48回目 異変に気付く者達
不審を抱く者は当然出てくる。
あまりにも多い死亡事例。
見かけは取り繕っても、数が多ければさすがに怪しむ者はいる。
それでも書類上は正式に処理されてるので、異を唱える事は難しい。
不思議に思っても、それが明らかな異常事態とはいえない。
とはいえ、あまりにもおかしいので調べに出る者も出てくる。
しかし、確たる証拠を得られる者はいない。
死体などはとっくに火葬されてるし、警察や医師の残す書類にもおかしな所はない。
証言を集めようとしても、それもままならない。
件数の多さはともかく、それ以外に何も出てこない。
異常を感じても真相を示す材料がない。
たいていの場合、調査は最後まで辿りつく事無く終わる。
そんな中で、かすかな例外も発生する。
トシキ達に共鳴して超能力に目覚めた者達だ。
それらもトシキが見つけて処分していく。
味方にならない者にトシキは容赦をしない。
将来の敵になる要素は全て排除している。
なのだが、例外ももちろん発生する。
ほんのわずかだが、トシキの追及を逃れる者もいる。
そうした者達は、人目を避けてどうにか生き延びていく。
目覚めた超能力がその助けになった。
透視で周囲を見渡し、肉体を強化して走っていく。
とにかく逃げねばならない。
何よりも生き延びる事を優先せねばならない。
トシキ達に命を狙われるからだ。
周囲で起こってる事に、超能力に目覚めた者達は気付いていく。
だからこそ分かるのだ。
このままでは自分たちが危ないと。
だからとりあえず逃げていく。
勝ち目のない相手から。
だが、ただ逃げるだけではない。
周りから人が消えていく、死んでいく。
そんな状況を覆そうとしていく。
その為の一時的な撤退である。
そうして逃げ延びた先で、同じ考えを持つ者と合流していく。
生き延びた者は一人だけではない。
同じ境遇の、同じ考えを持つ者同士で協力関係を作っていく。
こうして小さな対抗集団が出来上がっていく。
それをトシキはあえて見逃していった。




