86回目 超能力者は他にもいる
全ては上手くいっている。
トシキの手の届く範囲では。
その事をトシキは感じていた。
ある一点を除いて。
順調に物事を進めてはいる。
少なくとも内部から問題はほぼなくなった。
しかし、手の届かない外部はそうはいかない。
県内における明らかな異常事態。
例年になく増大した死亡と行方不明の届け出。
時間差を作って提出させているが、それらはどうしても目を引く。
また、明らかに減少した人口は隠しようがない。
実際に人口が半減してるのだ。
こんな事隠しようがない。
なんらかの形で異常を感じ取る人間は出てくる。
特に警察などから様々な形で介入がなされている。
警察だけに留まらない。
各省庁から様々な調査がなされていく。
ただ、異常ではあっても異常を示す痕跡や証拠がない。
超能力によるものなので、物理的に何かが残るわけではない。
その為、調査は成果をあげる事無く打ち切られる。
とはいえ、追及の全てが消えてなくなるわけではない。
表の方で証拠があがらなくても、それで終わりにはならない。
超能力のような超常能力。
それによる調査や捜査は進められる。
それらを使えるのはトシキだけではない。
国家とてそういった力を保有している。
それらは、トシキの動きを探り、対応を始めていく。




