77回目 厄介な味方 6
北原のもとから逃げ出していく者達。
そうした者達をトシキは見逃さなかった。
そういう目端の利く者は。
これが単に裏切ったり、危険だから逃げたというならともかく。
そうではない、先々を考えて見通しての行動なら見過ごせなかった。
そんな頭の働く、先々の事を考える奴は脅威になり得るからだ。
「お前らが馬鹿だったら良かったんだけどねえ」
離脱者の前にテレポート・転移してあらわれたトシキは告げる。
「でも、先の事を考えられる奴は駄目なんだ。
俺の邪魔しにくるに決まってるから」
そういう危険や面倒は、出来るだけ早く潰すに限る。
トシキにとって最も脅威になるのは、こうして逃げ出した者達だ。
北原の限界を見切り、新たに活動を始めようとする。
そういう者こそが最大最悪の脅威である。
本当の意味で賢い者達はこういうものだ。
そういう者達が集って行動し始めたら何をするか分からない。
それこそ、トシキにとって最悪の瞬間に最大の攻撃を仕掛けてくるかもしれない。
そういう可能性はさっさと排除しておきたかった。
「けどなあ……」
そうは思いつつも、トシキは不思議に思う事がある。
そこまで考える頭があるならば、なぜ北原に味方するのか?
というより、なぜ加害者に肩入れするのか?
なぜ被害者を守ろうとしなかったのか?
そこが疑問である。




