時をかけた大掃除
今朝、ステビアの元に行こうとした来太が玄関の戸を開けると、何故か仏頂面をした乃亜が猫の姿で家主が外に出てくるのを待ちか構えていた。野良猫は近所にも沢山いたが、瞳の色がハッキリと双方違う猫はそういない。蹲み込んできちんと「おはようございます」と声を掛けると、その猫は遠慮がちに近づいて尻尾で来太の腕を撫でた。ふわりとした感触が滑り、ゾクリとする。思わず手を伸ばそうとすると、キッと睨んで鋭い歯を見せた。
「あ、あはは……すみません、調子に乗りました……」
引っ込めた手を降参と言うようにひらひらと揺らすと、目の前の猫は少し先を歩いて来太の様子をじっと見つめた。
「えぇっと……これって、お迎えに来てるとか……でしょうか?」
「ふにぁっ」
恐る恐る来太が猫に話しかけると、相変わらずの仏頂面のまま猫が鳴く。さっさとしろといわんばかりの尻尾の動きを見て、来太は苦笑いを浮かべながらその猫について行った。
結局、行き着いた先は予想通り鯛焼き屋『すいまぁ』だった。乃亜は戸をガリガリと引っ掻き、来太に開けさせると、玄関に入るなり元の姿に戻った。
「普通に呼びに来てくださいよ」
「うるせぇ。俺の勝手だろ」
そう言って部屋の奥に入って行き、もう一人の家主に声を掛ける。
「おい、連れてきたぞ」
来太が玄関でブーツを脱ぎ、ステビアのためにと思って作ったサンドイッチの入った鞄を下ろすと、どたどたと忙しない足音を立て、埃まみれの紫苑が玄関にやって来たのだ。
「お、おはようございます……。その、紫苑さん……凄い事になっていますね」
「おはようございます、来太くん。お見苦しくて申し訳ありません。その、少々お願いがありまして……」
なんでも薬の調合に必要な資料を探そうとしたが、全く見つからない上に足の踏み場のない部屋を更に荒らしてしまったという。乃亜に片付けを手伝って貰う事を考えたが、急いで配達に行って貰う予定もあったため、白羽の矢が来太に向いたらしい。ステビアへサンドイッチを届ける以外にやる事も無かった来太は、二つ返事でそれを了承したのだった。
「すみません、戻りました」
そう謝っておきながら、申し訳なさそうに見えない表情で紫苑はさらりと言った。長い髪を綺麗に結い上げ、普段見慣れないティーシャツ姿に着替えた紫苑は、休憩にしようと冷たいお茶を持って戻ってきた。つい先程まで一緒に作業をしながら探し物を探していたのだが、配達から帰ってきた乃亜が必要資料を見つけるたびに廊下をバタバタと行き来する埃だらけの紫苑を見て、彼の着ていた白衣から全ての服を剥ぎ取り着替えさせたのだ。
「あれ。珍しいですね、そんな格好」
「どうせ汚れるのなら終わってから着替えた方が良いと思ったんですよ、でもノアくんってば凄い目で睨むんです……埃を少し落としただけなのに」
紫苑は大袈裟に唇を尖らせながら言った。彼の言う『少し』は自分や乃亜の感覚とだいぶ違う事が分かり、来太は苦笑いを返す。
「たまには良いじゃないですか。それにその方が動きやすそうです」
紫苑の着ているティーシャツはいかにも彼が選びそうなご当地関係グッズの一つだろう、おかしなイラストと謎のポエムが目についた。
「はい。髪も綺麗に結ってもらいました。器用ですよねぇ、ノアくん……。ってすみません、来太くんにばかりやらせてしまって。必要な資料はある程度見つけられたので後は私も全力で片付けますからっ」
我に帰った紫苑は慌てて足元の本を端に寄せる。どうやら端に寄せることを整理整頓と勘違いする、典型的な掃除の出来ない人物らしい。
「いえ、今日は依頼がなかったので、出来る限りお手伝いします!」
もらったお茶を飲みながら来太は意気揚々と答えたが、明らかに数時間で終わる散らかり方ではない。依頼が無くても今日だけで終わるとは考えられない状態だ。それでも来太は黙々と何年も蓄積され出来上がった本や書類の山をファイルにまとめて本棚へ戻す。この単純かつ膨大な作業にかれこれ半日以上かかっていた。
「お人好しもその辺にしておけよ。その部屋、やたらと怪しい本とか危ない本が転がっているからな。シオンは先にそっちを片せ」
紫苑の服を洗濯し終えたのであろう乃亜は、部屋の入り口に背をもたれて立っていた。顎で紫苑に床に積み上がった分厚い本を片すよう指示を出す。部屋に一歩も入らない辺りが、彼の言葉に信憑性をもたらした。
「もぅ。別に怪しい本なんて有りませんよ。時々噛み付いてくる魔本にはちゃんとベルトで締めていますからっ」
「え、そんな本があるんですかっ」
「えぇ。例えば、こちらとか」
そう言って取り出した本はどうやって開くのか見当もつかない程にベルトを何重にも巻き付けられていた。
「やめとけ。俺だって扱えないんだから、人間にそんなもの渡すなよ」
溜息を漏らす声が来太のすぐ後ろで聞こえた。紫苑の見せた怪しい本と来太の間に立ち、部屋の主人を嗜める。
「えぇっ、面白いのに」
「遊びで魔本を扱うなっつーの。それに…お前も、変なモノに興味持つな」
「すみません…」
「コイツ、試したいと思うことはなんでも試すヤツだからな。五体満足で帰りたいならこの書類整理までにしとけ」
「え、そしたら殆ど私が一人でやらないといけないじゃないですか!」
「当たり前だろ、お前の部屋なんだからなっ」
「酷いっ、ノアくんの意地悪っ!せめて手伝ってくださいよっ」
頬を膨らませ駄々を捏ねるが、乃亜は舌打ちだけ返した。部屋の外には汚された廊下を水拭きするために用意されたバケツと雑巾が見え、来太は上手いこと助け舟を出す事が出来ない。
「と、とりあえず休憩がてらサンドイッチでも食べましょう。俺、持ってきてるので」
来太はそう言って立ち上がった。ステビアの為に作ったが、結局持って行けそうにもない。持ち帰っても食べ切れる量でもないためこれ好都合と切り出した。すると、紫苑の先程のしょぼくれた顔がみるみる明るくなっていく。しかしそこに追い討ちをかけるように乃亜が口を挟んだ。
「その山になっている本を本棚に入れてからだな」
「はぁい……」
尻切れのような返事をした紫苑は、先程部屋の隅に寄せた山を片付け始めた。
窓から差し込む光が赤みがかり、日が暮れる少し前。あれから数時間は経ったが、部屋の片付けはようやく半分が終わったところだった。呆れ返った乃亜も参戦したが、足の踏み場を作ったぐらいで良い働きだと言える。
「終わりが見えませんねぇ……」
「誰の部屋だっつーの」
乃亜は悪態をつき、いつから机の上に置かれていのたかも分からない灰皿を引き攣った顔をしながら持ち上げた。
「こっちの書類の山はだいぶ崩れたのであと少しですよ」
消えた書類の山の裏にはまた本の山が現れた。苦笑いをしながら来太はその本を紫苑の方に運び出す。
「お前、まだ続く腐海を見てよくそんな事言えるな……」
「失礼なっ、腐海じゃありませんよ。私は何が何処にあるか把握しているんですから」
「へいへい。片付けられねぇヤツの常套句な」
本日何度目かの溜息をついた乃亜は、発掘した灰皿の灰をゴミ袋に入れ、台所に持って行った。
「ノアくんはいつもあんな風に意地悪を言うんですよ」
「あはは、本当に仲良いですよね」
来太が本の山を持ち上げると、一番上に乗っかっていた本が滑り落ちた。
「あ、すみませんっ」
慌てて紫苑に抱えていた本を渡し、落としてしまった本を拾い上げる。かなりの埃をかぶっていて、表紙を見ても何の本かはわからない。埃を払うとだいぶ古い日付が記されているのがわかった。
「これって……」
「ん、何ですか?」
渡された本を本棚へしまっていた紫苑が、来太の声に振り向いた。
「あれ……?来太、くん?」
振り向いた所でほんの数秒前には来太の声が聞こえていたはずだった。しかし、紫苑の後ろには来太の姿はなく、ただ一冊の古い本が開かれたまま床に落ちていた。
ここは何処なのだろうか。頭痛がして、目の奥が痛い。船酔いに近い気持ち悪さが喉の辺りを行ったり来たりする。つい先程まで、紫苑の部屋の片付けをしていたはずだった。移動した覚えもないのに、来太は何故か外に出ていた。
辺りを見渡すと、そこは小さな集落で明らかにマツリダの市街地でもなければ近所でもないことが分かった。小さな川で水車が回り、その近くに小さな煉瓦造りの家々が建っている。畑もあるが、大した大きさではない。小さな村なのが見て分かった。道も舗装されておらず、乾いた土の道が続いている。村の周りは木々の生茂った山ばかりだ。
変な魔本に触れたのだろうか。埃を払っただけなのに。手のひらを見つめると、先程払った埃が少しだけ指の先に付いていた。
ぼうっと指先を見つめていると、背後から小さな子どもたちが、わぁっと騒ぎながら走ってきた。
「うわぁっ」
いきなりのことで驚いた来太はその場に尻もちをついた。まだ船酔いに近い感覚が抜けていなかったため、この衝撃はかなりのダメージだ。小さく唸りながらゆっくりと立ち上がると、背後からまた誰かが歩いて来るのが見えた。
『ったく……坂道は危ないから走るなっつってるだろ!』
聞き覚えのある声だった。来太が振り向くと、黒い髪に毛先だけが真っ赤に染まった少年が立っていた。
「え……の、乃亜さん?」
しかし、少年は来太に目もくれず坂を足早に歩いて先を行った子どもたちを追いかけた。かすめるように至近距離を通って行く。砂埃が舞って、来太の足元に小さな煙が立った。
「わぁっ」
来太は思わず目を瞑る。目を開けた頃には足の速い彼は人型から犬の姿になり村の入口で子ども達を抜いていた。あまりの速さにポカンと口を開けて暫く固まってしまったのだが、来太は慌てて坂を駆け下りた。
あの変化は確かに乃亜である、多分。あの見た目であの能力を持つ人は彼しか浮かばない。妙な違和感があるのは何故だか分からず、とにかく彼にここは何処かを確かめる必要があると踏んだ。
「乃亜さぁんっ!乃亜さん、あのっ!」
来太の大きな声が村に響く。だが、音だけは響くのに誰も来太の方を見ようとはしない。
「あれ……?」
もう一度、来太は乃亜の名前を呼んだ。しかし、振り向くものは誰一人としていない。
「……えぇっと、なんでだ……?」
冷や汗が頬を伝った。腹から大きな声を出したはずだった。それも、この村に響くだろう程に。それなのに誰もこちらを見ないのは余程警戒心が高いのだろうか。だとしても、彼らはまるで何も聞こえなかったかのように自分達の時間を過ごしていたのだ。
あれから彼らの肩を叩いてみたり、わざと前を歩いてみたりをした。反応は全く変わらず、やはり彼らからは来太の姿が見えていないことが分かる。来太が人との間に割って入る際に、彼らのすぐ近くを少し強めの風が通ったように髪や服の袖が揺れる。
「そんな……これじゃ、ここが何なのか分からない」
思わず一人で声を漏らしても、誰の耳にも届かない。
どうしてこんな所に……。
『ノアちゃんが怒った!』
ギャァっと子どもが数人、泣きながら大きな声を出した。来太は思わずそばに駆け寄って「大丈夫かい?」と声をかけるが、その子ども達からの返答は無反応で終わった。
『当たり前だろ、ダメだって言ってることをやるのが悪い』
来太のすぐ後ろで乃亜の声がする。丁度泣いた男の子との間に挟まれてしまった。
『お兄ちゃん、だからって乱暴に怒らないでよ』
『へぃへぃ。俺が悪者かよ……ったく、言うこと聞かねえなら今日のおやつは全員抜きだからな』
『えぇーっ!酷いよ、独り占めだっ』
『ノア兄ちゃんってば強欲』
『てめぇら反省してねぇな』
来太のすぐ近くでそんな会話がなされている。その様子をよく見ていると、先程感じた違和感が何となく腑に落ちた。口調は変わらずだったが、いつもの鋭い眼光は柔らかく、身長も来太が知っている乃亜より低い。そして何よりも顔つきが幼い上に、目立つ傷痕も無く、目の色があの特徴的なオッドアイではない。
「これは……昔の、乃亜さん?」
何年前かは分からない。人間と生きる年数の違いで計算が難しい。でも見たところ人間でいう、十五歳前後だろうか。
まじまじと見つめていると、急に頭の奥がズキンと痛み出す。さっきの頭痛に加えて鈍痛がした。
「う、あぁっ……!」
破れるような痛みに身悶えて、その場にしゃがみ込む。後頭部の痛みで目が飛び出しそうに感じ、力いっぱい目を閉じた。身体は宙に浮かんだような不安定な感覚になり、船酔いに似た気持ち悪さが再び振り返す。
なんなんだ、ここは……!
はやく、はやく元の場所に戻してくれっ!
すると、急に身体の浮遊感が無くなった。気持ち悪さとおかしな頭痛はまだ継続していて、気分が悪い。力強く目を瞑っていたせいで、ゆっくり目を開くと視界がぼんやりとしていた。
「……あれ、乃亜さんが……いない?」
ぼやけた視界が晴れていき、だんだん目が慣れると気がついた。目の前にいたはずの少年は姿を消していた。
きょろきょろと辺りを見渡すが、人っ子一人外に出ていない。来太はしん、と静まり返った村の中心にポツンと一人立っていた。沢山いたはずの子ども達の姿も見えず、川の水車の弾く水音だけが聞こえている。
「なんだ……」
空は曇り、嫌に暗い。さっきとは様子の違う村の姿に背筋がゾクリとした。
とにかく、誰か人を探そう。
来太はすぐ近くの家の中を覗き込んだ。カーテンの隙間から中の様子を伺えたのだが、誰の姿も見えない。隣の家も、その隣の家にも誰も居なかった。一軒ずつ家の中を確認して回ったが、人の姿はどこにもない。ますます気味が悪く、来太はゴクリと唾を飲み込んだ。
さっきまでの活気ある村にいた人が全く誰もいないなんて。こんなこと、あり得るのだろうか。近所でお祭りでもやっているような雰囲気もない。本当に一瞬で誰もいなくなったようだった。
宛てもないまま、来太は再び最初の山道の方へ足を運ばせた。きっと紫苑のせいでおかしな夢を見ているんだろう、目が覚めればきっと元いたあの部屋にに戻っているはず。そんなことを繰り返し思いながら山道へと足を踏み入れる。急な坂を登り、村全体を見渡せるところまで来ると離れた木々の近くで話し声が聞こえた。
『一足遅かった……ということですね』
『大方金に目が眩んだ人間がゲロったんだろ。今、情報を集めさせている。さっさと終わらせて帰ろうぜ』
『そうですね。私達の研究所の方も心配です』
『まったく……虫唾が走る』
来太の居る場所からはその姿を見ることが出来なかったが、はっきりと話し声は聞こえた。それも、また聞き覚えのある声と聞いたことのない声。来太はその声の方へ進もうと一歩足を動かすと、またあの浮遊感が襲ってきた。
「痛っ……」
膝をつき、崩れ落ちる。破れるような痛みが先程よりもはるかに強い。こめかみを抑えていても緩和されず、自然に涙が流れ出した。唸るような声を漏らしながら蹲る。
痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。なんなんだこれは、なんなんだ、ここは。
ぐるぐると目が回り、視界がぼやけた。薄目を開けて見上げた空はぐにゃりと曲がる。
あぁ、もうダメだ…。
来太は視界の歪みに限界を感じて、その場に倒れ込んだ。
「来太くん、来太くんっ!」
肩を揺さぶられ、頭上から声がした。ゆっくりと来太が目を開けるとそこには青い顔をした紫苑と乃亜が見える。
「気が付いたか」
「あぁ、良かった……!」
ほっと胸を撫で下ろす二人に支えられながら身体を起こすと、頭は重く感じてぼうっとしたままだった。
「俺、いったい……」
来太はこめかみを片手で抑えながら口を開いた。混乱するのも無理もない。まったく違う世界を見てきたような気がする。目の前の乃亜を見る程、ほんの少し前にいた世界の幼い顔付きの乃亜は別人だと感じた。
「すみません、私が放置していた魔法日記に触ってしまったようで……。なんとかページをめくりながら逆さに振ったりしてみたのですが」
紫苑は来太がトリップする前、足元に落として拾い上げた分厚い日記帳を見せながら言う。床には砂っぽい埃が散っていて、余程勢いよく振り回されたのが分かる。
なるほど、それで浮遊感や目が回る感覚になったのか……。
来太は思わず苦笑いをした。
「なんの日記なんだよ、それ」
「私の古い交換日記なので、シークレットです」
乃亜は中身を知らないようで、日記帳を取り上げようとしたが、手の長い紫苑によって上手くかわされていた。来太はその様子を不思議そうに見つめた。その日記の中で幼い乃亜を見たのだ。では何故それが『シークレット』になるのだろうか。
その視線に気が付いた紫苑は、ふふふといつものように静かに笑った。
「来太くん、この日記の中で見てしまった事は忘れて良いです。私もあまり好きな記憶ではないので」
「……はぁ」
来太は気の抜ける返事をした。好きじゃないのに何故こんなにも丁寧に残しているんだろうか。ぽかんとした来太の横で乃亜は舌打ちをし、しゃがんでいた足をゆっくり伸ばした。
「とりあえず……お前はこっち。立てるか」
「あ、はい」
来太は立ち上がり、紫苑の方を見た。
「私の手伝いはもう大丈夫です。こんなに床も見えていますし」
にこりと笑ってそう言うが、多分ものの数分で残り半分の片付けを切り上げるつもりだろう。
「ごめんなさい、途中で……」
「気にしないでください。さ、向こうに美味しい鯛焼きがありますから。来太くんのサンドイッチも是非」
「そう……ですね」
来太はぺこりと軽く頭を下げ、乃亜に連れられ居間へ向かった。彼ら二人が居間へ移動したのを見送った紫苑は、ゆっくり息を吐くと部屋の奥にある棚からアルコールランプとマッチを取り出した。
「やれやれ…持ち出した私もいけませんが、全部炭にしたはずだったのに……。まだこんなのが残っていたなんて」
マッチを擦り、アルコールランプに火をつける。パラパラと日記帳をめくりながら紫苑は本の端からランプの火をつけた。
「遅いぞ、ポンコツっ!」
「すみません……今日はちょっと色々ありまして……。あ、これはお土産です」
「……なんで乃亜の鯛焼きなんだ。オレはハムたまチーズサンドをずっと待っていたんだぞ!」
「あははは。これがその……依頼料だって言われたので……」
「ったく……明日は絶対絶対絶対絶対絶対絶対にハムたまチーズサンドだからなっ!」