16回目 他の被害者達にも手を差し伸べる
ただ、全員を処分したわけではない。
トシキを助けようとしていた者達。
また、トシキ以外で被害に遭っていた者達。
それらには手を出さなかった。
さすがに助けてくれていた者を手にかける気にはなれなかった。
同じ境遇の被害者にも同情は出来る。
もっとも、それらも何か悪さをしていたなら容赦はしなかった。
トシキに何かしてこなくてもだ。
他の誰かが犠牲になってるなら、それを許すわけにはいかない。
別の場所で何かしらの問題を起こすからだ。
それは周囲に害をもたらし、被害を拡大させていく。
巡り巡って、トシキのいる所にも影響を及ぼしかねない。
そういう連中はさっさと処分した方が良い。
今後、二度と問題が発生しなくなるのだから。
そして、被害に遭っていた者達に手を差し伸べていく。
「今まで大変だったな」
そう声をかけて。
「こいつらをこれから叩きのめすけど。
どうだ、一緒にやらないか?」
そう誘って。
募る恨みもある。
それらを晴らさなければ、気持ちは沈んだままになる。
それはあまりにも哀れだった。
解消する機会を与えたかった。
でなければ、怒りや憎しみを抱えて生きていく事になる。
それはどこかで最悪の形で発揮される。
本来向けるべき相手ではない、別の誰かに悪意や害意が向かう。
そうなった場合、悲惨な事件が発生する事になる。
あるいは、自ら命を断つ事にもなりかねない。
抱えた思いとはそういう事を発生させる事もある。
だから、ここで気持ちを処理させておきたかった。
今後の人生を幸せに生きられるように。
誘われた者達も、笑顔を浮かべて頷いていく。
あるいは涙を流して歓喜にふるえて。
報われなかったものが報われていく事を感じて。




