


「うむ。確か父がヴァルドラクの樹海とか言っておった気がするのじゃ」


「……それは冗談じゃないんだよな」


「我が嘘を言うわけないじゃろ」


「そ、そうか」


なんだ今の反応は?そんなやばい場所なのか?


「今度こそ行ってもよいのじゃな」


「あ、ああこの魔紋証に魔力を流したら行ってもいいぞ。あと町を出るまではこいつが案内してくれるか

らできるだけ言うことを聞いてくれな」


リーネが魔紋証に魔力を流す。

俺の時のようにまばゆい光が部屋中を包み込む。

そしてボードから許可を貰うと俺の方に近づいて来た。


「お主名を何というのじゃ」


「五十嵐晴樹です」


「ではハルキと呼んでもよいか」


「いいですよ」


「我は人間社会のことはよく分からぬ。苦労をかけるかも知れぬがよろしく頼むのじゃ」


俺もここの人間社会とか分からないんだけど。

まあそこらへんはエシィとかエレンに聞けばいいか。


「さあ飯屋に案内するのじゃ。我はお腹がペコペコじゃ」


小屋を出た時そうリーネが言った。

そういえば俺もそうだな。二日も食ってなかったか?

忙しすぎて空腹も忘れてた。


「まずはお金を作らないとですね。今俺たちには使えるお金がありませんから」


「敬語はやめるのじゃ。聞いててむず痒いのじゃ」


「分かりま……分かった」


「それでどこでお金を得るのじゃ」


「とりあえずこいつを冒険者協会に持って行き、その後にその古金貨を金貨に替えてくれるところに行く」


俺は小屋の外に置かれていたヴァルフレアを持ち上げ、冒険者協会に向かう。


「そやつはお主が倒したのか?」


「そうさ」


「なかなか強いではないか。我でも倒すのに少し苦労するぞ」


倒せるのかよ!

俺は倒すのにだいぶ苦労したんだぞ!!


「は、はは。こ、こんなやつ瞬殺だったぜ」


「それはすごい。これから戦闘はお主に任せるぞ」


「ま、任せとけ!」


今更嘘などと言えるわけもなく戦闘は俺に任されることに決まった。

いや嘘ではない!一発で気絶させることができたから瞬殺といっても過言ではないはずだ。

まあ町の案内だけだし戦闘になるなんて滅多にないだろうし大丈夫だろ。


なんか周りの人が見てくるな。

こんなでかい物持って歩いているんだし当たり前か。

ふふふ、みんな俺の強さに驚いているのだろう。


「ハルキ!人間が我を見てくるぞ!」


「いや、あれは俺を見てるんだ。きっとヴァルフレアを倒した奴がいることに驚いているのさ」


『いえ、魔物をマジックポーチに入れずに運んでいる非効率的な人間を見て笑っているのですよ』


そ、そうなのか。

それでマジックポーチって何?


『マジックポーチとは亜空間に物をしまうことのできる魔道具のことです。ヴァルフレア一匹が入るくらいの大きさなら金貨一枚もあれば買える非常にリーズナブルな代物です』


それはリーズナブルと言っていいのか?

というか俺の苦労は無駄だったの?


『そもそも晴樹様はマジックポーチを買うお金さえなかったためどうしようも無かったのであまり関係ありませんね』


まあ過去は変えられないからぐちぐちと考えても仕方ないか。


そうこうしている内に冒険者協会に着いた。

だがここで一つ問題が起きた。

ヴァルフレアが大きすぎて入らないのだ。


「先に入って受付の人を呼ぶか。リーネはここで待っててくれ」


「分かったのじゃ」


俺は冒険者協会の中に入る。

相変わらず人が多い。

俺は換金所と書いてあるところに並ぶ。


前の人が小さな袋から魔石やら魔物の死体やらを取り出していた。

あれがマジックポーチなのだろう。

みんな持ってるんだな。

後で俺も絶対買おう。


そんなことを考えている内に俺の番がやってきた。


「こんにちは。ご用件はなんですか?」


「魔物を換金したいんですが……」


「ではまず魔紋証をご提示してください」


言われた通りに魔紋証を見せる。


「確認いたしました。ではここに魔物を出していただけますか?」


「いやあの……マジックポーチを持ってなくてそのまま持ってきたんです」


「そうなのですか。しかし見た感じ何も持っていないようですが?」


「大きすぎてここには入らなかったんです」


「?」


「とりあえずこっちに来てください」


俺はその人を受付の外へと案内する。

リーネは暇だったのかヴァルフレアの死体の周りを走っていた。


「やっと来たか。待ちくたびれたのじゃ」


リーネが文句を言う。

そんなに待たせてないだろ。

待つのがそんなに嫌なのか。

まあ待つのが嫌じゃなかったら門を壊したりなんかしないか。


「こ、これはヴァルフレアではないですか。お二人でこれを?」


「いえ俺一人でです」


「それはすごいですね。ランクをお聞きしても?」


「えっ!? ええっと……Eランクです」


「もしかして冒険者になったばかりなのですか?」


「は、はい」


「でしたらなるべく早めに昇格試験を受けることをお勧めします。ランクが上がることで受けられるクエストのレベルも上がっていきますから。ヴァルフレアをお一人で倒せるのならBランクの試験を受けてもいいかもしれませんね。試験は一か月後にあるのでぜひお越しください」


「分かりました。それでこれいくらで売れますか?」


「そうですね。状態が良いので金貨七枚くらいでしょうか」


「あれ?Bランクの魔石は金貨十枚くらいすると聞いたのですが」


「確かにBランクの魔石は金貨十枚で取引しておりますが、Cランク以上の冒険者しか売ることができな

くなっているのです。解体が終わりましたらお返しいたします」


マジかよ!じゃあ試験がある一か月後までお金に替えられねえのかよ。

なんでそんな面倒なことするんだ?

ランクの低い冒険者が無理に危険なことをしないようにするためだろうか。


「それで今お売りになりますか?」


「じゃあよろしくお願いします」


「分かりました」


そう言って冒険者協会に戻り袋を持ってきた。

マジックポーチだろう。


でかいものをマジックポーチに入れるさまは不思議なものだ。

入り口は狭いのにすいすい入っていく。

この世界に魔法があることを改めて実感させられる。


「すごいぞハルキ!こんな小さい袋にヴァルフレアが吸い込まれていくぞ!」


「これはマジックポーチと言ってな、亜空間に物を入れられるんだ」


「ハルキは物知りだな!」


「そ、そうか」


『わたくしの知識で偉そうにするのはやめてください。非常に不愉快です』


いや別に偉そうにしてはないんだが……


「ではお金を渡しますので受付にお越しください。解体は明日には終わっているので明日魔石を取りに来てください」


「はい」


そうして俺は金貨七枚だけ貰って冒険者協会を出る。


「じゃあ次はリーネの古金貨を金貨に替えに行くか」


「先に飯を食わせるのじゃ」


「それもそうだな。先になんか食べるものでも買うか。一応お金が手に入ったんだし」


そうして俺たちは屋台が沢山あるところに出た。


「ここのお金は俺が出すが後でちゃんと返すんだぞ」


「いい匂いがするのう!」


聞いてるかこれ?


「ハルキ!これが食いたいのじゃ!」


リーネが焼き鳥らしきものを指差す。

何の肉なのかは分からないが。

聞いてみるか。


「おじさん!これって何の肉なんですか?」


「これは鶏の肉だよ」


「へっ?」


「なんだ?鶏も知らないのか?」


「いやてっきり魔物の肉とかだと思って」


「魔物が食いたいならもっと奥の方に行きな。ここには売ってないぜ」


魔物って美味しいのかな?

食べてみようかな。


「リーネこれ何本欲しい?」


「とりあえず十本じゃ」


そんなに食べるのか?

俺は他のも気になるし五本でいいや。

あ、エシィの分も買って行こう。


「じゃあこれ二十本ください」


「あいよ。一本銅貨五枚だから銀貨一枚ね」


「金貨しか持ってないんですけどいいですか?」


「もちろんさ」


その後もいろいろな屋台を回った。


焼き鳥はうまかったな。日本で食べるのよりはさすがに美味しくなかったが、たれもちゃんとしていた。

あと試しにオークの肉も食べてみたが、獣臭さが少し気になるものの肉汁たっぷりで柔らかくジューシーな味わいでおいしかった。


気づけば銀貨八枚も使っていた。

銀貨八枚って八万円だよな。

使いすぎた!


理由はリーネがとにかくいっぱい食べるからだ。

育ち盛りだとしても食いすぎだろ!銀貨五枚分は食ってるぞ。

まあ、それは後でリーネから貰えるからいいか。


俺も銀貨三枚分も食ってるって?

二日近く何も食ってなかったんだぞ。

そりゃ沢山食いたくもなりますよ。


「ハルキあっちからもいい匂いがするのじゃ」


「まだ食うのかよ!」


「ついてくるのじゃ!」


そう言ってリーネが走り出す。


「誰かにぶつかると危ないぞ(相手が)」


「分かったのじゃ!」


そうリーネがこちらを振り向いた時。


ドンッ!と鈍い音を立ててリーネが前にいた若者を突き飛ばした。

……言わんこっちゃない。


「ガハッ!?」


結構飛んだけど大丈夫か?骨は折れてないのか?


「す、すみません!大丈夫ですか?」


「これが大丈夫に見えるか?」


相手の人はかなり怒っているようだ。

俺は手をその人に差し出し引っ張り上げようとした。

しかし手に触れた瞬間それは起きた。


「ぐああぁぁああ!!」


俺が手に触れた瞬間その人は悲鳴を上げて気絶してしまった。


「えっ!?ど、どうしたんですか?」


リーネも驚いたようにこっちを見てる。

何が原因なんだ?


『それは晴樹様が触れてしまったため異能が発動してしまったのです』


え?触れただけで発動するの?


『そうだと言ったではありませんか』


てっきり敵にだけ効くものだと思ってた……

じゃあ昨日エシィと一緒に寝たの凄く危なかったんじゃないの!?


『そうですね』

マジか……

今日は床で寝ないとな。

さて、とりあえず……逃げるか。


「リーネ!こっちに来い!」


「なんじゃったんじゃさっきのは?」


「あ、後で説明するよ。とりあえずついて来い!」


「わ、分かったのじゃ」


そうして俺たちはエシィの家に向かうのだった。

通りすがりのお兄さんごめん!



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽



目標

1、孤児院のみんなとの再会

2、幽霊への復讐

3、エシィを守る

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