64回目 敵との接触
相手を探すのは簡単だ。
広範囲に意識を張り巡らせればいい。
目や耳、肌の感触などを拡大させていく。
遠くの様子までうかがえるようになる。
今のトシキには、自分を中心にした数キロくらいの範囲を見渡せる。
その範囲内で起こった事を瞬時に察知する事も。
それだけ超能力の威力が上がっている。
それだけ多くの霊魂を吸収してきた。
おかげで、敵をすぐに見つける事が出来る。
超能力者特有の反応はすぐに見つけられる。
ただ、超能力を使って探知するという事は、相手に自分の存在を示す事にもなる。
超能力者ならば、力が使われればそれを見つける事も出来る。
相手を警戒させるので、問題がないわけではない。
だが、見つけられずにいるよりは良い。
それに、見つかったとしても問題は無い。
逃げようが抵抗しようがいくらでも対処が出来るからだ。
「さて、どう出てくるんだか」
相手はどう動くのか?
反応を確かめながら、トシキは見つけた敵のところへと向かった。
その敵は大いに慌てていく。
自分たちを見つけた敵の存在に気付いたからだ。
「どうする?」
「どうするって」
「とにかく逃げよう」
まとまって行動していた超能力者達はそう言い合う。
それを見ている同行者達も慌てていく。
超能力者の護衛や手伝いとしてついてきたのだが。
肝心の超能力者が慌ててるのを見て、危険が迫ってるのを察する。
意見はすぐに一致する。
「逃げよう」
その一言で全員が動き出す。
賢明な判断だ。
だが、あらゆる意味で遅かった。
逃げねばならない状況に陥ってしまった事。
そもそもとして、そうなる程前面に出てしまった事。
それでも逃げるしかないにしても、決断も判断も行動も遅かった。
走り出そうとする敵対する超能力者とその仲間達。
そんな彼らの前にトシキがあらわれる。
「よう」
気軽に声をかけるトシキの前で、敵対する者達は顔をこわばらせた。




