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吉田由美子の記憶B
水島雄一の身体になってから3ヶ月が経ち、肉体にも生活にも慣れた。私が自分自身の生まれ故郷へ戻らないのには幾つか理由があった。一つは純粋に渡航費がないこと。(道徳上、私が水島雄一の身体になる前にあった貯金には手をつけないことにしていた。)
二つ目は大学とアルバイトで忙しく、それどころではないということ。私が元の頃の高校の担任の先生の話では大学は人生の夏休みと聞いていたがとんでもない。夏休みと冬休みはそれぞれ2ヶ月もあるそうだが少なくとも夏季休暇に入るまではまとまった時間がとれそうもない。
そして三つ目。これがもっとも大きいことなのだが東京の大学生になると言うことは私が憧れていた未来図でもあったのでもう少しだけこの生活を楽しみたいのである。男であるのは少々難だが、文句ばかり言っても仕方がない。もう少しばかり社会科見学を楽しもうと思っている。