2回目 死んで、目覚めて
意識が途切れ、視界が暗くなる。
全てが黒く閉ざされ、体の感覚がなくなる。
何となく、「ああ、死ぬんだな」と思った。
無様に、情けなく、何の報いもなく死んでいく。
それがたまらなく悔しかった。
「冗談じゃねえ」
良いところも何もなく。
最後の最後に少しばかりやり返す。
それだけで終わってしまう。
「ふざけるな」
認めたくなかった。
認められなかった。
人生がこんなのでは報われない。
あまりにも悲しすぎる。
これでは何のために生きてきたのか分からない。
人並みの人生もおくれず。
人並みの幸せも得られず。
誰かに虐げられて終わっていく人生。
そんなもの受け入れられるわけがなかった。
「こんなんで、終われるかよ……!」
消えゆく意識の中でそう思う。
かろうじて残る意思がそう叫ぶ。
「こんなところで、こんなザマで、こんな、こんな……!」
ままならなかった全てに抵抗するように叫ぶ。
それは決して声になる事はなかった。
ただ胸の中でだけ響き渡った。
やり直したい。
やり返したい。
こんな終わり方など認めない。
もっと良い最期を迎えてやる。
…………人生の最後の最後で、そんな思いが湧き起こった。
意識を手放すまでの一瞬。
これまでにない強い気持ちをトシキは抱いた。
虐げられていた時も。
やぶれかぶれになってやり返してきた時も。
決してなかった昂ぶりだった。
それでも迫る死を逃れる事は出来ず。
トシキの意識は消失していった。
そして。
浮遊感と落下感。
体の感覚を失い、全てから解き放たれるような開放感。
そこから一気に上に向かって浮上していく感覚をおぼえ。
爽快なまでの疾走感に身をまかせたその時。
トシキは目を覚ました。