第六話 再戦
剣で戦うのと拳で戦うのとは安心感が違う。
拳を当てるには奴の懐に潜り込まなきゃいけない。
前回は油断していたからうまくいったが、今回は相手が油断している素振りはない。
「前回と同じようにぶっ倒してやるよ!」
失敗したら死ぬかもしれないという恐怖を少しでも和らげるため、俺は精一杯の強がりを吐く。
「ガァッ!!」
ヴァルフレアが攻撃を仕掛けて来た。
危機察知のおかげでどんな攻撃が来るか大体予想ができる。
これは頭へ爪攻撃か……
この攻撃の後は視線が切れて隙ができる。
やるなら今しかない!
……クソ、踏み込めよ俺。
だが俺は踏み込むことなくその攻撃をただ避けた。
たとえ踏み込んでも与えた攻撃でヴァルフレアを倒せるとも限らないし、踏み込むことでヴァルフレアの攻撃が当たる可能性が増える。
失敗したら死ぬ。
それに今命を懸けてまでヴァルフレアを倒す必要なんてない。
ここで勝っても得られるのはお金だけだ。
お金ならこんな危険なことをせず地道に稼いでいけばいい。
バカか俺は!
なに逃げようとしてるんだ?
逃げきれる保証はあるのか?
今の俺は前回みたいに無限の体力を持っていない。
戦って負けるより、逃げて追いつかれる可能性の方が高いだろ!
ただ踏み出すのが怖くて戦わなくてもいい理由を探しているだけだ。
いつも俺はそうだ。
やりたくないことに何かと理由をつけてそれから逃げ出す。
学校に行かなかったのだって両親が死んだのを理由にしただけで本当は行くのがめんどくさかっただけだ。
いつまでそんな風にいるつもりなんだ?
もうまわりに甘えさせてくれる人なんていない。
守るべきものだってある。
勇気を振り絞るんだ!
ヴァルフレアは俺に攻撃が当たらないのにイラついているようだ。
攻撃がだんだん雑になっている。
「ガァ!」
来た!
爪攻撃だ!!
俺はその攻撃を躱しながら奴へ近づく。
あれ?なんで危機察知が収まらいんだ?
攻撃はもう躱したはずだぞ?
!?
尻尾攻撃!?
今までこんなことしたことなかったぞ!
攻撃パターンをかえたのか?
よりによって俺が近づいたときに!?
直接体に当たらないように手でガードしてその攻撃を受ける。
俺は勢いよく吹っ飛ばされて近くの木に叩きつけられる。
グゥ……痛い。
痛みなんて久しぶりに感じたぞ。
それになんかふらふらする。
バタンッ
何かが倒れた音がした。
それが自分なのか木なのか目が霞んで分からない。
今倒れたらやばい。殺される。
でもだめだ……意識が……も、う――
「はっ!?」
勢いよく起きるとまぶしい光が目に入ってくる。
また死んだのか?
『いえ、晴樹様はまだちゃんと生きております』
「うわぁ!?な、なんだエレンか。どのくらい俺は寝ていたんだ?」
『ざっと五分ほどですね』
ヴァルフレアはどうして俺を殺さなかったんだ?
あれ?ヴァルフレアも倒れてる?
一体全体どうなってるんだ?
『それは晴樹様の異能のおかげです』
異能異能ってさっきからなんなんだよそれ!
『異能とはこの世界の生物が主によって与えられる特殊能力です。しかしまあ実際に与えていたのは私たちだったのですが……そこは置いておきまして、それがどういったものかと言いますと特定の行動をすることで魔力を使いその能力が発動するのです』
さらっと今大変なこと流していた気がするが……
まあそれは置いとくって言ってるし置いておいて、俺の異能はどういう物なんだ?
『晴樹様の異能は触れたものに苦痛を与えるという異能です』
……なんというか悪役が持ってそうだな。
それで主人公が痛みなんて効かない!ってなって最終的に倒されるやつ。
なんか嫌だな……
『そんなことを言っても一度与えられた異能は死ぬまで消えませんのであきらめて下さい。それにそれは晴樹様が望んだことじゃないですか』
なに?
『ほら『幽霊』精一杯の苦痛を与えると』
それで俺の異能がそうなったの?
『まあそうですね』
……う~ん。まあこの異能で『幽霊』を苦しませることが出来るんだし悪くないよな。
あれ?それじゃあなんでヴァルフレアは倒れているんだ?
苦しませるだけじゃないのか?
『痛みに耐えきれなくて気絶したのでしょう。早く殺さないと起きますよ』
マジかよ!だからそういうことは早く言えって!!
俺は急いで放り投げた剣を拾いヴァルフレアに近づき剣の刃先を首元に当てる。
そういえば何気に俺生き物を殺すのは初めてじゃないか?それにこいつ結構知能あるし。
けどまあだから何だって話だよな。
ズブッ
俺は勢いよく剣を突き刺す。
「グオオオオオ……アアァァァ……」
痛みによって起きたヴァルフレアの断末魔があたりに木霊する。
叫ぼうにも喉に血が溜まって上手く叫べていないようだ。
「ハハハハッ 散々苦しめられた奴を殺すのって気分がいいな。異能の確認もあるしもっと苦しめてから殺した方がよかったか?でももう殺しちゃったもんはどうしようもないな」
『完全に悪役のセリフでは?』
「クハハハハハッ!」
クソッ!どうしてこうなってんだ。
重苦しい足音があたりに響いている。
俺の足音だ。
俺はヴァルフレアの死体を持ちながら町に向かっていた。
なぜかというとヴァルフレアは死体も高く売れるらしいからだ。
だが今になって後悔している。
だってものすごく疲れるんだよこれ!!
象くらいある物を背負い歩いて五時間の道のりを走っているのに疲れないわけないじゃないか!
けどエシィに近づいているおかげか力が増えているし、もう森を抜けるとこまで来た。
あともうひと踏ん張りだ。
後は全力で走って早く終わらせよう。
俺は最後の力を振り絞って走りだし町に向かう。
もうすぐ門に着く。そう思った時、危機察知が発動した。
突然のことで混乱し立ち止まったのが悪かった。
次の瞬間、急にヴァルフレアの死体が重くなったかと思うと耐えきれず押しつぶされる。
「グエッ」
カエルが押しつぶされたような声を出し俺は死体の下敷きになる。
「ふう~危なかったわね。もうすぐで町に入られるとこだったわ。でもなんでこんなとこまでヴァルフレアなんかが来ていたのかしら?」
「さあな。でもこんなにあっさり倒せてよかったじゃねえか」
「……た、す……け……て……」
肺が押しつぶされていて小さな声しか出ない。
「おい。なんだ今の声?助けてって聞こえなかったか?」
「私も聞こえたわ。あっ!誰か下敷きになってるわよ!?」
「ほ、ほんとじゃねえか!早く持ち上げろ!!」
「くっ、これ本当に重いわよ!ボード!そっちを持ち上げて!!」
ああ、意識が……
「あれ?この人昨日の人じゃない?ほら魔紋証作りに来たイケメン」
「無駄話してないでちゃんと仕事しろ!!」
もうダメだ……
「はっ!?」
目を開けると見慣れない天井が映り込んできた。
今日で二回も気絶しているぞ!
くっ、頭がズキズキする。
「あ、起きたわね」
誰だろう?
起きたばかりで霞んだ目が慣れてくると見覚えのある顔だった。
そう昨日魔紋証を作ってくれたお姉さんだ。
「ここは?」
「ここは私たちの休憩所よ。私たち門番は交代制で門に立つ人と休憩する人の二人で回しているのよ。私が6時間、ボードが12時間で残りの時間は門を閉めているわ。あっ、あとヴァルフレアの死骸は部屋の外に置いてあるわ、運んでくるの大変だったのよ」
ちゃんとヴァルフレアの死体運んできてくれたんだ。
良かった今までの努力が無駄にならなくて。
「さっきはごめんね。ヴァルフレアが町を襲いに来たんだと思って……」
「まあ勘違いさせるようなことした俺も悪いですよ」
「そ、そうよね!私は町の危険を排除しただけだもの!」
「なに馬鹿な事いってんだ」
声がした方へと振り向くと、扉の前にあのいかつい門番の人が立っていた。
「ボ、ボード!?何でここにいるのよ。」
「小屋の方で話し声が聞こえたから起きたんじゃないかと思って謝りに来たんだ。改めてよお、すまなかったな兄ちゃん」
「あ、大丈夫ですよ。そんな大したことなかったし」
「俺たちに出来ることなんてねえが謝罪ぐらい受け取ってくれや」
「は、はい」
「私は出来ることあるわよ。私こう見えて強いんだから!ハルキ君が危ないって時に助けてあげるわ!」
「へえへえ、そんなに強いならもっと長く門番やってくれねえのか?」
「強いからここぞって時まで休むのよ!」
「そのここぞって時に失敗していてよく言うぜ」
「むう~!」
なんかほほえましいな。
「二人はどのくらいこの仕事をしてるんですか?」
「どのくらいだったかなあ?確か俺が8年でアーネッタは5年だったかな?」
あっ、お姉さんの名前やっと分かった。
「へえ~そんなに長くやっていて辞めたいとは思わないんですか?」
「やめたくても辞められねんだよ。俺らがこの仕事は罰だからよお」
「……えっ?」
「なんだあ?そんなことも知らねえのか」
「ハルキくんは山奥の村に住んでいたんだって」
「へえそうだったのか」
「ちょ、ちょっと待って下さい。罰ってことはあなたたちは犯罪者ってことですか?」
「まあそうだな」
「……」
「ねえ、ちょっとボードが変なこと言うからハルキ君引いちゃったじゃん」
「んなこと言ったって事実だろ。 ああ、そんなに警戒しなくてもいいんだぜ俺たちは町を守る時にしか殺生が出来ねえっつう制約だからな」
制約なんてものがあるのか。
破ると何かしらのペナルティがあるのかな?
それとも破ろうとしても体が動かなくなるとか?
「さすがに王都とかの大都市は犯罪者じゃなくてちゃんとした門番がいるが地方とかだとこんなもんだぜ」
「そうなんですね」
「そういえばボード、門を離れて結構立つけど大丈夫なの?」
「まあ門を閉めて来たから変な奴が入ってくることはないだろう」
「もう閉めて来たの?いつもより早くない?」
「一時的に閉めてただけだ。もう戻るからそん時に開ければいいさ」
そういってボードはドアを開けて門へ向かう。
「なんで門が閉まってるんじゃ?おーいそこに誰かいるなら開けてくれんか!」
門の向こう側から声が聞こえた。
古めかしい言い方だが幼い女の子の声だ。
「おや? 誰か来たようだ。待っているようだし早く開けに行こう」
「むむ、誰もいないのか? ええい、こうなったら力ずくじゃ」
力ずく?
この門5メートルくらいあるデカい門だぞ。
ボードが閉められたのも謎だが人の力じゃどうにも出来なくないか?
俺はできるけど。
ドガァァァンッ!!
次の瞬間門が轟音を立てはじけ飛んだ。
「へっ?」
「あ?」
「えっ?」
「なんじゃ人がいるじゃないか。早く開けてくれっとたら壊すこともなかっただろうに」
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
★エレンが出来るまでの感動の物語
「ああもう!なんで異能なんか作ちゃったかな?忙しくて下界を見る暇がないじゃないか!」
「あっ!そうだ。僕の代わりに異能を与える人がいればいいんだ!」
「名前はエレンにしよう。従順な人格になってくれればいいな」
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
目標
1、孤児院のみんなとの再会
2、幽霊への復讐
3、エシィを守る




