32回目 無理をすれば相手を破壊しかねない、だからといってやる事を躊躇わない
超能力者は超能力にかかりにくい。
それをトシキは感じていた。
そんな超能力者に念を送り込むには、より強い力が必要になる。
そうなると、一つ問題が出てきてしまう。
一般人より強い力を使わねばならない。
当然、受ける側の負担が大きくなる。
それを妨げるのが超能力になる。
だが、その防御を突破した場合、通常より大きな力が体や精神にかかる。
そうなった場合、悲惨な結果がもたらされる。
これが肉体に作用するものならば、大けがは免れない。
骨や内臓が吹き飛ぶ事もありえる。
精神の場合、崩壊して自我を保てなくなる可能性がある。
超能力が壁になってくれるとしても、肉体や心は変わってないのだ。
そこに巨大な力が加われば、大惨事になる。
既にその事をトシキは察知していた。
目の前にいる超能力者の頭の中を覗くと、確実に精神が破壊されるだろう。
それを避けるには、力を使うのをやめるか。
それか、細心の注意を払う必要がある。
だが、トシキはそのどちらも放棄した。
相手を逃すつもりはない。
相手がどうなろうと知った事でもない。
欲しいのは相手の考えである。
相手の健康や生命ではない。
「一応、先に言っておく」
最後の情けとして、事前に警告はしておく。
「抵抗しないで、素直に頭の中身を読ませるか。
拒んで精神崩壊を起こすか。
どちらがいいか選べ」
それを聞いて、相手は力を抜いていく。
瞬時に悟ったようだ、トシキには勝てないと。
まがりになりにも超能力を使うのだ、トシキの強さも察したのだろう。
そんな相手の頭のなかを、トシキは遠慮する事無く覗いていく。
相手が無遠慮に自分たちを覗いていたように。
「全部ぶちまけてもらうぞ、何を考えてるのかを」
言いながら相手の思考の中に入っていく。
その瞬間、相手の体が引きつる。
体の中をかき乱されるおぞましさを感じて。
気にすることなくトシキは、相手の考えや思いを探っていく。




