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中間テストが終わったら告白します

作者: 黒楓

箸使いが美しかった。


本当だよ。


日当たりのいい学食のテーブルでの光景を私、何度も()()()()してるんだもん。


カレ…


日替わりの…サバの塩焼き定食をね。


箸先で上手に身をほぐしながら食べるの。


お友達と談笑しつつだから…ピンっ!て伸ばしているわけでは無く、スーッとした背筋で…。それがまたいいの!!


私、上に置かれたどんぶりの中のラーメンが延びてしまうんじゃないかと思われるくらいに、トレイを握り締めたまま突っ立って見とれていた。


康子が…その談笑グループの一人だったので放課後、ドキドキしながらカノジョに聞いてみた。


「今日、学食で焼きサバ定を食べてたコとひょっとして付き合ったりしてる??」


康子は…

「なにそれ?? 冗談でもあり得ないわ~」とケラケラ笑ってたけど…


私が泣きそうなくらい真剣だったので…


カレについて知ってる事を教えてくれた。


カレは…康子とはクラスは違ったけど同中のコで…名前は安藤正博くん。 中二の妹さんが一人居て…部活は…子供の頃から習っていたピアノの腕を買われてジャズ研へ入部… そう!ケイオンじゃない所が…カレらしい!!…大人っぽい!!


一人で盛り上がってニヘラニヘラしていると…


「ひょっとして一目ぼれ??」

と康子にツッコまれて


私は“金時の火事見舞い”になり

「ササニシキ…」と頭を振った。


そして…

“三度の飯より色恋沙汰が好き”と自負する康子の全面的なサポートの元、私はマサヒロくんに超絶アプローチのしまくりで…ようやく校内デートまでこぎつけたのだ。


場所は我がクッキング部の活動拠点たる“調理室”


日時は2学期の中間テストの最終日 


ここで、カレのハートと胃袋ガッチリつかんで翌日の試験休みには本格的なデートに持ち込みたい!!

ハイ! 下心満載の私ですが何か??


私だって努力してるんだからね!!


『まずは食材集め』とばかり釣り好きのお父さんを猫なで声で籠絡して…テスト期間中にも拘らず昨日の日曜にサバ釣り行ってきました。


ええ!! 何もかも自分でやったよ!!


“サビキ釣り”から“活き締め”まで…


活き締めは…“サバ折り”って方法(サバのエラ蓋に指を引っ掛け、そのまま頭を上側に折り曲げる)で…そのヌルグニャバキ!に最初は背筋がぞぞぞぞ!!だったけど…


合間に勉強しようと持って行ったプリントを1枚も見る事ができないくらい…サバ、バンバン釣れちゃったから…そのうちに、頭バキバキ、バケツの海水でジャバジャバ血抜きと…加工場のおばちゃんみたいにサクサク作業していたわ。


こうしてどっさりゲットしたサバたちの中から厳選したものを三枚におろして毛抜きで骨取りして冷蔵庫に納め

これを今朝はクーラーBOXに積み替えて最終日の試験三教科の教科書やノートと共に電車へ乗り込んだ。

途中から乗り合わせて康子に

「アンタ! どこ行ってたの??」と呆れられたけど…


()()()ってホント!健気! ワタシがオトコなら絶対惚れる!!」とエールをおくってくれた。


さて、試験終了後…


クッキング部の佐々木部長が

「このエプロン!私のお気に入りだけど…絶対みつきに似合うから」と貸してくれた可愛いエプロンの紐と、ポニテのリボンをキュッ!と結んで、マサヒロ君をお招きした。


予めパットに入れてラップ掛けして置いた()()()()を冷蔵庫から取り出し、洗い清めた()()()の上に…


見事なサバの切り身をまず半分に切り、おのおのに十字と斜め2本の飾り包丁を…そこへお酒を振り掛け、しばらく置いた後に備え付けのIHヒーターオーブンへ投入。


その間はマサヒロくんと中間テスト談義…


私が…『2次関数の最大値・最小値 定義域の有る無しとかさっぱり分からない』と嘆くと、


「オレ得意だから…今度一緒に勉強しよう」って言ってくれて

私は天にも昇る気持ち!!


ちょうどその頃合いに…香ばしいにおいがオーブンから立ち込めて来た。



黒の和皿の上に大葉を敷いて皮がまだ沸々しているサバを載せ、大根おろしと櫛切りのレモンを添える。


「瀬戸さん!凄い!! この()()、写真に撮ってもいい?」


私は一も二もなく頷いて、写真を撮ってくれるマサヒロくんをニコニコ見ていた。


そして…


「いただきま~す」と箸を付けるカレの前に、ご飯とお茶をお出しして…


私は自分のサバくんには手も付けずにうっとりとカレを見る。


ああ!! やっぱり 箸使いが…素敵…


私はカレを写真に撮りたい!!


待ち受けにして


始終眺めたい


夜寝る時はおやすみの


朝、目覚めた時はおはようの…


キスを…


「えっ??!」

とカレが聞き返した。


ヤバっ!!


心の声、ダダ洩れていた???!!


「いや、あの違うの! 魚のキスも白身で美味しいって、お父さんがね…」


だけど本当に私が言いたいのは

こんな事じゃない…


コラッ!みつき!! お前の今日の目的は告る事じゃなかったのか?!!


心の声に押されて私は…


「という話じゃなくて!!…私が安藤くんの事を!! その… 好きって事です…ハイ、すみません…」


ああ、どんどん顔が…熱くなる…


マサヒロくんは箸を止めて…私の事をじっと見てくれる。


「ありがとう オレの為にサバを釣る所から…こんな事をしてもらう価値なんてオレには無いけど…」


ああ!! これ、きっと“お断り”パターンだ!! 私は一転、涙のクールダウン!!


と思ったら…

カレの顔が近づいて来て…

ほっぺにChu!!ってされちゃった!!


んーっ!んーっ! 

しばらく二人して“金時の火事見舞い”になってしまっていたけれど


『「明日の試験休みは」』

ってハモってしまって…


照れ照れデレデレに笑い合っちゃった!!


うう…私にはこのくらいが限界でございます…



ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!<m(__)m>

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― 新着の感想 ―
[良い点] さくさく読めて面白かったです!(*´▽`*)
[一言] 箸使いが綺麗なひと、私も好きです。特に男性だと惚れ惚れしちゃいます。 主人公がまさかのサバ釣りから始めるところに笑ってしまいました笑。 健気! 無事彼を射止めることができてよかったですね。 …
[良い点] 可愛かったでしゅ(*´▽`*) 青春にゃふふ~♡
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