7回目 処分は身近なところから
飛んできた包丁。
そして、口に詰め込まれたご飯。
咳き込む母親は混乱していった。
何が起こったのか全く理解出来てない。
だが、驚いてばかりもいられない。
今度は呼吸が出来なくなっていく。
強烈な力で喉を締め上げられているのだ。
あわてて首に手をやり、締め付けてる何かをほどこうとする。
だが、そこには何もない。
慌てる母親。
喉をかきむしって締め上げる何かから逃げようとする。
爪が皮をやぶり、血がにじむ。
それでも締め上げる何かがゆるむ事は無い。
そんな母親をトシキは黙って見つめている。
自分の力で母親を死に追いやってるにもかかわらず。
「でも、しょうがないから」
さめた調子でトシキは呟く。
「前も何もしなかったし。
やられても黙ってろとか言ってたし」
淡々と語っていく。
それは、再び目覚める前の、前回の人生の事だった。
その時の母親は何もしなかった。
トシキが学校で酷い目にあっていても。
その事を訴えても解決の為に何かしてくれる事はなかった。
それどころか、トシキの邪魔しかしなかった。
やられてやり返したら、逆に怒られた。
なんでそんな事をするんだと。
反撃をしただけなのに、怒られるのはトシキだった。
あまりにも理不尽な言いがかりである。
そして加害者のガキ共に頭を下げにいくのだ。
自分の子供が、トシキが酷いことをして済まないと。
理由もなくやられてるのはトシキにもかかわらず。
当然、学校に対処を頼むわけもない。
いや、対処を頼んでいた。
トシキが何もしないようにと。
結果、トシキは更に酷い目にあった。
何をされても常にトシキが責められた。
「だから殺したんだけど」
前回の人生の最後。
その時に母親も殺した。
出来るだけ痛めつけて殺した。
なんで、と叫んでいた。
どうして、と泣いていた。
気にせずトシキは痛めつけた。
出来る限りの事をしながら。
「なんで俺が我慢しなくちゃなんねえんだよ」
そこが分からなかった。
一方的に誰かを虐げてるのではない。
むしろ、トシキはいたぶられてる方だ。
にもかかわらず、ただひたすらにトシキが悪者扱いされる。
「ふざけんなよ」
そう言うのも無理もない。
当然のことだ。
そんな母親の喉を締め上げる。
それだけではない。
腕の骨を折る。
足の骨を折る。
腹を締め上げる。
思いつく限りの方法で痛めつける。
前回の人生と同じように。
その時には超能力は使えなかったが。
ある程度いたぶったところで、攻撃を止める。
体中を痛めつけられた母親は、もう身動きがとれなくなっていた。
まだ生きているが、放置していれば傷がもとで死ぬだろう。
だが、ただ死なすつもりもない。
念動力は一旦止めて、今度は超感覚を使っていく。
意識を母親の頭の中にのばし、考えを探っていく。
どうして母親がここまでトシキを止めるのか。
それを知るために。