5回目 今の状態を確かめて
壬生トシキは確かに死んだ。
35歳で、2017年に。
それは間違いの無い事実だ。
だが、死の間際に願った事。
このままでは終われない、こんな死に方は嫌だ。
その強い思いが現実を動かした。
意識を、霊魂を過去に戻した。
そして10歳の頃に戻ってきた。
今のトシキは、間違いなく10歳だ。
ただし、35歳で死んだトシキの記憶と経験を持っている。
この先こうなるという実体験を抱えている。
それだけではない。
死んで過去に戻る際に、様々な力に目覚めた。
肉体から解き放たれ、霊魂が持つ様々な力を思い出した。
その感覚を持ったまま10歳の頃に戻ってきている。
超能力が使えるのはこれが理由だ。
死んで肉体から解放され、霊魂の状態になった記憶がある。
その時の感覚が残ってるので、念動力が使える。
また、こうした事を思い出すのも、理解するのも超能力の一種だ。
周囲や自分の状態を即座に解析する。
物を動かすという物理的なものではないが、精神に作用する力。
直感力や探知力といったものが研ぎ澄まされている。
超感覚とでも言おうか。
それが発揮されている。
今が何年何月なのか。
どうしてこういった力が使えるのか。
それを即座に解明してるのも、この超感覚のおかげである。
これによって、何が起こってるのかも即座に分かるようになっている。
「ようは、生き返ったって事か」
今の状態をそう言い表す。
より正確に言うならば、過去に逆行して転生したと言うべきだろう。
そんな現象がトシキに起こっていた。