67回目 悪事を褒め称えて助ける者達の末路
殺すのは簡単だ。
それこそ様々な方法で行う事が出来る。
強力な念力で圧殺する事も。
ぞうきん絞りのようにねじ切る事も。
手足を引っ張って引きちぎる事も。
炎で焼き尽くす事も、体の中から凍り付かせる事も。
何でも出来る。
だが、そうして処分する前に、敵の頭に情報を流し込む。
トシキ達が殺した者達。
それらが何をしてきたのか。
どんな悪行をなしてきたのか。
それを突っ込んでいく。
それでどういう反応が出てくるのか。
何を思うのか。
それに興味があった。
もっとも、たいした効果は期待してないが。
これまで何度も真相を伝えてきた。
何がそこで行われていたのかを。
加害者がなぜ殺されるようになったのかを。
そこに至る原因を頭に直接たたき込んでいく。
だが、これで変化が起こる事などない。
「どうだ、これが真相だ」
そう言って相手に尋ねる。
被害者が受けた苦痛。
それらがどれほどの長期間にわたって行われていたのか。
場合によっては、被害者が自殺してるという事もあった。
そういった事実もトシキは探りあてている。
それも含めて、情報を全部敵に伝えていく。
「だから何よ……」
返ってきたのはそんな声。
敵の、超能力を使う女がそんな事を言う。
「だからって、殺すことないじゃない!」
その返答にトシキは落胆する。
やっぱり、という思いしかない。
こうなるのは超能力を使うまでもなく分かっていたが。
それでもやはり、望まない最悪の答えが出てくるのは辛い。
「あ、そう」
トシキとしてもこれ以上何か言うつもりはない。
加害者のおこした事件には目もくれず。
被害者の反撃を罵る。
そんな連中にかける情けは持ち合わせていなかった。
「延々とやられ続けてろっていうわけか」
敵の言ってるのはそういう事だった。
被害者がどうなろうと知った事ではない。
むしろ、やり返した事だけを糾弾する。
「暴力をふるうなんて!」
だいたい、これが理由である。
被害者に肩入れし、加害者を殺した事。
それが許せないらしい。
「じゃあ、被害者がやられてるのはいいのか。
加害者を何で止めなかった?」
「そういう事じゃないでしょ!」
「どういう事なんだ!」
まったく話がかみ合わない。
ただ、分かる事はただ一つ。
加害者に肩入れしている。
被害者などどうでもいい。
そういう意図だけははっきりしていた。
強い者に与する。
そういう思考の持ち主なのだ。
あるいは、誰かをいたぶるのが楽しい。
その為なら何でもする。
そういう考えや気持ちの持ち主が敵には多い。
そんな人間しかいない。
今まで見てきた加害者と共犯者もそんな人間ばかりだった。
敵の超能力者はどうなのかと思っていたが。
やはり同じだった。
それが確かめられたので、トシキとしてはもう十分だった。
「お前らがよく分かった」
それだけ伝える。
「これからは何一つ容赦しない。
見つけたら即座に潰していく」
そう言ってから、目の前の敵の霊魂を吸収していった。
絶対に転生出来ないように。
もし霊魂を残したら、再びこの世に舞い戻ってくる可能性がある。
それをこの段階で阻止していった。
下手すれば、生まれ変わってからまた悪さを繰り返す。
そんな事をさせるわけにはいかない。
「せめて養分になって、俺の役に立て」
今まで加害者に協力して被害者を作ってきた。
世の中に悪意と悪事をばらまいてきた。
破滅と破壊を増大させてきた。
せめて最後くらい、役に立って消滅してもらいたいものだった。
そうして見つけた敵を消滅させていく。
後にはいつも通り、朽ち果てた塵の塊だけが残った。




