１２６回目 死後の世界、おそらくは最後に残った問題に
「お？」
息を引き取り、意識を失った。
そう思った直後に、また覚醒をした。
何事かと思ったが、すぐに思い出す。
「あ、死んだんだっけ」
二度目なので、そんなに慌てる事もない。
「そっか、死んだのか」
あらためて自分が肉体を失ったのを感じ取る。
霊魂の状態だという事も。
不思議と悲しくはなかった。
後悔もなかった。
やりたい事をやり遂げたからだろう。
それに、死後の世界というのも悪いものではない。
穏やかな空気の中で、のんびりとしていられる。
何かする必要もなく、ただ穏やかさの中にひたっていられる。
生きてる間は感じる事が出来なかったものだ。
これなら、この心地よさにひたって、世界の中をたゆたっていてもいい。
そう思えた。
なのだが。
「ん？」
異変に気付いてしまう。
死後の世界という、気だけが存在する空間。
そこにある異常に。
何事かとそちらに向かう。
穏やかな心地よさの中に感じる違和感。
それが発生する場所へと向かっていく。
すぐにその原因に行き当たった。
それは、凝縮された悪意の塊だった。
嫉妬や害意、優越感などなど。
およそ他者に害を為す根源となるものだった。
「なんだこれ」
驚き呆れる。
穏やかに過ごそうと思っていたのだが。
それを妨害するものがそこにあった。
なんでこんなものが、と思った。
何が原因でこんなものがあるのかと。
それは気の流れや動きの中で凝縮したものだった。
どうしても発生する淀みだった。
様々な意思や思いによって発生する流れ。
その中で、どうしても発生してしまうものだった。
それが霊魂となっていき、地上に転生していく。
「なるほど、だから無くならなかったのか」
地上に生まれてくる悪人悪党の霊魂。
それらは無くなる事無く生まれ続けていた。
いったいどうして、と思っていたのだが。
その答えがここにあった。
様々な思いに反応して動く気。
それは超能力者でなくても反応する。
一般人でも様々な心の動きがあれば、気は動く。
それが死後の世界、霊界とも言うべき気の集まりであるこの世界に作用している。
それが悪意を生み出す原因にもなっていた。
そういった心のあり方、動きが原因になってるのだ。
無くそうと思って無くせるものではない。
これはどうしようもないのだろう。
ただ、それでも明るい兆しはある。
確かに悪意は生まれ続けている。
なのだが、見たところ、その発生はだんだんと鈍化していってる。
規模も小さくなっている。
悪意がそもそも減ってるからだろう。
地上で起こる問題。
それが減ってるから、霊界で発生する悪意も減っている。
このまま続けば、それはよりよい結果に繋がるはずである。
「よーし」
ならば、とトシキも動き出す。
目の前にある悪意。
悪人として生まれる霊魂。
それを分解して吸収していく。
そうする事で、少しずつ悪意を消していく。
「頑張ってみるか」
どうせ時間は無限にある。
寿命がある地上とは違う。
ならば、有り余る時間を有効活用していく。
あれば邪魔になるのが悪意だ。
穏やかに過ごそうとしても、どうしても気になる。
どこかで気配を感じて気分を悪くする。
その気分の悪さがまた、新たな悪意を生み出してしまう。
ならば、さっさと掃除して消していく事にした。
存在させる意味など無いのだから。
「死んでも、まだ楽はさせてくれないのか」
そう思うと悲しいものがある。
だが、やりがいのある作業でもある。
これらを消した時に、本当に楽が出来る。
そう思えば、これはこれで楽しみでもある。
穏やかなはずの死後の世界。
そこでもまたやるべき作業に追い回される。
しかしトシキは、それを楽しむ事にして目の前の悪意に臨んでいった。
「どうせ、いつかは終わるんだし」
楽天的にそう考えながら。
これにて終了
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某所のたコメント欄で話題にあげてくれてありがたい
皆さんも覗いてあげてくれ
http://mokotyama.sblo.jp/article/189354517.html#comment
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新しいのを始めた
よければこっちも目を通してくれると、ありがたい
異星人からの侵略を受けたので、どうにか生き延びて反撃をします
https://ncode.syosetu.com/n3084ho/
