89回目 超能力戦争
トシキの領域に踏み込んだ者はもっと悲惨なものだった。
超能力者を中心に、その護衛として同行する警察・自衛隊の特殊部隊。
それらは霊的な痕跡をたどって県内を進んでいく。
そこに何があるのかを探るために。
だが、進んでいった彼らは、そこで激しい迎撃にあう。
潜んでいた超能力者達によって包囲され、次々に撃破されていく。
まず、行動の全てが把握されている。
超感覚による遠視・透視、果ては生命力や気を感知され、位置はバレバレだった。
これにより、隠密行動の全てが無駄に終わる。
そして居場所を把握されて攻撃を仕掛けられていく。
そこが町の中だろうと関係なく。
事前に察知されてるので、住民は避難させられている。
どれだけ騒ごうが問題は無い。
少なくとも、人に被害が及ぶ事は無い。
攻撃も一方的なもので、潜入した政府側の超能力者と戦闘員は駆逐されていく。
隠密行動という事で人数が少ない政府側が不利なのもある。
だが、それよりも戦闘力・火力の差が大きすぎた。
警察・自衛隊特殊部隊の攻撃は全く効果をあらわさなかった。
歩兵が装備する銃器や爆発物では、超能力者を倒すことは出来ない。
その逆に、超能力者の念動力は政府側の人員を大きく凌駕する。
念動力で空中に持ち上げられ、そこから勢いをつけて叩き落とされる者。
体を圧縮され、骨は粉砕、内臓を口と肛門からひねり出される者。
炎で焼き尽くされる者、体内から凍結させられる者。
電流を流されて感電する者や、空気を止められて窒息する者もいる。
これらを遮る手段は無い。
唯一対抗できるのは、探索の中心になる超能力者や霊能者だが。
彼らもトシキ側の超能力者に対抗する事は出来ない。
力の差がありすぎる。
政府側の超能力者も無能ではない。
力の強さでいえば、北原と同等かそれ以上だ。
だが、トシキ側の超能力者はそれを上回る強さを持っている。
いくら抵抗しようと、それらを遮る事は出来ない。
こうして潜入した者達は、残らず消滅していく事になる。
秘密裏に行われた作戦ゆえに表沙汰にする事も出来ず。
政府は手痛い失敗を負うことになった。




