33回目 加害者の友人、その思考
頭の中をのぞき込み、この子供のこれまでを探る。
なんでトシキを見ていたのか。
その理由を探っていく。
この子は、トシキが始末した加害者の周りにいた者だ。
直接の接点はない。
だが、元気の良い加害者を慕っていた。
崇拝や尊敬といってもよい。
そういった感情を抱いていた。
もちろん加害者が何をしてるのかも知っている。
被害者をいたぶってるのも何度も目にしてきた。
だが、それをこの子はじゃれあってるだけと考えていた。
わざわざ加害者が被害者とふれあってるのだと。
異常な考えだ。
殴りかかっていたぶってる事のどこがふれあいなのか?
それが理解できない時点でかなりおかしい。
更に記憶を覗いていく。
その中には、被害者が加害者に反撃してる場面もあった。
そんな時この子は、被害者に憤りを抱いた。
なんで殴りかかるなんて乱暴な事をするのかと。
仲良くしてくれてる相手に酷いことをすると。
やられた仕返しや反撃とは全く考えていなかった。
「なんとまあ……」
覗いていて頭が痛くなりそうだった。
胸くそが悪い。
人の考えや視点はそれぞれとは言うが。
暴行・傷害という犯罪を仲良しの証としてる思考は理解不能だった。
また、被害者ではなく加害者に同情するとは。
トシキにはその思考が全く理解出来なかった。
更に記憶を探る。
いったいどうしてトシキの事を見ていたのかを知る為に。
その当たりの記憶を探して閲覧していく。
そうなる原因は、加害者の姿を見なくなってからだった。
いつの頃からか急に姿を消した。
最初はそれをなんとも思ってなかった。
だが、ある日突然にそれがおかしいと気付いた。
おそらく、その時点でトシキの超能力に共感していたのだろう。
それからは不思議な力が使えるようになり。
その力を使って色々と調べていった。
まだ未熟であったが、超能力が使える事で、色々と分かる事があった。
行方不明になってるのは加害者だけではない。
他にも何人もの人間が消えている。
その事にすぐに気付いた。
そして、周りがそれをなんとも思ってない事も。
試しに尋ねてみた、消えた人間の事を。
そうしたら誰もが一様に、
「それ、誰?」
と答えた。
誰も知らないだ。
つい数日前までそこにいた人間を。
怖気というものをおぼえた。
それから、かすかな気配を辿って、加害者達を追跡していった。
意識を飛ばして、遠くを探れるようになったのが大きい。
そうして気配を辿っていった先に────
「俺がいたのか」
思考を探って、それを知る。
トシキの存在を知って、遠巻きに眺めていたようだった。
それに気付いてトシキが逆探知を開始、今に至る。




