109回目 霊能者集団 対 超能力者 14
「応答しろ、応答しろ!」
無線機から声が聞こえる。
誰もいなくなった戦場で、その声だけがむなしく響く。
その声を耳にしながら、トシキは周りを見渡す。
放置されたままの兵器。
誰もいなくなった神社。
残るのは、人間の残骸である塵の塊。
そこは既に廃墟だった。
寸前まで人がいた痕跡があるだけの。
それらも、ただの遺物と成り果てている。
それらを見渡してから、トシキはその場を後にする。
もうこれ以上この場に用はない。
片付けるべきものは、もうここには無いのだから。
人も、物も。
他の場所に行って、残ってる問題を片付ける方が良い。
なにせ県内の障害は排除したのだ。
もう邪魔する者はいない。
多少の抵抗はあるだろうが、大きな問題にはならない。
立ち去るトシキは、手近な住宅地へと向かう。
霊場の神社付近の人間は避難しているのでいないが。
幾らか離れたところにある町や村にはまだ人が残ってる。
そこにいる者達から選別を開始していく。
処分するべき者と、残すべき者を。
邪魔になる者は処分して。
残しておくべき者はそのままにする。
協力者になりえる者は超能力者に覚醒させながら。
その作業の為に人のいる場所へと向かう。
出来るだけ早く、状況を好転させるために。
政府や霊能者達の邪魔が入らないうちに、やれる事をやっておきたかった。
「応答しろ、応答しろ!」
無線機からの呼びかけは続く。
それが、トシキが立ち去った場所で響き渡った。
だが、その声もやがえて消える。
無線機ごしに呼びかけを続けていた場所。
この県内における司令部である県警本部。
そこがトシキに制圧された。
それにより、呼びかけを続けていた者達も死滅した。
トシキが立ち去ってから、数時間後の事である。




