108回目 霊能者集団 対 超能力者 13
迫るトシキ。
そこに向けて、銃口と砲口、霊能者の念が集中する。
一斉に攻撃をしかけて火力をまとめる為に。
トシキの防御力は高い。
それぞれが別々に攻撃を仕掛けても、攻撃はとおらない。
なので、せめて一斉に攻撃をして、威力を集中する。
効果を出すにはそれしかないという事になった。
それで攻撃が通じるなら良いのだが。
正直なところ、果たして効果があるのか誰もが不安を抱いた。
今までの攻撃は全く通じてないのだから。
攻撃を合わせて上手くいくのかどうか。
それでもやるしかなかった。
この場で出来る最大最強の攻撃はそれしかないのだから。
「攻撃準備」
無線機を通じて指示が飛ぶ。
歩兵銃、機関銃、グレネードランチャー、無反動砲。
大小様々な迫撃砲。
長距離砲に、装甲車搭載機関銃。
攻撃ヘリの機関銃にロケット弾。
戦闘機の爆弾。
それらが発射準備をととのえる。
それらは霊能者達の儀式にあわせて発射される事になっている。
この中で、最もトシキ相手に効果を出すだろう、霊能者の念の発射。
それにあわせて警察・自衛隊の攻撃が行われる。
その儀式はあと少しで呪術を成就させようとしている。
霊能者の念が集まり、融合し、最大にまで到達していく。
形がととのえられ、トシキに向かって狙いを定めていく。
意識と呪文が数百人の霊能者の思念を一つの方向に進ませていく。
迫るトシキに向けられる。
拠点となった神社。
霊場にあるそこで作られた念の塊。
それは儀式が成就すると同時に放たれる。
同時に、
「撃て!」
銃弾・砲弾・爆弾といった、あらゆる現代兵器が撃ち込まれていく。
トシキに向かっていく強大な念。
そして、あらゆる破壊兵器。
それらはトシキに飛んでいき、そして確かに命中した。
ほぼ同時に、全ての攻撃が。
霊場にある神社に向かう途中だったトシキ。
その時点では避難が済んだ住宅地にいた。
無人となったそこで、向かってくるあらゆる攻撃を待つ。
自分の周りに、念動力のバリアをはって。
そのバリアに向かって霊能者の念が。
銃弾砲弾が向かう。
あらゆる攻撃がトシキを襲う。
念力がトシキのバリアをむさぼっていく。
互いの念がぶつかって食い合っていく。
爆発が念力のバリアを剥いでいく。
機関砲から長距離砲の砲弾がそれに続く。
迫撃砲・無反動砲もバリアを削いでいく。
ありったけの攻撃が当たった。
爆風がおこり、トシキをくるんでいく。
「どうなった?」
「やったのか?」
視界が閉ざされ、確認が困難になる。
双眼鏡など、遠視が出来る者達は少しでも何かをとらえようとする。
だが、すぐに状況を確認できるわけもない。
そんな中で、最も早く状況を把握したのは霊能者だった。
遠視や霊視といった手段でトシキの状態を確かめていく。
少しは打撃を与えられたのだろうかと。
その思いはすぐに絶望に変わる。
「あ……あああああ…………!」
確認をした者達は恐慌状態に陥る。
凄まじいまでの攻撃。
人間はもとより、戦車や装甲車などの戦闘車両ですら生き残れないだろう破壊力。
それらを受けてなお、トシキの存在は確かにそこにあった。
少しも揺らぐこと無く。
「バケモノ…………」
思わず漏らした感想。
それがトシキの存在を感知した者達の、偽らざる本音だった。
その直後。
トシキからの反撃がなされる。
その場に展開していた者達全員が、トシキの超能力にとらえられる。
空にいた戦闘機も攻撃ヘリも例外ではない。
それらの操縦士も含めて、トシキに霊魂を吸収されていった。
こうして隣県にいた数百人の霊能者は。
そして、展開していた警察・自衛隊の数千人は。
全員が例外なく霊魂を吸収され、死滅していった。
「おっと」
操縦士を失って落下しようとする戦闘機と攻撃ヘリ。
それらをトシキは空中で支える。
念動力で掴み、地上におろしていく。
まだ今後使えるだろうと思って。
「もったいない、もったいない」
こうして隣県における戦争は終わった。
トシキ一人によって、敵対する戦闘部隊は全員消滅した。




