クイズ好きの妻からの挑戦状
とある会社のランチタイム。
いつも通りお弁当のふたを開けた係長のたかしは固まっていた。
原因は、妻が作ってくれたお弁当と一緒に入っていたメッセージにあった。
それには、「さて、今日のテーマは何でしょう? わかったらメールしてね」と書かれていたのである。
「はぁー……いつものことだが、飽きないのか、あいつは……」
そう、たかしの妻はクイズ好きであり、毎日お弁当の中身のテーマを決めてこちらに聞いてくる。
たかしはため息をつきながら、もう一度お弁当の中身を見る。
お弁当は2段になっており、1段目の中身は、
・こんにゃくとごまのあえ物
・牛肉とほうれん草の炒め物
・卵焼きは、通常のとのりで巻いてあるのと2種類
・あらびきソーセージ
・ミニハンバーグ
・かまぼこ
・にんじんのバター炒め
・竜田揚げ
2段目はそぼろご飯であり、細いのりで3本線が引かれていた。
そして、デザートなのであろう、別の容器にリンゴの皮をウサギの耳のように切って2個入っていた。
「昼休みの時間はそんなにないから、食べながら考えるしかないな」
「あれ? 先輩、なに難しい顔しているんですか?」
たかしが考えを巡らせていると、後輩の高橋が部屋に入ってきた。
「実はな、妻がお弁当のテーマを決めてて、その答えをメールで送らないといけないんだ」
「あぁ、それで難しい顔していたんですね。どれどれー?」
高橋はたかしの隣に座り、お弁当の中身を見た。
「へぇー、これはまた考えられていますね」
「なんだ、もうわかったのか!」
「はい」
「なら、早く教えてくれないか。昼休みがなくなってしまう!」
「いいですけど、先輩はそれでいいんですか?」
「何がだ?」
「せっかく奥さんが考えて作ってくれたのに、僕が教えてもいいんですか?」
「ぐぬぬ……なら、ヒントだけでもくれないか?」
「いいですよ。じゃぁわかりやすいのからいきますか」
高橋はそう言って、デザートのリンゴを指さした。
「これ、何に見えますか?」
「何って、ウサギだろ?」
「そうです。これはそのまま考えてもいいですね。そして、卵焼きが2種類。これはそのままの意味と、卵焼きにのりでしま模様にしてあるのがヒントです」
高橋に言われて、たかしはもう一度考える。
「卵から連想できるのは、ひよこか鶏か?」
「当たりです。じゃぁ、しま模様の方は?」
「しま模様と言えば、しまうまとか、あとは虎か!」
「その通りです、先輩。あ、わかったらどんどん食べないと時間がないですよ?」
「わ、わかってるよ!」
たかしは慌てて卵焼きとリンゴを食べた。
「あぁー、デザートだったのに、食べてしまった……」
「ドンマイです、先輩。さぁ、どんどんいきましょう!」
そして、次に高橋が指さしたのは竜田揚げだった。
「竜田揚げだな」
「これは漢字を思い出してみて下さい」
「漢字なら……これは辰か!」
「正解です。牛肉の炒め物もそのままですね。ほうれん草が何かはわかりませんけれど」
「そろそろご飯の方も考えるか。茶色でこの3本線がヒントなんだろ?」
「よくわかりましたね。じゃぁ、それから連想される動物は?」
たかしは腕を組んで考えていると、はっとひらめいた顔をする。
「そうか、ウリ坊か!」
「よくできました。あと、かまぼことソーセージですが、何か動物になるよう切りこみが入れられていますね」
「うーん……ちょっとわかりづらいが、これは羊と犬か?」
「そうです。奥さん頑張りましたねー」
「ちなみに、このハンバーグは何だろう……」
「これは、ケチャップで模様を描いているのがヒントです」
「うーん、もしやと思うが猿のおしりかな?」
「ふふっ。可愛らしいところありますね、奥さん」
「よし! ここまでくればもう後はわかるぞ。にんじんは馬で、こんにゃくがねずみ、もしかしてほうれん草がへびなんじゃないか? テーマは干支だ!」
「大正解です、先輩! さぁ、早く奥さんにメールしないと!」
「おぉ、そうだった。ありがとうな、高橋」
「いいですよ、また面白いことがあれば教えて下さいね」
それから、たかしは急いでメールを打った。
たかしの家では、妻のみゆきが後片付けをしていた。
すると、みゆきのスマホが鳴り、1通のメールが来たと」入っていた。
開くと、夫のたかしからで、お弁当の解答のメールだった。
みゆきはくすりと笑い、鼻歌を歌いながらキッチンに向かう。
「さーて、次はどんなお弁当を作ろうかしら?」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!