表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/126

9回目 霊魂吸収

 気付けば二時間ほど経っていた。

 とうに登校時間は過ぎている。

 遅刻は確定だ。

 だが、トシキはそんな事どうでもよくなっていた。



 目の前にいる元凶の一つ。

 それを潰している。

 こちらの方が学校より重要だった。



 だいたい、学校は既に一回通ってる。

 卒業も済ましている。

 今更通う理由もない。

 通いたい理由もない。



 せっかく過去に戻ってきたのだ。

 やり直したい事がある。

 そちらを優先せねばならない。

 そして、それは学校に通う事ではない。

 そこにいる連中との人間関係を修復する事ではない。



 その第一弾として、まずは家にいる者を始末する。

 こちらの方が先だった。

 学校なぞに足をとられるわけにはいかない。

 そんなもののせいでやるべき事を投げ出せない。



 二時間の間に叩きのめした母親。

 このおぞましきバケモノの全身は、既に破壊し終えた。

 あとは最後の処理をするだけ。

 もう息も絶え絶え、あとは死ぬだけになったそれの。



 超能力を発動させる。

 体を壊して治した時のように。

 生命そのものに作用させていく。

 気力や霊力、といったものがトシキからのびていく。



 それが母親の生命を掴み、抜き出していく。

 苦痛にあえぐ母親の体がこわばる。

 それから今度は一気に弛緩していく。

 あらゆる力が抜け出ていったように。

 実際、生命に必要なあらゆるものが抜き出されていた。



 トシキによって生命力が奪われていく。

 それによって母親の体は皺だらけの干物のようになっていく。

 末端からひび割れがおこり、小さな欠片になって崩れ落ちていく。

 細胞などが死に絶え、体の形すら保てなくなっている。



 そうして生命力を、霊魂を吸収していく。

 体は土塊や塵のようになっていく。

 そうして自分の体が崩壊していく事に、母親も恐怖を感じている。

 だが、逃げ出すことは出来ない。



 体はとっくに破壊されている。

 動こうにも動けない。

 そうでなくても、崩壊が進んでいるのだ。

 動けば動くほど分解が早くなる。



 悲鳴も上がらない。

 壊れてるのは外側だけではない。

 内臓などの内側も崩壊している。

 喉はとっくに干からびてひきつっている。

 声など出せる状態ではない。

 空気を押し出そうにも、胸や腹も壊れてる。

 呼吸が既に困難になっている。



 そんな状態の母親に出来る事など何もない。

 ただ、迫ってくる死を自覚して恐怖に震えるだけだ。



 そして、霊魂すらもトシキに吸収されていく。

 そうなれば輪廻転生すらも出来なくなる。

 たとえ死んでも、霊魂として存在出来れば、いずれ何らかの形で復活するだろうが。

 その可能性すら無くなっていく。



 あらゆる意味で消滅していく。

 その事を察したのか、母親の霊魂は絶望を発していく。

 それは気となって周囲を震わせる。

 だが、結果が変わる事は無い。



 吸収され分解されていく母親の霊魂。

 それはトシキの養分となって用いられていく。

 そこに人格などは残ってない。

 ただ燃料としてのみ存在するだけ。



 そうしてトシキの母親は消滅していった。

 その最後の最後まで、自分がどれほど間違ってたのかを理解する事もなく。

 ただただ、なぜこうなるのかという疑問だけ抱いていた。

 自分は何も悪くはないのに、と思いながら。

「つくづく救えねえな」

 母親の最後にトシキはそうぼやいた。



 ただ、これで分かった事もある。

 人は変わらない。

 成長しない。

 改善や更生などしない。

 悪い奴はどこまでいっても悪人であると。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。




活動支援はこちら↓

あらためて支援サイトであるファンティアの事でも
https://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/501269240.html
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ