69回目 せめて自分たちに見合った行動を
ただ、それはそれとして不可解ではある。
敵は何故こんな事をしたのか?
敵なりの理由があって行動してるのは分かる。
しかし、それにしても合理性がない。
かなわないなら、せめて出来る事を徹底するべきだろう。
なのだが、そういった配慮や考えが全く感じられない。
互いの力の差は理解してるはずである。
だが、何故か真っ正面からぶつかってくる。
せめて損害を減らす努力はするべきだろうに。
そこがトシキには解せない部分だった。
まずもって、真っ正面から戦える状態ではない。
一人一人の力の差が大きい。
組織や集団としてもまとまってない。
有力者やより大きな団体とのつながりがあるわけでもない。
こんな状態でトシキとぶつかる理由がわからない。
それでいて、表に出てきて行動する。
身を隠すくらいの努力はしておけば良いのに。
そうして自ら出てきて退路を塞がれていく。
何がしたいのか分からなかった。
そもそも逃げねばならない状況に陥るべきではない。
撤退は常に考慮しておくにしてもだ。
逃げるということは、勝てない・負けるという事だ。
そういう状況に陥らないように考えるべきだろう。
それが作戦というものだ。
力が無いなら無いで、上手く動かねばならない。
でなければ成果を得る事無く損害だけ増やす。
そもそもの力の差が大きい。
力が無いというのは厳然たる事実だ。
それを作戦で補わなくてどうするのか?
力もない、作戦もない。
それが敵の現状である。
そんな状況で、なんで前に出てしまったのか?
それでは逃げるしかなくなる。
だが、見える所に出てくれば、包囲して殲滅するのもやりやすい。
そうならないように隠れて行動するしかないのだが。
そういった智慧が全く見られない。
そもそも、事前の情報収集をしていたのかも怪しい。
情報を得ていても、適切な分析がされていたのかどうか。
無謀な行動を見ていると、そんな疑問が浮かんでくる。
こういった部分がどうなってるのか。
敵から読み取った記憶からも探ってみた。
何をどう考えているのかを知るために。
その結果は、なんとも言いがたいものだった。
「何も考えてないな……」
倒した敵は下っ端である。
なので、たいした情報をもってるわけではない。
しかし、そこから垣間見える事実には、こう言うしかなかった。




