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幽霊黎明紀:昇幕 (Curse Rose For Rage) 旧作品群  作者: COSMOS218923
西海岸編 (1-2)
9/10

5:堕天使の煉獄 パートB (Purgatory In Fallen Angel Part B)

 俺はどうしても納得できない。自分のかつての親友がこのような形で再会するなど。

 俺もどうしても納得できない。(いにしえ)の親友が大量殺戮者(マスマーダラー)となってしまうなど。

 誰もどうしても納得できまい。自分の行動が群衆の命運に影響することを。

 彼はどうしても納得できない。自分が本当の悪であり滅されるべき存在など。

挿絵(By みてみん)

 人は中学に入るあたりで、概ねの人格は定まってしまうとされている。だから、親にとって、教育の段階こそが、最も多忙な時期と言える。

 俺の親は、今は亡き姉となぜか生き残ってしまった兄のおかげで、俺を育むのにそこまで苦労はしなくて済んだらしいのだが、姉を育てる時は、家族総出で世話をしていたのだろうか。少なくとも俺は、人種差別主義者(レイシスト)に目を逸らせば、順風満帆な幼少期を過ごせたことは間違いは無い。

 自分の旧友の親は、我が家の程まで怠惰ではいられなかったらしい。非情な父の幾度もの転勤により、いつも住処を転々としていた。焼畑農業を生業とする普通の遊牧民と、本質は合っているのかも知れない。そこに暮らす存在と出会い、いづれ別れるのだから。


 旧友の名はロバート・スミス・ジュニア。本当に、何処にでもいそうなありふれた名前で、彼と同姓同名の名前が出る度に、俺は常にその人の肌の色と声のアクセントを気にする。というのも、彼は黒人でイギリス訛りで喋るのだ。そうだ、彼は()()で、()()()()()()で喋るのだ。

 不幸なことに、彼はそこに暮らす人()()()暮らす悪魔によって、民に望まれた未来への道を歩むことができなかった。彼はLAの弱小ギャングの(おさ)にまで堕ちたのだ。

 「ほなおらおばんざいくってかえるわ。」「わいはかまへんで。」とか言う会話が年中聞こえるのだ。彼もさぞ耐え難き苦痛を味わっていたはずだ。そうやって彼は、内なる人々への憤怒を、『最も賢いダチョウと良い勝負ができる程度の脳味噌』の中に、日に日に増幅させていたのだろう。


 さて、俺がそれを知るまでの経緯を教えよう。

ーー

 「思ったより、涼しいんだな、ここって。」

 「え、そっちの方が暑いの?」

 エミーが訪ねてきた。出身地について訊いていなかったが、ここで生まれ育ったのだろうか。俺は回答に困る。何故ならその「回答」により、人を殺めたことが一度あるからだ。

 俺は回らない舌をなんとか動かし、エミーの出身地がLAかを問うた。返答はYESだった。どうやら彼女はサンフランシスコ出身で、引っ越しで南下したようだ。

 「出身地」と言えば、まだ緑の出身地も聞いていないな。

「おい、緑。何処から来た?」

「教えるか。」

 不親切な。


 そうやって歩きながらの会話が飽きてくる頃に、やっと今日に強襲する建造物についた。この建物は廃墟でストリートギャングに不法占拠された場所であり、口に布を巻いた男のいる、いかにもなギャングの拠点である。

 俺は仲間と作戦のおさらいをした。俺が侵入して内部情報を探ってデータをブン取る。そして出る時は裏口に用意してもらった自家用車で逃げる。

 「どうにかなる」という根拠の無い自信が湧いてきた。残念なことに、その「根拠の無い自信」はまさに、(はり)の無い建造物と同じであり、すぐに倒壊した。つまり、俺は侵入が直ぐにバレたのである。

 しかし、それが思いがけない再会となった。そうだ、『最も賢いダチョウと良い勝負ができる程度の脳味噌』を持つあの男との再会だ。


 「カスプ?」

「あ、やべ、待て、え?」

声が耳を伝い、俺は初任務の失敗を悟ったと思えば、それはもう懐かしい声だった。俺は体を(ひるがえ)し、かと思えば自分の視覚を疑い、混乱の叫び声を辺りに撒き散らしたのだ。

 「もしかして、あのボブか?」

「ああ、あの『最も賢いダチョウと良い勝負ができる程度の脳味噌』を持ってるあのボブだよ!」

「お前、こんなとこで何してんだよ。」

「自分の領域内にいる奴に『こんなとこで何してる』なんて失礼な。俺、今ギャングのリーダーやってんだよ。」

「ギャング?」

 当時の俺は理解に苦しんだ。なぜ自分の小学校時代の友人が、このような形で再会してしまったのか。ただでさえ自分は侵入者だ。おそらくその思惑がバレたとしても、彼は許すとはいえ理由を訊いてくるはずだ。幼少期の、少々(ぼか)された記憶を(かんが)みてもそれは確かである。

 「あ?ンだコイツ?」

なんか素行の悪そうな黒人が顔を出してきたよ。

「俺の友人だ。コイツを中に案内して飯を食わせる準備をしとけ。」

「はいよ。」

 例の黒人は施設の中に入って行った。

 これは良いチャンスかもしれない。ネタがわんさか取れるだろう。俺はひっそりと携帯のボイスレコーディングをオンにした。


 「で、お前はここで何してんだ。店の強盗か?」

「まあ、そんなこともするな。」

「どうしてお前が。俺は気になって仕方がないぞ。」

「端的に言えば、親に捨てられたんだ。」

親が自分の子を捨てるのか。俺は半ば信じられない。そんな罰当たり行為を神は許すかどうか考えればすぐ分かることを、何故年上の人間が平気でやれるのか。

 俺は受け止めることに時間を要した。そしてどのような返事をしたら良いのか、本当に分からなかった。そのせいか、俺は無意識に素っ頓狂な声を出してしまった。ボブはその声を聞いてやっぱりと言いそうな表情を作っていた。

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